【ITニュース解説】Measuring Order Book vs AMM Share on the XRP Ledger
2026年09月11日に「Dev.to」が公開したITニュース「Measuring Order Book vs AMM Share on the XRP Ledger」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
XRP LedgerではAMM導入後も、取引量の約88%がオーダーブック経由だった。これは、取引手数料が非常に安く、他のブロックチェーンと異なり、オーダーブックでのプロの取引が効率的に行えるためだ。
ITニュース解説
ブロックチェーン技術の進化は、分散型金融(DeFi)の分野で革新的な変化をもたらしている。その中でも自動マーケットメイカー(AMM)は、特定のブロックチェーン上で流動性を提供し、取引を可能にする新しい仕組みとして注目を集めている。XRP Ledger(XRPL)でも2024年にAMMの機能が導入され、多くの人々は、他のスマートコントラクトチェーンと同じように、取引の流動性がこのAMMプールへと集中していくものと予想していた。
しかし、公開されているデータを見ると、その予想とは異なる興味深い状況が浮かび上がってきた。XRPLでは、従来の取引方法であるオーダーブック(板取引)と新しいAMMプールの両方で取引が行われているが、現在のところ、取引量の大半はオーダーブックが占めている。具体的には、直近のデータでは、約88.2%もの取引量がオーダーブックを通じて行われ、AMMプールでの取引量は残りの部分に留まっている。これは、他の多くのブロックチェーンで見られる傾向とは逆の現象であり、XRPLの市場構造が独自の進化を遂げていることを示している。
AMMとは、スマートコントラクトというプログラムによって、買い手と売り手の間に自動的に流動性を提供する仕組みである。仮想通貨のペアをプールに預け入れることで、そのプールが自動的に価格を計算し、ユーザーはそのプールと取引を行う。一方、オーダーブックは、従来の株式市場のように、買い手と売り手がそれぞれ希望する価格と数量の注文を出し合い、条件が一致すれば取引が成立する、より古典的な仕組みである。
さらに詳細にデータを見ていくと、この状況をより深く理解できる。オーダーブックでの取引は、取引回数自体は少ないものの、一回あたりの平均取引サイズが非常に大きいという特徴がある。例えば、ある時点でのデータでは、オーダーブックの平均取引サイズが約114.71 XRPであったのに対し、AMMプールでは約12.43 XRPと、かなり小さい。これは、大きな金額を動かす大口のトレーダーはオーダーブックを利用する傾向があり、比較的小さな取引を行うユーザーはAMMプールを利用する傾向があることを示唆している。つまり、大きな注文はオーダーブックへ、小さな注文はAMMプールへとルーティングされている。
なぜXRPLでは、AMMが導入されたにもかかわらず、オーダーブックがこれほどまでに強い存在感を保っているのだろうか。その理由は、XRPLの根本的な設計思想と経済性に深く根ざしている。XRPLには、2012年からオンチェーン、つまりブロックチェーン上に直接構築された中央指値注文板(Central Limit Order Book)が存在していた。これは、従来の金融市場における証券取引所のような機能が、分散型台帳上で提供されてきたことを意味する。
他の多くのスマートコントラクトチェーン、特にイーサリアムなどのプラットフォームでは、ネットワークの混雑具合によって取引手数料(「ガス代」と呼ばれる)が高騰することが頻繁にある。このガス代が高すぎると、頻繁に注文を修正したり、キャンセルしたりする「マーケットメイク」という行為自体が経済的に成り立たなくなってしまう。プロのトレーダーは、常に最適な価格で流動性を提供し続けるために、細かい注文の調整を繰り返す必要があるが、ガス代が高いとそのたびに大きなコストがかかるため、マーケットメイクを断念せざるを得ない状況が生まれるのだ。このような環境では、受動的に流動性を提供するAMMの仕組みが、取引コストの問題を回避する「ワークアラウンド」(一時的な解決策)として機能してきた。
しかし、XRPLでは状況が大きく異なる。XRPLでの取引手数料は非常に安価で、注文のキャンセルにかかる費用はほんの数セントにも満たない。また、取引の承認も3~4秒という非常に短い時間で完了する。この低コストと高速性という特徴が、XRPL上でのプロフェッショナルなマーケットメイクを経済的に持続可能にしている。つまり、市場参加者が頻繁に注文を更新したりキャンセルしたりしても、そのコストがほとんどかからないため、オーダーブックの流動性が深く、そして効率的に維持されるのだ。この事例は、「市場構造は取引の経済性に従う」という重要な原則を示している。多くの業界関係者は、取引コストが高いブロックチェーンの事例から一般化して、AMMが完全に勝利したと結論付けがちだったが、XRPLはまさにその考えに対する生きた反例を提示していると言える。
このような市場の動向は時間の経過とともに変化する可能性があるため、継続的に追跡することが重要である。提供されたコード例のように、24時間ごとの取引量データを定期的に取得することで、オーダーブックとAMMのシェアがどのように推移していくかを監視できる。
実際にXRPLで取引を行うユーザーにとっての実用的なアドバイスとしては、単にオーダーブックかAMMプールかの一方を選ぶのではなく、流動性の総量、つまり市場全体の深さを最適化するように注文をルーティングすることが推奨される。XRPLは、オーダーブックとAMMプールの両方の流動性を同じ取引パスで利用できる仕組みを持っているため、流動性の高い通貨ペアの場合、価格と時間優先の原則に基づいて約定するオーダーブックの方が、より有利な価格で約定する可能性が高い。なぜなら、AMMはあらかじめ設定された数式(カーブ)に沿って約定するため、流動性の深さによっては不利なスリッページが発生することがあるからだ。
XRP LedgerにおけるオーダーブックとAMMの動向は、ブロックチェーンの設計思想と経済性が、その上で構築される市場構造にどれほど大きな影響を与えるかを示す貴重な事例である。一概に「AMMが優れている」という結論に飛びつくのではなく、基盤となるテクノロジーの特性を深く理解することが、今後の分散型金融市場の動向を予測し、より良いシステムを設計する上で不可欠だ。