第3四分位数 (ダイサンシブンイスウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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第3四分位数 (ダイサンシブンイスウ) の読み方

日本語表記

第三四分位数 (ダイサンシブンイスウ)

英語表記

third quartile (サードクォータイル)

第3四分位数 (ダイサンシブンイスウ) の意味や用語解説

「第3四分位数」は、データ分析においてデータのばらつきや分布の傾向を理解するための重要な指標の一つだ。これは、統計学における「四分位数」と呼ばれる概念の一部で、データを昇順に並べたときに、全体を四等分する三つの区切り目のうちの一つを指す。システムエンジニアにとって、システムログの分析、パフォーマンスデータの評価、ユーザー行動の把握といった場面で、単なる平均値だけでは見えてこないデータの特性を捉えるために不可分な概念である。 詳細について説明する。まず、四分位数とは、データを小さい順に並べたときに、そのデータを四等分する境界値のことだ。具体的には、次の三つの値がある。 第一四分位数(Q1):データを小さい方から数えて25%に当たる値。 第二四分位数(Q2):データを小さい方から数えて50%に当たる値で、これは中央値(メディアン)と全く同じ意味を持つ。 第三四分位数(Q3):データを小さい方から数えて75%に当たる値。これが今回のテーマである「第3四分位数」だ。 第3四分位数は、データを昇順に並べたとき、上位25%のデータが始まる点、あるいは下位75%のデータが終了する点と考えることができる。この値を知ることで、データ全体の75%がどの値以下に収まっているのか、または、上位25%のデータがどのような値であるのかを把握することが可能になる。 第3四分位数の具体的な計算方法を、例を挙げて説明する。 例えば、あるWebサービスの応答時間(ミリ秒)が記録されたデータが次のようにあったとする。 [120, 150, 100, 200, 130, 180, 110, 160, 190, 140] まず、このデータを昇順に並べ替える。 [100, 110, 120, 130, 140, 150, 160, 180, 190, 200] データ数は10個である。 次に、第二四分位数(Q2、中央値)を計算する。データ数が偶数であるため、中央にある2つの値(5番目の140と6番目の150)の平均を取る。 Q2 = (140 + 150) / 2 = 145 次に、第3四分位数を計算するために、中央値よりも大きい後半のデータ群を抽出する。この際、中央値の計算に使われた値は含めない。 後半のデータ群: [150, 160, 180, 190, 200] この後半のデータ群は5個のデータから成る。このデータ群の中央値が第3四分位数となる。データ数が奇数であるため、ちょうど中央に位置する3番目の値が中央値となる。 後半のデータ群の中央値(つまり第3四分位数) = 180 したがって、このデータセットにおける第3四分位数は180である。これは、Webサービスの応答時間の75%が180ミリ秒以下であったことを意味する。逆に言えば、応答時間が180ミリ秒を超えるのは全体の25%未満のケースであると解釈できる。 もう一つ、データ数が奇数の場合の例を考える。 [50, 60, 70, 80, 90, 100, 110] データ数は7個。 まず、中央値(Q2)を計算する。データ数が奇数であるため、中央に位置する4番目の値が中央値となる。 Q2 = 80 次に、中央値よりも大きい後半のデータ群を抽出する。この際、中央値の80は含めない。 後半のデータ群: [90, 100, 110] この後半のデータ群は3個のデータから成る。このデータ群の中央値が第3四分位数となる。データ数が奇数であるため、ちょうど中央に位置する2番目の値が中央値となる。 後半のデータ群の中央値(つまり第3四分位数) = 100 したがって、このデータセットにおける第3四分位数は100である。 システムエンジニアが第3四分位数を活用する場面は多岐にわたる。例えば、サーバーのCPU使用率やメモリ使用量の監視において、第3四分位数を把握することで、通常の運用でどれくらいの負荷がかかっているか、上位の負荷がどの程度なのかを定量的に評価できる。ほとんどの時間がQ3以下で推移していれば健全と判断できるが、Q3を頻繁に超えるようであれば、最適化やリソース増強の検討が必要になるかもしれない。 また、ユーザーからのリクエストに対するシステム応答時間の分析では、平均値だけでは一部の遅延が埋もれてしまうことがある。しかし、第3四分位数を見ることで、「全ユーザーの75%は、この応答時間以下でサービスを利用できている」という具体的な指標を得られる。これは、ユーザー体験の品質を評価する上で非常に有効だ。特に、応答時間の上位25%のユーザーがどのような体験をしているかを知ることで、パフォーマンス上のボトルネックを特定しやすくなる。 さらに、外れ値(異常値)の検出にも利用される。第3四分位数と第1四分位数の差である「四分位範囲(IQR)」を用いると、データ分布のばらつきの幅を把握できる。このIQRを基準に、第3四分位数から一定の倍数(例えば1.5倍)を超えて離れた値を外れ値とみなす手法が一般的だ。ログデータから異常なアクセスパターンやエラー発生頻度を検知する際にも、このような統計的な指標が役立つ。 このように、第3四分位数は、単なる数値としてだけでなく、データの「実態」や「傾向」を多角的に理解するための強力なツールである。平均値が一部の極端な値に引っ張られてしまう性質を持つ一方、第3四分位数はそのような影響を受けにくく、より堅牢な指標として機能する。システムエンジニアがデータ駆動型のアプローチでシステムを改善したり、問題を特定したりする上で、第3四分位数をはじめとする四分位数の概念は、不可欠な知識となるだろう。

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