隠しフィールド(カクシフィールド)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
隠しフィールド(カクシフィールド)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
隠しフィールド (カクシフィールド)
英語表記
hidden field (ヒドゥンフィールド)
用語解説
隠しフィールドとは、ウェブページのフォームに含まれる入力要素の一つで、ユーザーインターフェース上には表示されないものの、他のフォームデータと一緒にサーバーへ送信されるデータを保持する仕組みを指す。これはHTMLの<input type="hidden">要素として実装され、ウェブアプリケーションにおいて、ユーザーには見せる必要がないが、サーバー側での処理に必要な情報をクライアントサイドからサーバーへ安全かつ効率的に渡すために利用される。ユーザーが直接入力したり、内容を確認したりする必要のない、システムの内部的なデータや状態を保持する目的で使われることが一般的である。
詳細について説明する。隠しフィールドの最も基本的な実装は、HTMLの<input>タグにtype="hidden"属性を指定することである。この指定により、ブラウザはその入力要素を画面に描画しないため、ユーザーは存在に気づかない。しかし、この要素はDOM(Document Object Model)ツリーの一部としてページ内に確かに存在し、name属性で指定された名前と、value属性で指定された値を持つ。フォームがサブミット(送信)されると、この隠しフィールドのnameとvalueも、テキストボックスやチェックボックスなどの他の入力要素と同様にHTTPリクエストの一部としてサーバーに送信される。
隠しフィールドの利用目的は多岐にわたる。一つは、セッション管理やユーザーの特定に関する情報保持である。例えば、ログイン済みのユーザーのID、ショッピングカートのセッションID、あるいはウェブアプリケーションが一時的に管理している一意のトークンなどを隠しフィールドに含め、ページ遷移後もその情報を保持し、サーバーに送信することで、現在のユーザーの状態を適切に管理できる。これにより、ユーザーがログインしているかどうかの確認や、特定のユーザーに紐づくデータ処理をスムーズに行うことが可能となる。
また、セキュリティ対策としても重要な役割を果たす。クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)攻撃への対策はその典型的な例である。CSRF攻撃は、攻撃者が用意した悪意のあるサイトから、ユーザーが意図しないリクエストを正規のウェブアプリケーションへ送信させることで、ユーザーの権限で不正な操作を実行させる手法である。これを防ぐため、多くのウェブアプリケーションでは、フォーム送信時にCSRFトークンと呼ばれる、予測不能な一意の文字列をサーバーが生成し、これを隠しフィールドに含めてクライアントに送る。フォームが送信される際、サーバーはこの隠しフィールドに含まれるCSRンークンが正規のものであるかを確認し、一致しなければリクエストを拒否することで、攻撃を防ぐ。
複数ステップにわたるフォーム入力の途中で、それまでの入力内容を次のステップへ引き継ぐ際にも隠しフィールドが活用される。例えば、商品購入手続きの途中で、前のステップで選択した商品のIDや数量、入力した個人情報の一部などを、次のステップのページに隠しフィールドとして含めることで、最終確認画面やサーバー側での処理に必要な情報を一貫して保持できる。これにより、ユーザーは何度も同じ情報を入力する手間を省き、スムーズな手続きが可能になる。
さらに、プログラム制御のためのフラグや、クライアントサイドでのJavaScriptによって動的に生成された値をサーバーに送信する際にも利用される。例えば、JavaScriptで計算された結果や、ユーザーの操作に応じて変化する状態値を隠しフィールドに一時的に格納し、フォーム送信時にサーバーへ渡すことで、サーバーサイドの処理にクライアントサイドの状況を反映させることが可能となる。
隠しフィールドの利点は、ユーザーに不要な情報を表示せず、ウェブインターフェースをシンプルに保ちながら、システムに必要な情報を効率的にサーバーとクライアント間でやり取りできる点にある。しかし、利用にあたってはいくつかの注意点がある。最も重要なのは、隠しフィールドは「隠されている」だけであり、「秘匿されている」わけではないという点である。ブラウザの開発者ツールを使えば、誰でも隠しフィールドのnameとvalueを容易に確認し、場合によってはその値を改ざんしてフォームを送信することが可能である。
したがって、隠しフィールドには機密性の高い情報(パスワードなど)や、ユーザーによる改ざんがシステムに重大な影響を与える可能性のある値(商品価格や管理権限を示すフラグなど)を直接格納すべきではない。たとえ隠しフィールドを利用していても、サーバーサイドでは常に、受信したデータの正当性、完全性、妥当性を厳重に検証する処理を実装することが不可欠である。例えば、ユーザーIDが隠しフィールドに含まれていても、そのIDを持つユーザーが本当にその操作を実行する権限があるかをサーバー側で改めて確認する、といった検証が求められる。隠しフィールドはあくまでデータの伝達手段であり、セキュリティ対策の一部ではあるが、それだけで完全なセキュリティを保証するものではないことを理解することが重要である。