教師なし学習 (キョウシナシガクシュウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
教師なし学習 (キョウシナシガクシュウ) の読み方
日本語表記
教師なし学習 (キョウシ ユーザー 学習)
英語表記
unsupervised learning (アンシュパーバイズドラーニング)
教師なし学習 (キョウシナシガクシュウ) の意味や用語解説
教師なし学習とは、機械学習の手法の一つであり、事前に正解データ(ラベル)が与えられていないデータから、その中に潜むパターンや構造、特徴を自律的に発見することを目的とする。システムエンジニアを目指す上で、機械学習の基礎として教師あり学習と並び重要な概念である。 概要として、教師なし学習は、人間がデータに何らかの分類や意味付けをする手間を省き、データそのものが持つ性質を機械自身が解釈しようとするアプローチだと言える。例えば、大量の顧客データがあったとして、その顧客がどのようなグループに分けられるか、あるいはデータの中に異常なものが隠れていないかといったことを、あらかじめ「この顧客はAグループ」「これはBグループ」といった情報なしに、データの特徴量だけを頼りに見つけ出すのが教師なし学習の役割である。これにより、これまで気づかなかったデータの特性や新しい知見を発見できる可能性がある。 詳細に入ると、教師なし学習の最も基本的なアプローチは、データが持つ本質的な構造や関係性を明らかにすることにある。この学習形態が特に力を発揮するのは、データにラベルを付与する作業が困難、コストが高い、あるいはそもそも何が正解なのかが不明な場合である。例えば、新しい商品の顧客層を分析する際、事前にどのような顧客層が存在するかは分からないため、データから自動的に似たような顧客をグループ分けしたいといったケースが教師なし学習の典型的な応用例となる。 主要な教師なし学習の手法には、クラスタリングと次元削減がある。 クラスタリングは、データポイント間の類似性に基づいて、データセット内の観測値を複数のグループ(クラスター)に分割する手法である。似たもの同士を同じグループに集め、異なるもの同士は別のグループに分ける。代表的なアルゴリズムにはK平均法(K-means)がある。K平均法は、与えられたデータセットをK個のクラスターに分割するために、各クラスターの重心(セントロイド)を計算し、データポイントを最も近いセントロイドを持つクラスターに割り当てることを繰り返す。これにより、例えば顧客データを購買履歴やWebサイトでの行動履歴に基づいていくつかのセグメントに分類し、それぞれのセグメントに適したマーケティング戦略を立案するといった用途に活用される。また、異常検知にも利用され、他のデータポイントから大きく離れたクラスターに属するデータポイントを異常値として検出することが可能である。 次元削減は、データが持つ情報を可能な限り保持しつつ、特徴量の数を減らす手法である。現実世界のデータは多くの特徴量(次元)を持つことが多く、これがあまりに多いと、データの可視化が困難になったり、計算コストが増大したり、他の機械学習モデルの性能が低下したりする「次元の呪い」という問題が発生することがある。次元削減は、この問題を緩和するために用いられる。主成分分析(PCA)はその代表的なアルゴリズムであり、データの分散が最大になるような新しい軸(主成分)を見つけ、その軸にデータを投影することで、より少ない次元でデータの主要な情報を表現する。これにより、ノイズの除去、データの圧縮、あるいは高次元データの可視化を容易にするといった効果が期待できる。例えば、画像データやテキストデータのように非常に次元の高いデータを扱う際に、その本質的な特徴を抽出して処理を効率化するのに役立つ。 教師なし学習は、データの背後にある隠れた構造や相関関係を発見することに特化しているため、探索的データ分析の強力なツールとなる。しかし、教師あり学習のように明確な「正解」がないため、モデルの性能評価や、発見されたパターンが実際に意味を持つものなのかの解釈には、ドメイン知識と人間による深い洞察が不可欠となる。システムエンジニアとしては、これらの手法を理解し、適切な場面で活用できるようになることが、データ駆動型社会において求められるスキルの一つとなるだろう。例えば、新しいデータソースを取り込む際や、既存のシステムのデータからこれまで見過ごされていたインサイトを引き出したい場合に、教師なし学習は極めて有効なアプローチとなる。