【ITニュース解説】非VVVF車、2035年までに原則全廃 国交省が「鉄道の脱炭素化」で目標 主要事業者対象(更新)
2025年09月10日に「CNET Japan」が公開したITニュース「非VVVF車、2035年までに原則全廃 国交省が「鉄道の脱炭素化」で目標 主要事業者対象(更新)」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
国土交通省は鉄道の脱炭素化目標を公表した。省エネ効率の低い旧型車両を2035年までに原則全廃する方針だ。官民連携で次世代車両の導入を進め、2050年のカーボンニュートラル実現を目指す。これは、IT技術も関わる環境変革(GX)の一環で、2030年代にはCO2を大幅削減する。
ITニュース解説
国土交通省は、日本の鉄道が2050年のカーボンニュートラル実現に貢献するための具体的な目標を発表した。これは、地球温暖化対策として温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという、国全体の大きな方針である。鉄道分野では特に、現在も一部で運行されている「非VVVF車」を2035年までに原則として全廃し、より環境に優しい次世代型車両への移行を加速させる方針を示している。この取り組みは、主要な鉄道事業者を対象としている。
このニュースの核心を理解するには、まず「非VVVF車」と「VVVF車」の違いを知る必要がある。VVVFとは「Variable Voltage Variable Frequency」の略で、日本語では「可変電圧可変周波数」と訳される。これは、鉄道車両のモーターに供給する電気の電圧と周波数を自在に変化させることで、モーターの回転速度やトルク(回転する力)を最も効率的な状態で制御する技術だ。
非VVVF車は、このVVVFインバータ制御を採用していない、主に古い時代の車両を指す。これらの車両に多く見られる「抵抗制御」という方式では、モーターの回転速度を調整する際に、余分な電気エネルギーを大きな抵抗器で熱として消費し、捨てていた。これは非常にエネルギー効率が悪く、発電所から送られてきた電力の多くが無駄になってしまうことを意味する。例えるなら、自動車のアクセルとブレーキを同時に踏みながら速度を調整するようなもので、多くの燃料を無駄にする行為だ。
これに対してVVVFインバータ制御は、電力のロスを最小限に抑え、モーターを効率的に動かすことができる。そのため、同じ電力量でより長い距離を走行でき、省エネルギー効果が非常に高い。さらにVVVF制御車両の大きな利点として「回生ブレーキ」がある。これは、車両が減速する際にモーターを発電機として利用し、発生した電気を架線に戻して他の車両の走行に利用したり、電力会社に送り返したりする技術だ。従来のブレーキでは、摩擦熱としてエネルギーを捨てていたが、回生ブレーキはエネルギーを有効活用するため、さらなる省エネと二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献する。
今回の国土交通省の目標は、こうしたエネルギー効率の悪い非VVVF車を段階的に廃止し、VVVF車やさらに進化した次世代型車両への置き換えを進めることで、鉄道分野全体のCO2排出量を大幅に削減しようというものだ。具体的には、2030年代までに2013年度と比較して実質540万トンものCO2を削減するという、非常に大きな目標が掲げられている。これは、環境保護に大きく貢献するだけでなく、鉄道の運行コスト削減にも繋がる重要な取り組みである。
この取り組みは「GX(グリーントランスフォーメーション)」の一環として位置づけられている。GXとは、地球温暖化対策としての温室効果ガス排出量削減と、経済成長の両立を目指す社会・経済システムの変革を意味する。環境問題への対応を単なるコストと捉えるのではなく、新たな技術開発や産業の創出、国際競争力の強化に繋げようとする前向きな姿勢だ。鉄道分野におけるGXは、CO2排出量削減だけでなく、より高性能で快適、そして持続可能な鉄道システムを構築することを目指している。
この壮大な目標達成のためには、官民一体での協力が不可欠となる。国が政策や支援策を提示し、鉄道事業者や車両メーカーがそれに則って次世代型車両の開発と導入を積極的に進める形だ。次世代型車両には、VVVF制御のさらなる高性能化に加え、車体の軽量化によるエネルギー効率の向上、蓄電池を搭載して非電化区間でも走行できる車両(蓄電池電車)、水素を燃料とする燃料電池車両など、様々な革新的な技術が投入されることが期待される。これらの技術は、それぞれが高度な電子制御システムや情報通信技術によって成り立っている。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この鉄道の脱炭素化という大きな流れは、非常に魅力的な活躍の場となるだろう。車両そのものの高度化はもちろんのこと、それを支える運行管理システム、電力供給システム、メンテナンスシステムなど、あらゆるITシステムが刷新される機会が生まれる。
例えば、車両に搭載されるVVVFインバータ制御装置は、複雑な組み込みソフトウェアによってその性能が最大限に引き出される。その開発や最適化には、プログラミングや組み込みシステムの専門知識が不可欠だ。また、車両の運行データや電力消費データをリアルタイムで収集・分析し、AI(人工知能)を活用して最適な運行計画やエネルギー管理を行うためのデータ分析基盤やソフトウェアの開発も重要な役割を担う。
さらに、回生ブレーキで回収した電力を効率的に利用するためのスマートな電力網の構築、充電ステーションの管理システム、車両と地上設備間の安定したデータ通信技術(IoT)など、システムエンジニアが貢献できる領域は多岐にわたる。鉄道事業者と国、関連企業間での情報共有や大規模なプロジェクト管理においても、効率的なITツールの導入やシステム連携が求められるだろう。
鉄道の脱炭素化は、単に環境を守るだけでなく、より安全で効率的、そして未来志向の鉄道システムを構築するための大きな変革である。この変革の推進において、IT技術が果たす役割は非常に大きく、システムエンジニアは社会の基盤を支え、未来を創造する重要な担い手として、大きなやりがいを見つけられる分野となるだろう。