クライアント (クライアント) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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クライアント (クライアント) の読み方

日本語表記

クライアント (クライアント)

英語表記

client (クライアント)

クライアント (クライアント) の意味や用語解説

クライアントとは、ITの分野において、ネットワークを通じて他のコンピュータにサービスや機能を要求する側のコンピュータ、またはその上で動作するソフトウェアを指す言葉である。クライアントの対義語は、要求に対してサービスや機能を提供する側のサーバーとなる。現代のITシステムの多くは、このクライアントとサーバーが互いに通信し、役割を分担することで成り立っている。この仕組みはクライアントサーバーモデルと呼ばれ、システムを理解する上での基本的な概念である。例えば、私たちが普段使っているパソコンやスマートフォン、タブレットといった端末は、ハードウェアとしてのクライアント(クライアント端末)に該当する。そして、それらの端末上で動作するWebブラウザやメールソフト、業務アプリケーションなどがソフトウェアとしてのクライアントにあたる。つまり、クライアントという言葉は、文脈によって物理的な機器を指す場合と、その上で動くプログラムを指す場合の両方で使われる。 クライアントの役割をより具体的に理解するために、いくつかの例を挙げる。最も身近な例は、Webサイトの閲覧である。ユーザーがパソコンやスマートフォンでWebブラウザを起動し、特定のURLを入力すると、Webブラウザはクライアントとして機能する。ブラウザは、そのURLに対応するWebサーバーに対して、Webページのデータを送信するように要求する。要求を受け取ったWebサーバーは、HTMLやCSS、JavaScriptといったファイルを探し出し、クライアントであるWebブラウザに応答として返す。ブラウザは受け取ったデータを解釈し、人間が読める形式のWebページとして画面に表示する。この一連の流れにおいて、Webブラウザが能動的に要求を行い、Webサーバーが受動的に応答するという関係が成立している。このようにクライアント側で実行される処理、例えばJavaScriptによる動的なページの表示などをクライアントサイド処理と呼ぶ。対照的に、サーバー側でデータベースと連携したり、複雑な計算を行ったりする処理はサーバーサイド処理と呼ばれる。 メールの送受信もクライアントサーバーモデルの一例である。パソコンにインストールされたOutlookや、スマートフォンのGmailアプリといったメールソフト(メーラー)がクライアントの役割を担う。ユーザーがメールを送信すると、メールソフトはメールサーバーに対してメールの送信を依頼する。逆に、新着メールを確認する際は、メールサーバーに新しいメールが届いていないか問い合わせる。この場合も、メールソフトが要求する側、メールサーバーがサービスを提供する側という関係が明確である。 企業の業務システムにおいてもクライアントは重要な役割を持つ。例えば、販売管理システムを利用する場合、営業担当者が自分のパソコンから専用のアプリケーションを起動し、顧客情報や売上データを入力する。このアプリケーションは、データベースサーバーに対してデータの登録や検索、更新といった要求を送信するクライアントソフトウェアである。データベースサーバーは要求に応じてデータを処理し、結果をクライアントアプリケーションに返す。これにより、複数の担当者が同時にシステムを利用しても、データが一元的に管理され、整合性が保たれる。 クライアントは、その機能や役割の持ち方によって、シッククライアントとシンクライアントの二つに大別されることがある。シッククライアントは、アプリケーションの実行やデータ処理の多くをクライアント端末自身で行う形態を指す。一般的なパソコンのように、端末にOSやアプリケーションがインストールされており、高度な処理能力を持つ。処理を端末側で完結できるため、サーバーへの負荷が少なく、ネットワークが不安定な状況でもある程度動作するという利点がある。一方で、端末ごとにソフトウェアのインストールや更新、セキュリティ対策が必要となり、管理コストが高くなる傾向がある。 それに対してシンクライアントは、クライアント端末側での処理を最小限にとどめ、ほとんどの処理をサーバー側で実行する形態である。クライアント端末は、主にサーバーからの画面情報を受け取って表示し、ユーザーからの入力情報をサーバーに送信するだけの役割を持つ。データやアプリケーションは全てサーバー側で集中管理されるため、情報漏洩のリスクが低減され、管理が容易になるというメリットがある。しかし、全ての処理をサーバーに依存するため、サーバーに高い負荷がかかり、ネットワークの通信速度がシステムの性能に大きく影響する。 このように、クライアントは単なる「利用者のコンピュータ」という意味にとどまらず、システム全体のアーキテクチャの中で「要求元」という明確な役割を担う構成要素である。システムエンジニアとしてシステムを設計、開発、運用する上では、クライアントがどのような種類のハードウェアやソフトウェアで構成され、サーバーとどのように連携し、どのような処理を分担するのかを正確に理解することが不可欠となる。

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