【ITニュース解説】「バットマン」無断生成は著作権侵害--ワーナー、AI企業Midjourneyを提訴
2025年09月05日に「CNET Japan」が公開したITニュース「「バットマン」無断生成は著作権侵害--ワーナー、AI企業Midjourneyを提訴」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
映画会社ワーナーは、画像生成AIのMidjourneyを著作権侵害で提訴した。「バットマン」などのキャラクターが無断で生成されたことが原因だ。AIが既存作品を元にコンテンツを作る際の著作権のあり方が問われている。
ITニュース解説
ワーナー・ブラザース・ディスカバリー社が、画像や動画を生成するAIツールを提供するMidjourney社に対し、著作権侵害を理由に提訴したニュースが報じられた。これは、生成AI技術が急速に進化する中で、その利用と著作権保護のバランスを巡る重要な問題提起であり、システムエンジニアを目指す初心者にとっても深く理解しておくべきテーマである。
今回の提訴の中心にあるのは、人気キャラクター「バットマン」に関する無断生成の疑いである。Midjourneyのような画像生成AIは、インターネット上にある膨大な数の画像データを学習し、その学習結果に基づいてユーザーが入力したテキストの指示(プロンプト)に応じた画像を新しく作り出す。この「学習」のプロセスや、生成された「結果」が、既存の著作物の権利とどのように関係するのかが問われている。
著作権とは、小説、音楽、絵画、写真、映画、プログラムコードなど、人が思想や感情を表現した「創作物」に対して、その創作者に与えられる排他的な権利である。著作権を持つ人は、自分の創作物を複製したり、公衆に伝えたり、翻案(改変)したりする権利を独占的に持ち、他人が無断でこれらを行うことを差し止めることができる。例えば、バットマンというキャラクターや、それを表現したコミック、映画の画像には、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー社が著作権を持っている。他者が許可なくバットマンの画像を複製したり、改変して利用したりすれば、著作権侵害となる可能性がある。
今回の問題で論点となっているのは、大きく分けて二つある。一つは、AIが学習する段階で、著作権で保護された大量の画像データを取り込む行為が著作権侵害にあたるのか、という点である。AIはそれらの画像データをそのまま複製するわけではなく、データから特徴やパターンを抽出し、モデルと呼ばれる内部的な知識を構築する。この学習行為が「情報解析のための利用」として許容されるのか、あるいは著作物の複製や利用と見なされるのか、という解釈が問われる。国や地域によって法的な見解が異なる部分であり、世界中で議論が続いている。
もう一つの論点は、AIが生成した画像が、既存の著作物に酷似していたり、その特徴を強く反映していたりする場合に、誰がその責任を負うのかという点である。今回のケースでは、Midjourneyがバットマンの画像を学習し、それに基づいて新たなバットマンのような画像を生成したとされている。もし生成された画像が、元のバットマンのキャラクター性やデザインを著作権法が保護するレベルで模倣していると判断されれば、著作権侵害となる可能性がある。この場合、AIを開発・提供したMidjourney社、あるいはAIを使って画像を生成したユーザーのどちらか、または双方に責任が及ぶ可能性がある。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この問題は決して他人事ではない。AI技術が社会に深く浸透していく中で、様々なシステムの開発において、著作権や知的財産権の知識が不可欠となる。例えば、AIモデルを開発する際には、学習データの選定や収集方法について、著作権法の観点から慎重な検討が必要となるだろう。また、AIが生成するコンテンツが著作権を侵害しないような仕組みやフィルターを実装する責任も生じるかもしれない。AIが生成した成果物に対して、権利関係を明確にするためのメタデータ付与や、出所を追跡する技術(プロベナンス)の開発なども、今後のエンジニアリングの重要な領域となる可能性がある。
この訴訟は、AI技術の発展と著作権制度がどのように共存していくべきか、そのための法的な枠組みや倫理的ガイドラインがどうあるべきかを考えるきっかけとなる。生成AIがもたらす創造性の可能性を最大限に引き出しつつ、同時にクリエイターの権利を適切に保護するためには、技術開発者、法律家、政策立案者が協力し、新たなルールを構築していく必要がある。システムエンジニアとしてAI関連のプロジェクトに携わる際には、技術的な側面だけでなく、こうした法的・倫理的な側面にも目を向け、社会に責任あるAIシステムを構築していく視点を持つことが、将来的にますます重要となるだろう。