エンティティ(エンティティ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

エンティティ(エンティティ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

実体 (ジッタイ)

英語表記

entity (エンティティ)

用語解説

エンティティとは、システム開発において扱う「情報のかたまり」であり、現実世界に存在する「もの」や「こと」を抽象化して表現したものである。システム内でデータとして管理される対象を指し、データベース設計、オブジェクト指向プログラミング、API設計など、さまざまな文脈で用いられる基本的な概念である。例えば、ECサイトであれば「顧客」「商品」「注文」といったものがエンティティに該当する。これらのエンティティは、システムが扱う主要な情報を定義し、その後のシステム設計や実装の基礎を築く上で極めて重要な役割を果たす。

詳細に説明すると、まずデータベース設計の文脈におけるエンティティは、実世界からシステムにとって重要な情報を抽出し、それをデータとして表現するための最小単位となる。システムエンジニアは、業務要件を分析し、どのようなデータが必要かを洗い出す際、最初にエンティティを識別することから始める。例えば、ある学校のシステムを設計する場合、「生徒」「教師」「授業」といったものがエンティティとなる。それぞれのエンティティは、その実体を特徴づける複数の「属性(アトリビュート)」を持つ。先の「生徒」エンティティであれば、「生徒ID」「氏名」「生年月日」「住所」などが属性にあたる。これらの属性は、エンティティの具体的な情報を表現するデータ項目であり、それぞれが特定のデータ型(文字列、数値、日付など)を持つ。また、エンティティ間には「関連(リレーションシップ)」が存在する。例えば、「生徒」は「授業」を履修し、「教師」は「授業」を担当するといった関係がある。これらのエンティティ、属性、関連を図で表現したものをER図(実体関連図)と呼び、データベース設計においてエンティティの構造と関係性を視覚的に示すための標準的な手法として広く用いられている。エンティティの適切な識別と、その属性や関連の正確な定義は、データベースの構造、ひいてはシステムの安定性、拡張性、性能に直結するため、設計の初期段階で最も慎重に行われるべき作業の一つである。

次に、オブジェクト指向プログラミングの文脈では、エンティティは「ドメインオブジェクト」や「モデル」とも呼ばれ、特定の業務領域(ドメイン)における重要な概念やデータ構造を表現するクラスやオブジェクトを指すことが多い。ここでのエンティティは、単にデータを保持するだけでなく、そのデータに関連する振る舞い(メソッド)もカプセル化している点が特徴である。例えば、「顧客」エンティティであれば、「顧客ID」や「氏名」といった属性に加え、「住所を変更する」「ポイントを付与する」といった操作を行うメソッドを持つことができる。これらのエンティティは、ビジネスロジックの核となり、システムの業務処理の中心的な役割を担う。データベースに永続化されるデータに対応するオブジェクトがエンティティとして設計されることが多く、プログラムとデータベースの間のマッピングを容易にする役割も果たす。

さらに、Web APIやマイクロサービスといった分散システムにおけるエンティティは、システム間で情報を交換する際の「リソース」の単位として捉えられる。RESTful APIの文脈では、URIによって一意に識別可能な情報のかたまりがリソースであり、そのリソースが実質的にエンティティに対応することが多い。例えば、GET /customers/123 というAPIリクエストでは、IDが123の「顧客」エンティティに関する情報が取得される。この情報はJSONやXMLといった標準的なデータ形式で表現され、ネットワークを介してクライアントとサーバー間でやり取りされる。ここでは、エンティティが異なるシステムやサービス間で共有されるデータ構造の定義として機能し、サービス間の連携を円滑にするための共通言語となる。

具体例として、オンライン書店システムにおける「書籍」「著者」「出版社」「注文」というエンティティを考えてみる。 「書籍」エンティティは、「書籍ID」「タイトル」「価格」「ISBN」などの属性を持つ。 「著者」エンティティは、「著者ID」「氏名」「生年月日」などの属性を持つ。 「出版社」エンティティは、「出版社ID」「会社名」「住所」などの属性を持つ。 「注文」エンティティは、「注文ID」「注文日時」「合計金額」などの属性を持つ。 これらのエンティティ間には関連がある。「書籍」は「著者」によって執筆され、「出版社」から発行される。「注文」は一つ以上の「書籍」を含み、顧客によって行われる。このように、エンティティを識別し、その属性と関連を明確に定義することで、複雑な現実世界のビジネスロジックやデータ構造を、システムが扱える形に整理し、一貫性を持たせることができる。

エンティティ設計は、システム開発の品質を左右する非常に重要なプロセスである。現実世界の要件を正確に理解し、それをシステム上で効率的かつ堅牢に表現するためには、どのような情報をエンティティとして定義し、どのような属性を持たせ、どのように関連付けるべきかという洞察が必要となる。初心者にとってはこの抽象化のプロセスが難しく感じられるかもしれないが、多くのシステム開発において最初に直面し、最も基礎となるスキルの一つであるため、具体的な業務要件を例に挙げながら繰り返し学ぶことが上達への近道となる。適切に設計されたエンティティは、システムの基盤となり、将来の機能追加や変更に対する柔軟性を高め、長期的なシステムの運用と保守を容易にする。

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