ダーティリード (ダーティリード) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ダーティリード (ダーティリード) の読み方
日本語表記
ダーティリード (ダーティリード)
英語表記
dirty read (ダーティリード)
ダーティリード (ダーティリード) の意味や用語解説
ダーティリードとは、データベースのトランザクション処理において、まだコミットされていない(確定していない)データが、別のトランザクションによって読み取られてしまう現象である。ダーティリードは「未コミット読み取り」とも呼ばれる。トランザクションは複数の処理を一つのまとまりとして扱い、すべての処理が成功した場合のみデータを確定(コミット)し、一部でも失敗した場合は処理開始前の状態に戻す(ロールバック)という特性を持つ。ダーティリードが発生すると、もし読み取った後に元のトランザクションがロールバックされた場合、読み取ったデータが実際には存在しなかった、あるいは不正なデータであったことになり、データベースのデータ一貫性や正確性が損なわれる原因となる。これはシステム全体の信頼性を低下させる重大な問題であり、データベースを扱う上で理解しておくべき重要な概念の一つである。 ダーティリードは、特に複数のユーザーやアプリケーションが同時にデータベースにアクセスし、データを更新・参照する並行処理環境下で問題となる。具体例を挙げて説明する。ある銀行のシステムで、Aさんが自分の口座から10,000円を引き出す処理を開始したとする。この処理では、まずAさんの口座残高から10,000円を減算する処理が実行されるが、まだAさんのトランザクションは完了しておらず、コミットされていない状態である。この途中の状態で、もしBさんがAさんの口座残高を照会する処理を開始したとする。このとき、Bさんのトランザクションがダーティリードを許容する設定であった場合、BさんはAさんが引き出し処理中の仮の残高を読み取ってしまう。例えば、Aさんの口座に元々50,000円あったとして、Aさんの処理がまだコミットされていないが、口座残高が40,000円になっている途中の値をBさんが読み取るという状況だ。 ここで、もしAさんの引き出し処理が、何らかのエラーで途中で失敗し、最終的にロールバックされたとする。この場合、Aさんの口座残高は元々の50,000円に戻される。しかし、Bさんがすでに読み取ったデータは40,000円であり、これは実際には確定しなかった一時的なデータ、つまり不正なデータであったことになる。このように、ダーティリードが発生すると、誤った情報に基づいて後続の処理が行われたり、レポートが出力されたりする可能性があり、その結果、システムの誤動作やユーザーへの不正確な情報提供につながる。銀行の例では、Bさんが誤った残高を見て別の判断をする、あるいはその残高を元に別の処理をするといった問題が発生する。 ダーティリードは、データベース管理システム(DBMS)が提供する「トランザクション分離レベル」という設定によって制御される。トランザクション分離レベルは、複数のトランザクションが同時に動作する際に、互いの処理結果がどの程度影響しあうかを定義するもので、SQL標準によって4つのレベルが定められている。 最も低い分離レベルである「Read Uncommitted(読み取り未コミット)」は、ダーティリードを許容する設定である。このレベルでは、コミットされていない変更中のデータであっても読み取りが可能となるため、上記のようなダーティリードが発生する。この設定は、データの正確性よりも読み取り速度を優先する場合に用いられることがあるが、通常は推奨されない。 ダーティリードを防ぐには、少なくとも「Read Committed(読み取りコミット済み)」という分離レベルを選択する必要がある。Read Committedレベルでは、コミットされたデータのみを読み取ることが保証されるため、他のトランザクションがまだコミットしていない一時的な変更を読み取ることはない。ほとんどのRDBMSでは、このRead Committedがデフォルトの分離レベルとして設定されていることが多い。 さらに高い分離レベルには「Repeatable Read(反復可能読み取り)」や「Serializable(直列化可能)」がある。これらの分離レベルはダーティリードを防ぐだけでなく、さらに複雑な並行性問題(ファジーリード、ファントムリードなど)も防止できるが、その分、並行性が低下し、データベース全体のパフォーマンスに影響を与える可能性がある。 システムを設計・運用する際には、ダーティリードのような並行性問題を理解し、アプリケーションの要件とデータベースの性能要件を考慮して適切なトランザクション分離レベルを選択することが極めて重要である。ダーティリードを許容するシステムは、データの一貫性が保証されないため、信頼性の高いシステムとは言えない。適切な分離レベルを設定することで、データの正確性を保ち、システムが常に整合性の取れた情報を提供するように管理できる。