【ITニュース解説】マイクロソフト、「エクスプローラー」から直接利用できる「Copilot」の新機能を発表

マイクロソフトが、Windowsに搭載されているAIアシスタント機能「Copilot」に関する重要な新機能を発表した。今回の発表の核心は、Windowsの最も基本的なファイル管理ツールである「エクスプローラー」から、CopilotのAI機能を直接利用できるようになる点にある。これにより、日々のファイル操作が劇的に効率化され、コンピューターとの関わり方が大きく変わる可能性を秘めている。

まず、「Copilot in Windows」とは、対話型AIの技術をWindowsオペレーティングシステム（OS）に深く統合したアシスタント機能である。文章の作成、情報検索、設定の変更など、これまでユーザーが手動で行っていた様々なタスクを、自然な言葉で指示するだけでAIが代行してくれる。その基盤には、ChatGPTなどで知られる大規模言語モデル（LLM）が活用されている。一方、「エクスプローラー」は、Windowsユーザーなら誰もが日常的に使用する、ファイルやフォルダーを作成、閲覧、整理するための中心的なツールだ。この誰もが使う基本的なツールに最先端のAIが組み込まれることで、専門家だけでなく、すべてのユーザーがAIの恩恵を手軽に受けられるようになるのが今回の新機能の大きな意義である。

今回発表された新機能は主に4つ存在する。第一に「ファイルの要約」機能だ。これは、テキストファイルやドキュメントなどを選択し、Copilotに要約を依頼できるというものだ。例えば、長大な仕様書や技術レポート、会議の議事録などをファイルを開くことなく、その概要を瞬時に把握できる。システムエンジニアとして業務に就けば、膨大なドキュメントを読む機会は非常に多い。この機能を使えば、必要な情報を素早く見つけ出し、作業効率を大幅に向上させることができるだろう。第二の機能は「ファイルの変換」だ。これは、あるファイル形式を別の形式に変換する作業を簡単に行えるようにするものだ。具体的には、Word文書（.docx）をPDFファイル（.pdf）に変換したり、PNG形式の画像（.png）をJPEG形式（.jpg）に変換したりといった操作が、エクスプローラー上で直接指示できるようになる。これまで専用のソフトウェアをインストールしたり、オンラインの変換サービスを利用したりしていた手間が不要になり、より迅速で安全なファイル形式の変更が可能となる。第三に「ファイルの送信」機能が挙げられる。特定のファイルをメールに添付したり、チャットアプリケーションで共有したりする操作を、Copilotに指示するだけで実行できるようになる。「この報告書ファイルをプロジェクトメンバーにメールで送信して」といった自然言語での命令で、複数のアプリケーションを横断する作業を自動化できる。これにより、アプリケーション間の切り替えやコピー＆ペーストといった煩雑な手順を省略し、コミュニケーションをより円滑に進めることができる。そして第四の機能が、特にエンジニアにとって強力な武器となり得る「ファイルの説明」機能だ。これは、ファイルの内容についてCopilotに質問すると、AIがその内容を解析して説明してくれるというもの。例えば、他者が作成したプログラムのソースコードや、複雑な設定ファイルについて、「このスクリプトは何を実行するためのものか」「この設定項目の意味は何か」といった質問を投げかけることができる。これにより、未知のコードやシステムの構造を理解する時間を短縮し、学習効率や開発の生産性を飛躍的に高めることが期待される。

これらの先進的な機能は、現時点では「Windows Insider Program」のCanaryチャネルおよびDevチャネルに参加しているテスター向けに提供が開始されている。これは、新しい機能を一般公開する前に、開発者や早期利用者がテストを行い、フィードバックを収集するためのプログラムだ。したがって、すべてのユーザーがすぐに利用できるわけではないが、この動きはOSとAIの融合が今後さらに加速していくことを明確に示している。OSの基本的な機能にAIが組み込まれるということは、コンピューターの操作方法そのものが、従来のクリックやドラッグといった直接的な操作から、AIとの対話を通じた間接的な指示へとシフトしていくことを意味する。将来的には、ファイルを探したり、整理したり、内容を分析・加工したりといった一連の作業が、より高度なレベルで自動化されていくだろう。システムエンジニアを目指す者にとって、こうしたAI技術がOSレベルでどのように実装され、ユーザーの体験や開発プロセスをどう変革していくのかを理解しておくことは極めて重要だ。AIを使いこなす能力は、これからのエンジニアにとって、プログラミング技術と同様に必須のスキルとなるだろう。今回の発表は、その未来に向けた大きな一歩と言える。