【ITニュース解説】第870回 Microsoft Editをデフォルトのエディターにする

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Microsoftが開発したテキストエディター「Microsoft Edit」を、Linux OSの一種であるUbuntuで標準のテキスト編集ソフト(デフォルトエディター)として設定する具体的な手順を解説する。

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システム開発の世界では、プログラムのコードや設定ファイルなど、様々なテキストファイルを扱う。これらのファイルを編集するために使われるのが「テキストエディター」と呼ばれるソフトウェアである。特に、サーバーなどで利用されることが多いLinuxディストリビューションの一つであるUbuntuでは、グラフィカルな画面(GUI)ではなく、コマンドライン、つまり文字だけで操作する環境(CUI)で作業することが頻繁にある。このCUI環境で動作するテキストエディターの使いこなしは、システムエンジニアにとって必須のスキルと言える。 Ubuntuには、標準でいくつかのテキストエディターが用意されている。代表的なものに「nano」や「Vim(vi)」がある。nanoは比較的シンプルで直感的に操作できるが、機能は限定的だ。一方、Vimは非常に高機能で熟練すれば高速な編集が可能だが、操作方法が独特であり、初心者が使いこなすには相応の学習が必要となる。システムが何らかのテキスト編集を要求した際に、自動的に起動されるエディターは「デフォルトエディター」として設定されており、多くの場合、このnanoやVimが指定されている。しかし、開発者によっては、これらの標準エディターが必ずしも最も効率的とは限らない。 そこで注目されているのが、Microsoftが開発した新しいターミナルエディター「Microsoft Edit」である。これは、現代の開発者に絶大な人気を誇るコードエディター「Visual Studio Code(VS Code)」のコア技術を基にして作られた、CUI環境で動作する軽量なエディターだ。多くの開発者は、普段のコーディング作業でVS Codeを使い慣れている。そのため、VS Codeと同様のキーボードショートカットや操作感を持つMicrosoft Editは、サーバー上での作業においても学習コストを低く抑え、スムーズな開発体験を提供する可能性を秘めている。例えば、ファイルの検索、テキストの置換、基本的なコード補完といった、VS Codeでおなじみの便利な機能を、サーバーのターミナル上で直接利用できることは大きな利点となる。 このMicrosoft EditをUbuntuのデフォルトエディターとして設定することで、システムの様々な場面で、慣れ親しんだエディターを自動的に利用できるようになる。例えば、バージョン管理システムであるGitでコミットメッセージを編集する際や、`crontab -e` コマンドで定時実行タスクを編集する際など、システムがエディターを呼び出す場面で、自動的にMicrosoft Editが起動するようになる。これにより、Vimの操作に戸惑うことなく、普段通りの感覚で効率的に作業を進めることが可能になる。 Ubuntuでデフォルトエディターを変更するには、「update-alternatives」という仕組みを利用するのが一般的である。これは、システム内に同じ機能を持つ複数のプログラムが存在する場合に、どれを優先的に使用するかを管理するための仕組みだ。`editor` という名前で登録されている選択肢の中から、デフォルトとして使用したいプログラムを選ぶことができる。Microsoft Editをインストールした後、このupdate-alternativesの仕組みに登録し、対話形式の選択画面でMicrosoft Editを指定することで、システム全体のデフォルトエディターを切り替えることができる。この方法は、システムの設定ファイルを直接書き換えるよりも安全で、管理しやすいというメリットがある。 また、Linuxシステムでは「環境変数」を使ってエディターを指定する方法も存在する。特に `EDITOR` や `VISUAL` といった環境変数がそれに該当する。これらの環境変数を設定すると、update-alternativesで設定されたシステム全体のデフォルトよりも優先される。これにより、システム全体の設定は変更せず、特定のユーザーだけ、あるいは一時的に使用するエディターを変更するといった、より柔軟な運用も可能になる。一般的には、`EDITOR` にCUIベースのエディターを、`VISUAL` にGUIベースのエディターを指定することが多いが、CUI環境では両方に同じエディターを指定することが一般的だ。Microsoft Editをデフォルトにする際も、これらの環境変数を自身の好みに合わせて設定することで、より意図した通りにエディターを動作させることができる。 このように、UbuntuのデフォルトエディターをMicrosoft Editに変更することは、特にVS Codeに慣れ親しんだ開発者にとって、CUI環境での作業効率を大幅に向上させる有効な手段である。標準エディターの学習に時間を費やす代わりに、使い慣れたツールで即座に生産性を高められる点は、初心者から熟練者まで多くのエンジニアにとって大きな魅力と言えるだろう。自分の作業環境を主体的に選択し、カスタマイズしていくことは、快適で効率的な開発ライフを送るための第一歩となる。

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