【ITニュース解説】NTT-AT、RPAの「WinActor」に生成AI連携機能を標準搭載へ

NTTアドバンステクノロジ（NTT-AT）が提供するRPAツール「WinActor」に、生成AIとの連携機能が標準搭載されるというニュースは、システムエンジニアを目指す初心者にとって、RPAとAIの融合が業務効率化にどのように貢献するかを理解する上で重要な意味を持つ。

まず、RPA（Robotic Process Automation）とは、人が手作業で行っている定型的な業務を、ソフトウェアロボットが代わりに行う技術のことだ。例えば、請求書のデータを会計システムに入力したり、Webサイトから情報を収集してExcelにまとめる作業などが該当する。RPAを導入することで、単純作業にかかる時間やコストを削減し、人的ミスを減らすことができる。

WinActorは、国内で広く利用されているRPAツールの一つだ。日本語環境での使いやすさや、様々なシステムとの連携のしやすさが特徴として挙げられる。これまでWinActorは、あらかじめ設定されたルールに基づいて、決められた手順で業務を自動化していた。

今回の発表のポイントは、このWinActorに生成AIとの連携機能が標準搭載されるという点だ。生成AIとは、大量のデータから学習し、新しいテキストや画像、音声などを生成できるAIのことだ。ChatGPTのような大規模言語モデル（LLM）が代表例として挙げられる。

生成AI連携機能がWinActorに搭載されることで、これまでRPAだけでは自動化が難しかった業務も自動化できるようになる。例えば、顧客からの問い合わせメールの内容をAIが解析し、適切な回答を生成して返信する、といった業務だ。従来は、人がメールの内容を読んで判断し、回答を作成する必要があったが、生成AIを活用することで、この作業を大幅に効率化できる。

具体的には、今回のアップデートでWinActorは、Azure OpenAI Service、Google Cloud Platform（GCP）の Vertex AI、Amazon Web Services（AWS）のAmazon Bedrockといった主要なクラウドプラットフォームの生成AIサービスとの連携が可能になる。これにより、ユーザーは自社のニーズや環境に合わせて、最適な生成AIサービスを選択し、WinActorと組み合わせて利用できる。

生成AIの活用例としては、例えば、請求書の画像データをAIが解析し、必要な情報を自動的にWinActorに入力する、といったケースが考えられる。従来は、OCR（光学文字認識）技術を使って文字を読み取る必要があったが、生成AIを活用することで、より高度な解析が可能になり、読み取り精度を向上させることができる。また、契約書の内容をAIが要約し、重要な条項を自動的に抽出してWinActorに連携する、といった活用方法も考えられる。これにより、契約書のレビュー作業を効率化し、リスク管理を強化することができる。

今回の発表は、WinActorのライセンス体系にも変更をもたらす。生成AI連携機能を標準搭載した新しいライセンスが提供されることで、ユーザーは追加費用をかけることなく、生成AIの機能を活用できるようになる。これにより、中小企業や地方自治体など、これまでAI導入に二の足を踏んでいた組織でも、RPAとAIを組み合わせた高度な業務自動化を比較的容易に実現できるようになる。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、今回のニュースは、RPAとAIという二つの重要な技術が融合し、企業の業務効率化に大きく貢献する可能性を示唆するものだ。RPAの知識だけでなく、AIの基礎知識や、クラウドプラットフォームの知識も習得することで、より高度なシステム開発や業務自動化に携わることができるようになるだろう。特に、生成AIの進化は目覚ましく、今後も様々な分野で活用が進むことが予想されるため、積極的に学習に取り組むことが重要だ。

今回のWinActorのアップデートは、RPA市場における競争を激化させる可能性もある。他のRPAベンダーも、同様に生成AIとの連携機能を強化する動きを見せるかもしれない。これにより、RPAツールの機能や価格競争が激化し、ユーザーにとってはより多くの選択肢が生まれることが期待される。

今回のニュースをきっかけに、RPAとAIの組み合わせによる業務自動化について、より深く理解を深め、自身のスキルアップにつなげてほしい。