【ITニュース解説】かつて“廃れた”言語「Dart」がいま開発者に支持される理由

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かつて「学ばなくてもよい」とされたプログラミング言語Dartが、今開発者に支持され、その価値が見直されている。記事では、なぜDartが注目されるのか、理由と最新動向を解説する。

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プログラミング言語の「Dart」は、かつては一部の開発者から「学ばなくてもよい言語」と見なされることもあったが、現在では多くの開発者から支持を集め、その価値が改めて見直されている。システムエンジニアを目指す初心者にとって、この言語がなぜ今注目されているのか、その背景と理由を理解することは非常に重要である。 DartはGoogleによって開発されたプログラミング言語である。その最大の特徴は、「クライアントサイドアプリケーション開発に最適化されている」という点にある。クライアントサイドとは、ユーザーが直接触れる部分、例えばスマートフォンアプリやウェブブラウザで動く部分を指す。当初、Dartはウェブブラウザ上でJavaScriptの代替となることを目指していたが、当時の技術的な制約やJavaScriptの普及度合いから、その目標を達成することは難しかった。そのため、一時は「廃れた言語」というレッテルを貼られてしまう時期もあったのだ。 しかし、Dartに大きな転機が訪れる。それが、Googleが開発したUIフレームワーク「Flutter(フラッター)」の登場である。Flutterは、たった一つのコードベースで、iOS、Android、Web、さらにはWindows、macOS、Linuxといったデスクトップアプリケーションまで、多様なプラットフォーム向けのアプリケーションを開発できる画期的な技術だ。このFlutterの開発言語としてDartが採用されたことで、Dartは息を吹き返し、再び脚光を浴びることになった。 なぜFlutterはDartをパートナーに選んだのか。それは、DartがFlutterの持つ特徴を最大限に引き出す能力を持っていたからである。Flutterの主要な強みの一つは、高速な開発と美しいユーザーインターフェース(UI)の実現にある。Dartは「Just In Time (JIT) コンパイル」と「Ahead Of Time (AOT) コンパイル」の両方に対応している。JITコンパイルは開発中にコードを素早く実行し、変更を即座に反映できる「ホットリロード」という機能を可能にする。これにより、開発者はコードの変更結果をリアルタイムで確認しながら開発を進められるため、驚くほどの生産性を実現する。一方、AOTコンパイルは、最終的なアプリケーションをデプロイする際に、ネイティブコードに変換することで、高いパフォーマンスと起動速度を提供する。この二つのコンパイル方式を状況に応じて使い分けられる点が、開発効率と実行性能の両立を可能にしているのだ。 また、DartはC#やJavaといったモダンなオブジェクト指向言語に似た構文を持っているため、これらの言語の経験がある開発者にとっては学習しやすく、初心者にとっても理解しやすいという側面がある。厳格な型システムも特徴の一つで、これにより開発中のエラーを早期に発見しやすくなり、堅牢なアプリケーションの構築に貢献する。さらに、Googleが開発・保守を行っているため、安定したサポートと豊富な公式ライブラリが提供されており、開発者は安心して利用できるエコシステムが整っている。 Flutterの台頭とともに、Dartの利用範囲はモバイルアプリ開発にとどまらない。前述のようにウェブアプリケーションやデスクトップアプリケーションの開発にも利用できるようになった他、サーバーサイド開発のためのフレームワーク「Dart Frog」も登場し、バックエンド開発でもDartの活躍の場が広がっている。これにより、Dart一つでフロントエンドからバックエンドまで、幅広い領域をカバーできる「フルスタック」な開発も夢ではなくなっている。 システムエンジニアを目指す初心者にとって、Dartを学ぶ意義は大きい。現代のソフトウェア開発では、一つのプラットフォームに限定されず、複数のデバイスや環境で動作するアプリケーションの需要が高まっている。DartとFlutterを習得することで、マルチプラットフォーム開発のスキルを効率的に身につけることができ、将来のキャリアパスにおいて非常に有利となるだろう。また、Dartは依然として進化を続けている言語であり、Googleによる継続的な投資と活発な開発者コミュニティが存在する。新しい技術に積極的に触れ、その進化の波に乗ることは、システムエンジニアとして成長していく上で不可欠な要素だ。かつて「廃れた」と見なされた言語が、現代のニーズに応え、新たな価値を生み出している現状は、技術トレンドの変化の速さと、常に新しい視点で技術を評価することの重要性を示していると言える。Dartは、システム開発の未来を切り拓く可能性を秘めた、今こそ学ぶべきプログラミング言語の一つである。

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