【ITニュース解説】I should have loved electrical engineering

2025年09月01日に「Hacker News」が公開したITニュース「I should have loved electrical engineering」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

筆者は電気工学の重要性を再認識する。システムエンジニアとして、コンピュータの物理的な仕組みや基盤技術を理解することは非常に役立つ。電気工学の知識は、ハードウェアやネットワークの問題解決に繋がり、より堅牢なシステム構築に不可欠だと指摘する。

ITニュース解説

この記事は、ソフトウェア開発者としてキャリアを積んできた筆者が、今になって電気工学(EE)の重要性を痛感し、「もっと深く学んでおくべきだった」と後悔している気持ちを綴ったものだ。システムエンジニアを目指す初心者にとって、この筆者の経験と考察は、技術的な視野を広げ、将来のキャリアを考える上で非常に重要な示唆を与えてくれる。

筆者は現在、主にAIや機械学習の分野でソフトウェア開発に携わっているが、以前は組み込みシステムの開発も経験している。組み込み開発はハードウェアとソフトウェアが密接に連携する分野であり、ここで得た経験が、現在のAI/MLにおける課題解決に電気工学的な視点が必要だと感じるきっかけになっている。

システムエンジニアを目指す皆さんは、主にプログラミング言語、データベース、ネットワークといったソフトウェア寄りの技術に興味を持つことが多いだろう。しかし、コンピュータシステムは、その基盤に必ずハードウェアが存在する。ソフトウェアは、ハードウェアの上で初めて動作するものだ。コンピュータ科学やソフトウェア工学という学問分野自体も、元々は電気工学から派生してきた歴史的な経緯がある。コンピュータの基礎を築いたアラン・チューリングやジョン・フォン・ノイマンといった偉人たちも、電気工学や数学、物理学といった幅広い分野の知識を持っていた。これは、ソフトウェアとハードウェアが元来切り離せない関係にあることを明確に示している。

現代のソフトウェア開発では、高度な抽象化が進んでいる。プログラマーは、低レベルなハードウェアの動作を意識することなく、高級プログラミング言語を使ってアプリケーションを開発できる。これは開発効率を高める大きなメリットだが、その一方で、ハードウェアの詳細が「見えなく」なることで、特定の課題に直面した際に深い原因究明や根本的な解決が難しくなるという側面も持つ。

なぜ今、筆者が電気工学の知識の重要性を強く感じているのか。その背景には、現在のテクノロジーが直面している課題と、将来の技術進化の方向性がある。

まず、AIや機械学習の分野で高性能化が求められる中で、ソフトウェア的な最適化だけでは性能向上が頭打ちになる場面が増えている。膨大なデータを高速に処理するためには、CPUやメモリ、GPUといったハードウェアのアーキテクチャや、それらの間でデータがどのようにやり取りされるかを深く理解する必要がある。例えば、メモリの帯域幅、つまりデータ転送速度がボトルネックになり、CPUやGPUの性能を十分に引き出せないケースがある。このような問題を解決するには、単にコードを改良するだけでなく、ハードウェアの特性を考慮したデータ構造の設計や、メモリへのアクセス方法の最適化、さらには専用のハードウェア(ASICやFPGAなど)を設計する視点が必要になる。これらは電気工学的な知識が不可欠な領域だ。

次に、省電力化も現代社会における大きな課題となっている。モバイルデバイスのバッテリー持続時間や、データセンターの膨大な電力消費を抑えることは、環境負荷の低減と運用コストの削減に直結する。消費電力を最適化するためには、半導体デバイスの物理的な特性や回路設計、電力供給の仕組みといった、電気工学の視点からアプローチする必要がある。ソフトウェアの工夫だけでは到達できないレベルの省電力化は、ハードウェアレベルでの設計から始まる。

さらに、IoT(モノのインターネット)やロボティクス、組み込みシステムといった分野では、コンピュータが物理的な世界と直接的にやり取りする。センサーからのアナログ信号をデジタルデータに変換したり、モーターやアクチュエーターを制御したりするには、電気回路の知識、信号処理の知識、電力供給の安定性に関する知識など、電気工学が提供する基礎が必須となる。システムエンジニアがこれらの分野で活躍する際には、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアの設計や動作原理を理解していることが大きな強みとなる。

将来的には、現在の半導体技術の限界を超えようとする新しいコンピューティングパラダイム、例えば量子コンピュータや光コンピュータなどが研究されている。これらの技術は、物理学や電気工学の最先端の知見に深く根ざしている。現在のコンピュータの基礎を理解しつつ、これらの新しい技術の原理を把握するためにも、電気工学的な思考は非常に役立つだろう。

この筆者のブログ記事は、システムエンジニアが将来にわたって価値のある存在であり続けるためには、単に特定のプログラミング言語やフレームワークを習得するだけでなく、より根本的な部分、つまりコンピュータを構成するハードウェア、特に電気工学の基礎にも目を向けるべきだという強いメッセージを送っている。ハードウェアの制約や特性を理解しているエンジニアは、より効率的で堅牢なシステムを設計できる。また、問題が発生した際に、ソフトウェアだけでなくハードウェア側にも原因を探る引き出しを持つことで、より深く、より根本的な解決策を見出すことができるようになる。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、電気工学のすべてを深く学ぶのは現実的ではないかもしれない。しかし、コンピュータの基本的な動作原理、電気信号の役割、メモリとCPUの連携、入出力の仕組みといった、システムを構成する物理的な要素に対する基本的な理解と関心を持つことは、間違いなく将来のキャリアにとって大きな財産となる。ソフトウェアとハードウェアの両方の視点を持つことで、複雑なシステム全体を俯瞰し、真に価値のあるソリューションを提供できる、より市場価値の高いエンジニアへと成長できるだろう。この筆者の後悔は、まさにそのことを私たちに教えてくれている。

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