【ITニュース解説】まだ筋肉痛が残っている状態でも運動していいのか?
2025年09月09日に「GIGAZINE」が公開したITニュース「まだ筋肉痛が残っている状態でも運動していいのか?」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
筋肉痛がある状態での運動について専門家が解説。痛みが軽度であれば、血行を促進して回復を助ける軽い運動は推奨される。しかし、激しい痛みや可動域の制限がある場合は、さらなる損傷を避けるため休息することが重要だ。
ITニュース解説
ランニングや筋力トレーニングなど、普段使わない筋肉を動かしたり、高い負荷をかけたりした後に生じる筋肉痛は、多くの人が経験する現象である。この痛みは「遅発性筋肉痛」と呼ばれ、運動の直後ではなく、数時間後から数日後に現れるのが特徴だ。一般的に痛みは3日から5日程度で自然に和らいでいくが、トレーニング計画を立てている人にとって、「筋肉痛が残っている状態で次の運動をしても良いのか」という疑問は常に付きまとう。この問いに対する答えは一概に「はい」か「いいえ」ではなく、痛みの程度や体の状態によって判断が異なる。
まず、筋肉痛がなぜ起こるのか、そのメカニズムを理解することが重要だ。かつては運動によって筋肉内に疲労物質である乳酸が溜まることが原因とされていたが、現在ではこの説は否定されている。近年の研究では、筋肉痛は主に、運動によって筋繊維が微細に損傷し、その修復過程で起こる炎症反応が痛みの原因であると考えられている。特に、筋肉が伸ばされながら力を発揮する「伸張性収縮(エキセントリック収縮)」を伴う運動、例えば坂道を下る、重い物をゆっくり下ろすといった動作で、筋繊維の損傷が起こりやすいことがわかっている。この損傷した筋繊維を体が修復しようとする際に、免疫細胞が集まって炎症を引き起こし、それが刺激となって痛みや熱感、腫れといった症状として現れるのが遅発性筋肉痛の正体である。つまり、筋肉痛は筋肉が成長するために必要な、正常な生理反応の一部と捉えることができる。
では、この修復プロセスが進行している最中に運動をすることは、体にどのような影響を与えるのだろうか。南オーストラリア大学の運動科学講師ハンター・ベネット氏によると、筋肉痛の程度によって適切な対処法は変わる。もし痛みが軽度で、日常生活に支障がないレベルであれば、運動を完全に休むよりも、軽い運動を行った方が回復を促進する場合がある。これは「積極的休養(アクティブリカバリー)」と呼ばれる考え方だ。ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳といった低強度の有酸素運動は、全身の血流を促進する効果がある。血流が良くなることで、損傷した筋肉へ酸素や栄養素が効率良く運ばれ、同時に痛みや疲労の原因となる物質の排出が促されるため、結果として回復が早まることが期待できる。また、動的ストレッチなども筋肉の柔軟性を高め、こわばりを和らげるのに役立つ。ただし、重要なのは、痛みを感じる部位に再び高負荷をかけるトレーニングは避けるべきだという点だ。例えば、脚に筋肉痛がある時に、高重量のスクワットを行うのは損傷を悪化させるリスクがある。代わりに、上半身のトレーニングを行うなど、筋肉痛のない別の部位を鍛えることは全く問題ない。
一方で、痛みが強く、階段の上り下りや椅子から立ち上がるといった日常的な動作さえつらい場合は、無理に運動すべきではない。これは、体が「休息が必要だ」と明確なサインを送っている状態である。この状態でトレーニングを強行すると、筋繊維の損傷をさらに悪化させ、回復が遅れるだけでなく、肉離れなどの深刻な怪我につながる危険性が高まる。筋肉の修復には、十分な休息と栄養が不可欠だ。筋肉の主成分であるタンパク質を適切に摂取し、質の良い睡眠を確保することで、体は効率的に自己修復を行うことができる。筋肉は「トレーニング・栄養・休息」の三つの要素が揃って初めて成長する。このサイクルを無視してトレーニングばかりを優先する「オーバートレーニング」は、パフォーマンスの低下や慢性的な疲労、免疫力の低下を招き、逆効果となる。
結論として、筋肉痛がある時に運動して良いかどうかは、自身の体の声に耳を傾け、痛みのレベルを客観的に評価することが最も重要である。10段階で痛みを評価した際に、3以下の軽い痛みであれば、積極的休養として低強度の運動を取り入れることは回復を助ける有効な手段となり得る。しかし、痛みが4以上の中程度から重度である場合は、運動を休み、回復に専念することが賢明な判断だ。筋肉痛は、体がトレーニングに適応し、より強くなろうとしている証拠でもある。そのサインを正しく理解し、無理のない範囲でトレーニングを継続することが、長期的に見て安全かつ効果的に身体能力を向上させるための鍵となる。