【ITニュース解説】Ohio senator introduces 25% tax on companies that outsource jobs overseas

先日、アメリカのオハイオ州で、海外に業務を委託（アウトソーシング）する企業に対して、25%の税金を課すという法案が上院議員によって提案された。この法案は、企業が雇用を海外に流出させるのを抑制し、国内での雇用創出を促すことを目的としている。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このニュースが何を意味するのか、その背景にある「アウトソーシング」という概念から順に解説していく。

まず、「アウトソーシング」とは何か。これは企業が自社の業務の一部、または全てを外部の専門業者に委託することを指す。例えば、自社でシステム開発の担当者を抱えるのではなく、システム開発専門の会社に依頼して、システムの設計からプログラミング、テストまで一連の作業を行ってもらうようなケースがこれにあたる。企業がアウトソーシングを行う主な理由はいくつかある。一つはコスト削減だ。自社で従業員を雇い、育成し、設備を整えるよりも、外部に委託した方が総体的に費用を抑えられる場合がある。特に、人件費が高い国や地域で事業を行う企業にとっては、このメリットは大きい。次に、専門知識の活用だ。特定の分野で高い専門性を持つ外部業者に依頼することで、自社にないスキルやノウハウを活用し、より高品質なサービスや製品を効率的に開発できる。また、自社のリソース（人材、資金など）を本業に集中させられるというメリットもある。

アウトソーシングの中でも、特に「オフショア開発」と呼ばれる形態は、今回の法案と密接に関連している。オフショア開発とは、企業がシステム開発などの業務を、自国よりも人件費の安い海外の企業や拠点に委託することだ。例えば、アメリカの企業がインドやベトナム、フィリピンなどの国々にシステム開発の業務を依頼するケースが一般的だ。これらの国々には、優秀なIT人材が豊富でありながら、アメリカ国内と比較して人件費が格段に安いため、企業はさらなるコスト削減を期待できる。システムエンジニアを目指す皆さんにとっても、オフショア開発は将来的に関わる可能性のある開発形態の一つだろう。しかし、オフショア開発にはメリットだけでなく、デメリットも存在する。文化や言語の違いによるコミュニケーションの課題、時差による連絡の取りにくさ、そして遠隔地での品質管理の難しさなどが挙げられる。

今回のオハイオ州上院議員が提案した法案は、このようなオフショア開発、つまり「雇用を海外に流出させる行為」に対して、25%という高い税率を課すことで、企業が国内での雇用を優先するように促す狙いがある。アメリカ国内の製造業やIT産業において、海外へのアウトソーシングが増加した結果、国内の雇用が減少しているという懸念が背景にあると見られる。この法案が成立すれば、海外へのアウトソーシングにかかるコストが増大するため、企業は国内での業務遂行や雇用創出を真剣に検討せざるを得なくなるだろう。

もしこのような法案が実際に成立し、海外へのアウトソーシングが抑制されることになれば、システムエンジニアを目指す皆さんにとってはいくつかの影響が考えられる。まず、国内でのシステム開発案件が増加する可能性がある。企業が海外ではなく国内でシステム開発を行うようになれば、自ずと国内のシステムエンジニアの需要が高まることになる。これは、皆さんが就職活動を行う上で、より多くの機会に恵まれる可能性を示唆している。国内のIT業界全体の活気が増し、技術者にとって魅力的な職場が増えるかもしれない。

一方で、企業のコスト構造にも変化が生じる。海外へのアウトソーシングがしにくくなれば、国内の人件費や関連コストを支払うことになり、結果としてIT投資全体のコストが増加する可能性がある。企業がこのコスト増をどのように吸収するかが注目される点だ。もしかしたら、ITプロジェクトの予算が厳しくなる、あるいはプロジェクトの規模や数が調整される可能性もゼロではない。しかし、国内での雇用が増えれば、技術力を持った人材が育ち、国内の技術レベルが向上する好循環が生まれる可能性も期待できる。

今回の法案は、グローバル経済の中で企業がどのような活動を行うか、そして各国の政府が国内の雇用をどのように守り、育成していくかという、大きな問題の一端を示している。IT業界は国境を越えたビジネスが非常に活発な分野だが、このような政治的な動きが無関係ではない。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、技術力はもちろん重要だが、このように世界や自国の経済、政治の動きが、自分の働く業界やキャリアにどのように影響を与えるかを理解しておくことも、将来を見据える上で非常に大切なことだと言えるだろう。