シェル変数 (シェルヘンスト) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

シェル変数 (シェルヘンスト) の読み方

日本語表記

シェル変数 (シェルヘン スウ)

英語表記

shell variable (シェルヴァリアブル)

シェル変数 (シェルヘンスト) の意味や用語解説

シェル変数とは、LinuxやmacOSなどのUnix系オペレーティングシステムで利用されるシェルにおいて、データや値を一時的に保存するための名前付きの記憶域である。コマンドラインからの操作やシェルスクリプトの実行中に、文字列や数値といった情報を保管し、必要に応じて参照したり、変更したりするために用いられる。これはプログラミング言語における変数と基本的な役割は同じであり、プログラムの実行中に変化する可能性のあるデータを保持し、処理の柔軟性を高めるための基礎的な要素の一つである。例えば、ファイルパス、ユーザー名、コマンドの実行結果、設定値などをシェル変数に格納し、後の処理で再利用することで、より効率的で再利用性の高いスクリプトやコマンド操作が可能となる。 シェル変数は、ユーザーが現在利用しているシェル（Bash、Zshなど）が管理する変数であり、その存在は現在のシェルセッションに限定される。変数を設定するには「変数名=値」という形式を用いる。例えば、「MY_MESSAGE="Hello, World!"」と入力すると、「MY_MESSAGE」という名前のシェル変数が作成され、「Hello, World!」という文字列がその値として格納される。この変数の値を参照するには、変数名の前にドル記号「$」を付けて「$MY_MESSAGE」のように記述する。この記述によって、シェルは変数名ではなく、その変数が持つ値に置き換えてコマンドを実行する。例えば、「echo $MY_MESSAGE」というコマンドを実行すると、「Hello, World!」と出力される。 変数名を他の文字列と区別する必要がある場合や、変数名が曖昧になる可能性がある場合には、「${変数名}」という形式で参照することもできる。例えば、「echo ${MY_MESSAGE}S」とした場合、「Hello, World!S」と出力されるが、「echo $MY_MESSAGES」とした場合、「MY_MESSAGES」という変数がないとエラーになったり空文字になったりする可能性がある。 シェル変数の命名にはいくつかの規則がある。変数名には英数字とアンダースコア（_）を使用できるが、数字で始まることはできない。また、大文字で命名することが一般的だが、これは慣例であり必須ではない。シェル変数は通常、現在のシェルプロセス内でのみ有効であり、そこから起動される子プロセスには引き継がれない。この有効範囲のことを「スコープ」と呼ぶ。 シェル変数を子プロセスにも引き継ぎたい場合には、「export」コマンドを使用する。exportコマンドで定義されたシェル変数は「環境変数」と呼ばれる。環境変数は、現在のシェルから起動されるすべてのコマンドやプログラムが参照できる共通のデータ領域を提供する。例えば、「export PATH=/usr/local/bin:$PATH」とすることで、PATHという環境変数に新しいディレクトリパスを追加し、そのシェルから実行されるコマンドが追加されたパスも検索するようになる。`PATH`や`HOME`、`USER`、`LANG`などは、システムが自動的に設定する代表的な環境変数である。これらはオペレーティングシステムの動作やユーザー環境を定義するために広く利用されている。 シェルには、ユーザーが明示的に設定しなくても、シェル自身が自動的に設定する「特殊なシェル変数」も存在する。例えば、「$?」は直前に実行されたコマンドの終了ステータス（成功なら0、失敗なら0以外の値）を保持する。「$$」は現在のシェルのプロセスID（PID）を表し、「$#」はシェルスクリプトに渡された引数の数を表す。「$@」はスクリプトに渡されたすべての引数を個別の文字列として扱い、「$*」はすべての引数を単一の文字列として扱う。これらの特殊変数は、シェルスクリプト内で条件分岐やエラーハンドリング、引数処理を行う際に非常に有用である。 一度設定したシェル変数の値を変更できないようにするには、「readonly」コマンドを使用する。例えば、「readonly MY_SECRET="secret_value"」とすると、「MY_SECRET」は読み取り専用となり、その後の変更や削除はできなくなる。 また、Bashなどのモダンなシェルでは、複数の値をまとめて保持できる「配列変数」もサポートしている。「MY_ARRAY=(apple banana cherry)」のように定義し、「echo ${MY_ARRAY[0]}」で最初の要素「apple」を参照できる（インデックスは0から始まる）。「echo ${MY_ARRAY[@]}」とすると、配列のすべての要素が出力される。配列変数は、関連する複数のデータをまとめて管理する際に役立つ。 シェル変数は、シェルスクリプトにおいて、一時的な計算結果を保持したり、ユーザーからの入力を格納したり、設定ファイルを読み込んだ値を保持したりと、多岐にわたる用途で利用される。例えば、スクリプト内で一時的なファイル名を生成して保存し、そのファイル名を複数のコマンドで使い回す場合や、ループ処理の回数を記録するカウンターとして利用する場合など、変数を活用することでスクリプトの柔軟性と保守性が大幅に向上する。システムエンジニアを目指す上では、シェル変数の基本的な操作と概念を理解することが、効率的なシステム管理や自動化スクリプト開発の第一歩となる。