【ITニュース解説】エンジニア0人の組織から始めた、利用者800万人のシステム刷新──マルイユナイトが仕掛ける変革
2025年09月18日に「CodeZine」が公開したITニュース「エンジニア0人の組織から始めた、利用者800万人のシステム刷新──マルイユナイトが仕掛ける変革」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
丸井グループはテックカンパニー「マルイユナイト」を設立した。レガシーシステムやベンダー依存など大企業の課題に対し、内製組織構築やAI開発、システム刷新で変革に挑む。800万人の利用者を持つシステムのデジタル開発力を強化するのが狙いだ。
ITニュース解説
丸井グループは、フィンテック事業を今後の成長の柱と位置付け、その実現のために2024年に「マルイユナイト」という新たなテックカンパニーを立ち上げた。これは、グループ全体のデジタル開発力を根本から強化し、将来のビジネスを支えるための重要な一歩である。
しかし、マルイユナイトが最初に直面したのは、数々の困難な課題だった。まず驚くべきことに、立ち上げ当初はシステム開発を専門とするエンジニアが社内に一人もいなかった。これは、これまでシステム開発のほとんどを外部のITベンダー(開発会社)に依存してきたことを意味し、自社で技術的なノウハウや知識が蓄積されていなかった状況を示している。
さらに、長年使われてきた「レガシーシステム」も大きな課題だった。レガシーシステムとは、最新の技術動向から遅れを取り、開発や改修が難しく、維持コストも高くなりがちな古いシステムのことである。丸井グループのシステムは800万人もの利用者を抱えており、この大規模なレガシーシステムを安定稼働させながら、新機能の追加や改善を行うことは非常に困難だった。古いシステムは新しい技術との連携も難しく、ビジネスの変化に柔軟に対応できない原因にもなる。
また、「ベンダー依存」も深刻な問題だった。外部のベンダーに開発を任せきりにすると、システムの内情や開発の進め方に関する詳細な知識が社内に残らず、何かシステムに手を入れるたびにベンダーに依頼し、その費用もかさんでしまう。これは、自社のビジネスを加速させる上で大きな足かせとなる。加えて、大企業によく見られる「肥大化した組織構造」も課題だった。意思決定に時間がかかり、部署間の連携がスムーズにいかないことは、スピーディーなシステム開発を妨げる要因となる。
これらの複合的な課題に対し、マルイユナイトのCTOである巣籠悠輔氏は、技術と組織の両面から大規模な変革を起こそうとしている。その核となるのが、「内製組織の構築」「AI駆動開発」「モノリスからのシステム刷新」の三つの柱だ。
まず「内製組織の構築」は、外部ベンダーへの依存を減らし、システム開発の能力を自社内に取り戻すことを意味する。エンジニアが一人もいなかった状態から、自社で優秀な人材を育成し、採用することで、システムに関する知識やノウハウを社内に蓄積していく。これにより、ビジネスの変化に迅速に対応し、利用者にとって本当に価値のあるシステムを、自社の手で開発・改善できるようになる。自社のビジネスを深く理解したエンジニアが直接開発に携わることで、より効果的なサービス提供が可能になるのだ。
次に「AI駆動開発」は、システム開発のプロセス全体に人工知能(AI)の技術を積極的に導入することを指す。例えば、AIを使ってプログラムコードを自動生成したり、テストを自動化したり、潜在的なバグ(不具合)を事前に検知したりすることで、開発の効率を劇的に向上させ、より高品質なシステムを迅速に作り出すことを目指す。これにより、エンジニアは反復的な作業から解放され、より創造的で戦略的な業務に集中できるようになる。
そして最も大規模な変革の一つが、「モノリスからのシステム刷新」だ。「モノリス」とは、システム全体が一つの大きなプログラムの塊として構築されている状態を指す。この形式では、システムの小さな一部を変更するだけでも、全体に影響が及ぶ可能性があり、開発やメンテナンスが非常に困難になる。マルイユナイトは、このモノリスなシステムを、より小さく独立した複数の機能やサービスに分割する「マイクロサービス」のような現代的なアーキテクチャへと刷新しようとしている。これにより、各機能を独立して開発・改修できるようになり、システムの柔軟性や拡張性が飛躍的に高まる。新しい機能の追加も容易になり、システムの安定性も向上する。これは、大規模な心臓手術にも例えられるほど、高度な技術と緻密な計画が求められる取り組みである。
マルイユナイトが進めるこれらの変革は、単に技術的な改善にとどまらず、会社の文化や働き方、人材育成にまで及ぶ広範なチャレンジである。システムエンジニアを目指す初心者にとっても、このような大規模な変革の現場で起きている課題や、それらを乗り越えるための具体的な取り組みは、将来のキャリアを考える上で非常に参考になるだろう。技術力だけでなく、組織を動かし、ビジネスに貢献する力が、現代のシステムエンジニアには求められていることをこの事例は示している。