【ITニュース解説】第251回 Group Replicationのマルチプライマリモードにおける外部キーの制限

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MySQLのGroup Replicationは、複数ノード間でトランザクションを複製・認証し、データの整合性を保つプラグインだ。これにより、データベースが壊れにくい強固なMySQLクラスタを構築できる。

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このニュース記事は、MySQLデータベースを安定稼働させるための技術である「Group Replication」の、特に「マルチプライマリモード」における「外部キー」の扱いに注意が必要であるという点について解説している。システムエンジニアを目指す上で、データベースの安定稼働とデータ整合性の確保は非常に重要なテーマだ。 まず、Group Replicationとは何かについて説明する。一般的なシステムでは、データベースが故障するとサービス全体が停止する可能性がある。これを「単一障害点」と呼ぶ。Group Replicationは、MySQLデータベースを複数台のサーバーで同時に動かし、それらのデータベースが常に同じデータを持つようにすることで、一台のサーバーが故障してもサービスを継続できるようにする技術だ。このような仕組みを「クラスタ」と呼び、複数のコンピュータが連携して一つのシステムとして機能する。Group Replicationは、データベースに対する書き込み(トランザクション)をリアルタイムに他のすべてのデータベースサーバーに「複製」し、それらの変更が矛盾なく「認証」されることで、クラスタ全体の「整合性」を保っている。これにより、ユーザーは常に最新で正しいデータにアクセスできる。 Group Replicationには大きく分けて二つの運用モードがある。「シングルプライマリモード」と「マルチプライマリモード」だ。 シングルプライマリモードでは、クラスタ内の複数のデータベースサーバーのうち、書き込みを受け付けるサーバーは常に一つだけと決まっている。他のサーバーは、そのプライマリサーバーから複製されたデータを読み取る専門のレプリカとして機能する。このモードは設定が比較的シンプルで、データの競合が起こりにくいため、安定性が高い。 一方、マルチプライマリモードでは、クラスタ内のすべてのデータベースサーバーが同時に書き込みを受け付けることができる。これは、複数のアプリケーションサーバーがそれぞれ異なるデータベースサーバーにデータを書き込むような高負荷なシステムで特に有効だ。書き込み処理を分散させることで、システム全体の処理能力を向上させることができる。しかし、複数のサーバーが同時にデータを書き込むため、データの競合(例えば、同じデータを同時に変更しようとする、または削除と変更が同時に発生する)が起こりやすくなるという複雑さも伴う。Group Replicationは、このような競合を検出し、特定のアルゴリズムに基づいてどの操作を優先するかを決定し、データの一貫性を保つように設計されている。 今回のニュースの核心は、このマルチプライマリモードで「外部キー」を使う場合に「制限」があるという点だ。 外部キーとは、データベースの「テーブル」間でデータの関連性を定義し、その整合性を保証するための仕組みである。例えば、「顧客テーブル」と「注文テーブル」があったとする。「注文テーブル」にはどの顧客からの注文かを示す「顧客ID」が含まれるが、この顧客IDは必ず「顧客テーブル」に存在する有効な顧客のIDでなければならない。外部キー制約を設定することで、存在しない顧客IDの注文を誤って登録したり、注文があるにもかかわらず顧客を削除したりといった不整合な操作を防ぐことができる。これはデータの「参照整合性」を保つ上で非常に強力な機能だ。 しかし、マルチプライマリモードではこの外部キー制約に注意が必要となる。複数のデータベースサーバーが同時に書き込みを受け付けるため、異なるサーバーで同時に行われた操作が、外部キー制約のチェックに影響を与える可能性があるからだ。 具体例を挙げる。ある顧客が注文をしたとする。顧客情報がデータベースサーバーAにあり、注文情報がデータベースサーバーBに書き込まれた場合を想定する。もし、データベースサーバーAで顧客情報が削除されると同時に、データベースサーバーBでその顧客の新しい注文が追加されようとした場合、通常であれば外部キー制約によって注文の追加は拒否されるはずだ。しかし、マルチプライマリモードでは、これらの操作が異なるサーバーでほぼ同時に行われるため、Group Replicationがすべてのサーバーでの最終的な状態を合意するまでの間に、一時的にデータの不整合が発生する可能性が出てくる。 Group Replicationの内部では、このような競合が起こった場合に、どの操作を有効とするか、あるいは無効とするかを判断するための合意アルゴリズムが動作する。しかし、外部キー制約が絡むと、この合意プロセスがより複雑になり、期待通りの参照整合性が保証されにくくなる。例えば、あるノードでは外部キー制約を満たすと判断されて操作が成功しても、別のノードでの同時操作の結果として最終的にロールバックされたり、あるいは意図しない結果を招いたりする可能性がある。 そのため、Group Replicationのマルチプライマリモードを使用する際には、外部キー制約の使用を極力避けるか、もしくはアプリケーションレベルでデータの整合性を厳密にチェックするなどの代替手段を検討する必要がある。この制限は、MySQL 8.0以降のGroup Replicationにおいても引き続き存在する重要な注意点だ。システムエンジニアとしてデータベースを設計・構築する際には、利用するデータベース技術の特性や制限を深く理解し、それに合わせた適切な設計を行うことが、システムの安定性と信頼性を確保するために不可欠である。今回のニュース記事は、Group Replicationの強力な機能と、その使用上の重要な注意点を教えてくれるものだ。

【ITニュース解説】第251回 Group Replicationのマルチプライマリモードにおける外部キーの制限