【ITニュース解説】【注意喚起】フリーランス・業務委託の泣き寝入り続出中！あなたの会社が加害者側になっているかも？

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、将来の働き方の一つとして「フリーランス」や「業務委託」という言葉を耳にする機会は多いだろう。特定の企業に雇用されるのではなく、自分の専門スキルを活かして、複数の企業から仕事を受託するこの働き方は、自由度が高い一方で、様々なトラブルに巻き込まれるリスクも存在することを理解しておく必要がある。そして、そのトラブルは決して他人事ではなく、将来皆さんが所属する企業が、あるいは皆さんが独立した際に、問題の当事者、時には「加害者」や「被害者」になってしまう可能性も秘めているのだ。

最近、公正取引委員会の相談窓口には、フリーランスや業務委託契約に関する被害の相談が相次いでいるという。この状況を受け、公正取引委員会はもちろん、中小企業庁の担当者もこの問題に深く注力しており、現状の改善に向けて動き出している。これは、それだけ多くのフリーランスが不当な扱いを受けている現実があることを示しており、決して看過できない問題だ。

具体的にどのようなトラブルが起きているのか。例えば、契約期間中に一方的に契約を解除されたり、成果物の納品後に不当な理由で報酬を減額されたり、あるいは正当な理由なく支払いが遅延するといったケースが挙げられる。また、契約時には想定していなかったような追加業務を無理に押し付けられたり、業務内容が一方的に変更されたにもかかわらず、それに見合う報酬の増額が行われなかったりすることもある。これらの問題は、フリーランスが個人事業主という立場で、企業と比べて交渉力が弱いことが背景にある場合が多い。経済的な基盤が不安定なフリーランスは、次の仕事への影響を懸念し、多少の不満があっても泣き寝入りしてしまうケースが後を絶たないのだ。

また、皆さんが将来、企業側でフリーランスや業務委託のシステムエンジニアと働くことになった場合、知らず知らずのうちに加害者側になってしまう可能性も存在する。企業は、フリーランスと業務委託契約を結んでいても、その扱いを誤ると、法律に違反してしまうことがある。例えば、業務委託契約であるにもかかわらず、あたかも自社の従業員であるかのように、勤務時間や勤務場所を細かく指定したり、他の企業からの仕事を制限したりするような行為は問題だ。これは「偽装請負」とみなされるリスクがあり、法律上は自社の従業員として扱わなければならないケースもある。もし企業がこのような行為をしてしまった場合、フリーランスの権利を侵害するだけでなく、企業の社会的信用を失墜させることにも繋がりかねない。企業内の担当者が、法律や契約に関する知識が不足しているために、意図せず加害者となってしまうケースも少なくないため、企業側も細心の注意を払う必要がある。

「エージェント会社に任せているから安心だ」という考え方は、残念ながら「都市伝説」に過ぎないという点も指摘されている。多くの企業やフリーランスが、IT業界に特化したエージェント会社を介してマッチングを行っているが、エージェント会社はあくまで仲介者である。彼らの主な目的は、フリーランスと企業を繋ぎ、その成立時に手数料を得ることにある。そのため、必ずしもフリーランス側の利益や権利を最優先に考えてくれるとは限らない。エージェント会社が提示する契約内容が、企業側に有利に、フリーランス側に不利になっているケースも少なからず存在するため、エージェントを介しているからといって油断せず、契約書の内容はフリーランス自身が隅々まで確認し、納得した上でサインすることが極めて重要だ。もし不明な点があれば、納得できるまで質問し、必要であれば専門家の意見を求めるくらいの慎重さが必要となる。

このようなトラブルに巻き込まれないために、そして将来的に皆さんが加害者側とならないためにも、いくつかの対策が考えられる。まず、契約を締結する際には、口頭での合意だけでなく、必ず書面で詳細な契約内容を確認することだ。業務の範囲、納期、報酬額とその支払い条件、知的財産権の帰属、契約解除の条件など、あらゆる項目を明確にしておく必要がある。そして、契約の過程や、業務遂行中に発生した重要なやり取りは、メールやチャットなどで記録に残しておく習慣をつけることが大切だ。万が一トラブルになった際、これらの記録が自身の立場を守るための重要な証拠となる。

もし実際にフリーランスとして働いていて、不当な扱いを受けていると感じたり、企業側としてフリーランスとの取引に不安を感じたりした場合は、一人で抱え込まず、専門機関に相談することが非常に重要だ。現在、公正取引委員会はフリーランスや業務委託に関する問題に注力しており、無料の相談窓口を設けている。また、厚生労働省委託事業として、第二東京弁護士会が運営する「フリーランス・トラブル110番」も、無料で弁護士に相談できる貴重な窓口だ。これらの窓口を利用することで、適切なアドバイスを得られたり、具体的な解決に向けて支援を受けられたりする可能性がある。

システムエンジニアとしてキャリアを築く上で、フリーランスや業務委託という働き方は、今後ますます一般的になるだろう。その中で、自身の権利を守り、また企業として健全な取引を行うためには、契約や法律に関する基礎知識を持つことが不可欠だ。トラブルを未然に防ぐための準備と、万一トラブルが発生した際の適切な対処法を理解しておくことで、安心してIT業界でのキャリアを築いていけるはずだ。これは、将来システムエンジニアとして活躍を目指す皆さんにとって、技術力と同じくらい重要な「社会の仕組み」に関する知識と言えるだろう。