【ITニュース解説】Netskope follows Rubrik as a rare cybersecurity IPO, both backed by Lightspeed
2025年09月09日に「TechCrunch」が公開したITニュース「Netskope follows Rubrik as a rare cybersecurity IPO, both backed by Lightspeed」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
サイバーセキュリティ企業Netskopeが新規株式公開(IPO)を申請した。これは投資会社Lightspeedが支援するRubrikに続く大型上場となる。設立13年の同社は、最大65億ドルの企業価値が見込まれている。
ITニュース解説
サイバーセキュリティ分野において、注目すべき大きな動きがあった。クラウドセキュリティサービスを提供するNetskope(ネットスコープ)という企業が、新規株式公開(IPO)を申請したことが報じられた。このニュースは、現代のITインフラとセキュリティの動向を理解する上で非常に重要な意味を持つ。
まず、このニュースの中心的なキーワードである「IPO」について解説する。IPOは「Initial Public Offering」の略語で、日本語では「新規株式公開」と訳される。これは、これまで創業者や特定の投資家など、限られた株主のみが株式を保有していた未上場の企業が、証券取引所を通じて初めて自社の株式を一般の投資家が売買できるようにすることを指す。企業がIPOを行う最大の目的は、大規模な資金調達である。市場から広く資金を集めることで、研究開発の促進、事業規模の拡大、優秀な人材の獲得などを加速させ、さらなる成長を目指すことが可能になる。Netskopeのような成長著しいテクノロジー企業にとって、IPOは事業を次の段階へ引き上げるための重要なステップとなる。
次に、今回主役となったNetskope社について掘り下げていく。同社は設立から約13年が経過した、企業のクラウド利用におけるセキュリティ対策を専門とする企業である。特に「SASE(Secure Access Service Edge、サシーと読む)」と呼ばれる、比較的新しいセキュリティの考え方を牽引する代表的な企業として世界的に知られている。現代のビジネス環境を考えると、SASEの重要性が理解できる。かつて、企業のITシステムは自社内のデータセンターに集約されており、従業員はオフィスに出社して社内ネットワークに接続して業務を行うのが一般的であった。そのため、セキュリティ対策も社内と社外の境界線を守る「境界防御モデル」が主流で、ファイアウォールなどの機器を設置して外部からの不正アクセスを防ぐことに重点が置かれていた。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により状況は一変した。企業のデータやアプリケーションはクラウドへ移行し、従業員はオフィスだけでなく、自宅や出張先など、あらゆる場所からノートPCやスマートフォンを使って業務を行うリモートワークが普及した。このように、守るべき対象であるデータやアクセスする従業員が社内外に分散したことで、従来の境界防御モデルではセキュリティを確保することが困難になった。SASEは、この課題を解決するために生まれたアプローチである。ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウド上で一つのサービスとして統合し、ユーザーがどこにいても、どの端末を使っていても、安全かつ高速に社内システムやクラウドサービスへアクセスできる環境を提供する。Netskopeは、このSASE市場におけるリーディングカンパニーであり、その技術力が高く評価されている。
今回のIPOにおいて、Netskopeの企業価値を示す評価額は最大で65億ドルに達する可能性があるとされている。これは、同社が提供するSASEソリューションの将来性や市場での優位性が、投資家から非常に高く評価されていることの証左である。近年、サイバーセキュリティ分野での大型IPOは珍しく、このニュースは市場に大きな活気をもたらすものとして注目されている。記事では、Netskopeと同様に最近IPOを果たしたRubrik(ルーブリック)という企業の名前も挙げられている。Rubrikは、ランサムウェア対策など企業のデータを保護することに特化したサイバーセキュリティ企業であり、こちらも市場から高い評価を受けて上場した。
さらに、この2つの企業の成功の裏には、Lightspeed Venture Partnersという投資会社の存在がある。これはベンチャーキャピタル(VC)と呼ばれる組織で、将来性のある未上場のスタートアップ企業に対して、成長の初期段階で資金を提供する役割を担う。ベンチャーキャピタルは、投資先の企業が成功裏にIPOしたり、他の大企業に買収されたりする際に保有株式を売却することで利益を得る。Lightspeedは、NetskopeとRubrikの両社に早期から投資を行い、その成長を支援してきた。今回のNetskopeのIPOにより、Lightspeedが保有する株式の価値は11億ドルにも上ると見込まれており、有望なテクノロジーを早期に見極め、成長を後押しするベンチャーキャピタルの目利き力の高さを示す好例となった。
この一連の出来事は、システムエンジニアを目指す者にとって、現代のIT業界を理解するための重要なヒントを与えてくれる。クラウド化と働き方の多様化は、企業のITインフラのあり方を根本から変え、それに伴いサイバーセキュリティはもはやITの一部門の課題ではなく、ビジネスの根幹を支える経営課題となっている。SASEのような新しい技術が生まれ、それを手掛ける企業が市場から高い評価を得て成長していくプロセスは、IT業界のダイナミズムそのものである。将来、企業のシステムを設計、構築、運用するエンジニアとして活躍するためには、サーバーやネットワークといった伝統的な技術知識に加え、こうした最先端のクラウドセキュリティの動向や、テクノロジー企業がベンチャーキャピタルの支援を受けて成長し、IPOを通じて社会的な存在になっていくというビジネスの仕組みについても理解を深めておくことが、自身のキャリアを築く上で極めて重要となるだろう。