【ITニュース解説】Apple Newsへの掲載を拒否し続けてきたイギリス最古のタブロイド紙Daily Mailがついに掲載を希望もAppleに拒否され規制当局に抗議
2025年09月15日に「GIGAZINE」が公開したITニュース「Apple Newsへの掲載を拒否し続けてきたイギリス最古のタブロイド紙Daily Mailがついに掲載を希望もAppleに拒否され規制当局に抗議」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
イギリスのDaily Mail紙はこれまでApple Newsへの記事掲載を拒否。しかし一転して掲載を希望したが、Appleに拒否された。Daily MailはこのAppleの対応を不服とし、イギリスの競争・市場庁に苦情を申し立てた。
ITニュース解説
イギリスで起きたこの一件は、テクノロジー企業と伝統的なメディア、そして国の規制当局が複雑に絡み合う現代のデジタル社会の課題を浮き彫りにしている。今回は、タブロイド紙のDaily Mailと、iPhoneなどの製品で知られるApple、そしてイギリスの市場を監督する競争・市場庁(CMA)という三者が主役となる。
まず、Apple Newsとは何かを理解する必要がある。Apple Newsは、Appleが提供するニュースアグリゲーションアプリで、世界中のさまざまなニュースメディアの記事を一つにまとめて、iPhoneやiPadのユーザーに提供するサービスだ。ユーザーは複数のニュースサイトを巡回しなくても、このアプリを開くだけで多様なニュースを読むことができる。メディア企業にとっては、自社の記事を多くのAppleユーザーに届けられるメリットがある一方で、Appleのプラットフォームに乗ることで、記事の表示方法や広告収入の一部、読者データなどをAppleと共有することになる。
イギリスで最も古いタブロイド紙であるDaily Mailは、これまでこのApple Newsに自社の記事が掲載されることを頑なに拒否してきた。なぜ拒否したのかというと、多くのメディア企業は、自社の記事がどのプラットフォームでどのように表示され、そこからどれくらいの広告収入が得られるかを重視するからだ。Apple Newsのようなサービスにコンテンツを提供すると、記事のデザインや広告の表示方法、そして読者データの一部をAppleに管理されることになる。Daily Mailは、自社のブランドイメージや編集方針、そして収益モデルに対するコントロールを維持したいという強い意図があったため、掲載を拒否していたと考えられる。
しかし、時が経ち、スマートフォンの普及とともにApple Newsのようなプラットフォームの読者数が飛躍的に増大したことで、Daily Mailは方針転換を迫られた。デジタル時代の読者獲得競争は激しく、自社の記事を幅広い層に届け、そこから新たな読者や広告収入を得るためには、Apple Newsのような巨大なプラットフォームを活用することが不可欠だと判断したのだろう。多くのユーザーが日々情報を得る主要なチャネルとなっているプラットフォームから離れていることは、競争上不利になるという認識があったはずだ。そこでDaily Mailは、ついにAppleに対し、自社の記事をApple Newsに掲載してほしいと依頼した。
ところが、AppleはDaily Mailのこの心変わりを受け入れず、掲載を拒否したという。記事では「翻意を許さず」と表現されているが、これは過去に一度掲載を拒否したDaily Mailに対して、Appleが今度は拒否権を行使したことを示している。AppleがDaily Mailの掲載申請を拒否した背景には、過去に一度断られたことに対するApple側の不満や、Daily MailのコンテンツがApple Newsの定める特定の基準やガイドラインに合致しないと判断された可能性などが考えられる。あるいは、プラットフォームの運営者として、どのコンテンツを掲載し、どれを掲載しないかという自由な裁量権を行使したに過ぎないという見方もできる。プラットフォーム側にも、提供するコンテンツの品質やポリシーを維持する責任があるからだ。
このAppleの拒否に対し、Daily Mailは不満を抱き、イギリスの競争・市場庁(CMA)に対して苦情を申し立てた。CMAは、企業が市場において不公平な取引を行ったり、独占的な地位を利用して競争を妨げたりしていないかを監視する役割を持つ、国の競争法執行機関だ。Daily MailがCMAに訴えたのは、Appleが持つ巨大な市場支配力、特にデジタルコンテンツ流通におけるその影響力を問題視しているからだ。Apple Newsのようなプラットフォームは、多くのiPhoneユーザーにとってニュースに触れる主要な入り口となっており、特定のメディアの掲載を拒否することは、そのメディアにとって大きな機会損失となり、市場競争を阻害する可能性があるとDaily Mailは主張している。
この問題の核心は、現代のデジタル経済において、一部の巨大テクノロジー企業が「ゲートキーパー」として、どのサービスやコンテンツがユーザーに届くかを左右する強い力を持つようになったことにある。Appleのような企業は、自社のエコシステムの中で、アプリストアやニュースプラットフォームを通じて、事実上、他社のビジネスの成否を大きく左右できる力を持つ。Daily Mailは、Appleがこのゲートキーパーとしての力を不当に行使し、市場競争を阻害していると主張しているのだ。CMAは、この苦情を受けて調査を進め、Appleの行為が競争法に違反するかどうかを判断することになるだろう。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このようなニュースは単なるIT業界のゴシップではなく、将来的に自分たちが設計・開発するシステムが社会に与える影響、そしてそこに絡むビジネス、法規制、倫理といった多角的な視点を学ぶ貴重な機会となる。大規模なプラットフォームを構築・運用する際には、技術的な側面だけでなく、ビジネス戦略、ユーザー体験、そして法的な規制や競争の公平性といった、さまざまな要素を考慮に入れる必要がある。この一件は、デジタルプラットフォームの設計や運営がいかに複雑で、社会的な影響力が大きいかを示す良い例と言えるだろう。