VAN(バン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
VAN(バン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
付加価値通信網 (フカカチツウシンモウ)
英語表記
VAN (ヴァン)
用語解説
VAN(Value Added Network)とは、付加価値通信網と訳される、単なる通信回線の提供にとどまらず、ネットワーク上で様々な付加価値サービスを提供する情報通信サービスの総称である。主に企業間のデータ交換を円滑化し、情報システム間の連携を効率的に行うことを目的として発展してきた。
VANが登場する以前、企業が別の企業とコンピュータシステムを介して情報交換を行う際には、多くの困難が伴った。例えば、ある企業が在庫情報を取引先に送る場合、互いのコンピュータシステムが異なれば、通信するためのプロトコル(通信規約)やデータのフォーマット(形式)も異なることがほとんどだった。そのため、企業Aのシステムが企業Bのシステムと直接データをやり取りするためには、それぞれが相手のシステムに合わせて多大な開発コストをかけてシステムを改修するか、あるいは間に手作業を挟んでデータを変換するといった非効率な方法を取るしかなかった。さらに、通信回線も高価であり、個別に契約・管理することは中小企業にとって大きな負担だった。このような状況では、電子的なデータ交換は一部の大企業に限られ、広く普及するには至らなかった。
こうした課題を解決するために登場したのがVANである。VANは、複数の企業間における異なる情報システム間の相互接続を可能にする仲介役を担う。具体的には、以下のような機能とサービスを提供することで、企業間の情報交換に付加価値をもたらした。
第一に、プロトコル変換機能がある。企業Aが使用する通信方式と企業Bが使用する通信方式が異なっていても、VANがその間の通信方式の違いを吸収し、相互に接続できるように変換する。これにより、各企業は自社の既存システムを変更することなく、異なる通信方式の企業とデータをやり取りできるようになった。
第二に、データフォーマット変換機能が重要である。企業間で交換されるデータ、例えば受発注データや請求データなどは、各企業が独自のフォーマットで管理していることが多い。VANは、企業Aから送られてきたデータフォーマットを企業Bが求めるデータフォーマットに自動的に変換して転送する。この機能は、特にEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)の基盤として非常に重要な役割を果たした。EDIとは、企業間で商取引に関するデータを、決められた標準的なフォーマットに従って電子的に交換する仕組みであり、VANはこのEDIを実現するためのインフラとして広く利用された。これにより、紙ベースでの受発注業務や請求業務が電子化され、業務処理のスピードアップとコスト削減に大きく貢献した。
第三に、蓄積・転送(ストア&フォワード)機能がある。これは、送信側の企業がデータをVANに送ると、VANがそのデータを一時的に保管し、受信側の企業がデータを受け取る準備ができたタイミングで転送する機能である。これにより、送信側と受信側が同時にオンラインである必要がなくなり、いつでも都合の良い時にデータ交換が可能となった。また、大量のデータを一度にまとめて転送したり、指定した時間にデータを一括配信したりすることも可能になった。
第四に、ネットワーク共有と集中管理機能がある。VAN事業者は、複数の企業に対して共通の通信インフラを提供することで、個々の企業がそれぞれ専用回線を敷設するよりもはるかに低コストで高品質な通信サービスを利用できるようにした。また、ネットワークの監視、障害対応、セキュリティ管理などをVAN事業者が一元的に行うため、各企業は通信インフラの運用管理にかかる負担を軽減することができた。強固なセキュリティ対策が施されたネットワーク環境を通じて、機密性の高い商取引データを安全に交換できる点も大きなメリットであった。
VANの登場と普及により、企業間の情報システム連携は飛躍的に進歩した。特に流通業界や金融業界など、多数の取引先との間で定型的なデータ交換が頻繁に発生する業界では、VANを介したEDIが業務効率化の不可欠な要素となった。当初は主に電気通信事業者が提供する大規模な「公共VAN」が主流だったが、特定の業界に特化した「業界VAN」や、特定の企業グループ内で利用される「クローズドVAN」など、さまざまな形態が発展していった。
現代においては、インターネットの普及と通信技術の標準化、特にTCP/IPプロトコルの世界的な採用により、企業間の接続は以前に比べてはるかに容易になった。多くの企業がインターネット回線を安価に利用できるようになり、プロトコル変換の必要性は以前ほど高くなくなっている。しかし、VANが提供してきた付加価値は形を変えながらも依然として重要である。例えば、高度なセキュリティ要件、大量データの確実な配送、複雑なデータフォーマット変換、データ変換後の業務アプリケーション連携、そして24時間365日の安定稼働とサポート体制などは、インターネット上の一般的なサービスだけではカバーしきれない領域がある。
そのため、現在でも高信頼性や高セキュリティが求められるミッションクリティカルな業務や、レガシーシステムとの連携が必要な場面では、進化を遂げたVANサービスが引き続き利用されている。クラウドサービスの一部として提供されるデータ連携プラットフォームや、EDIサービスも、VANが培ってきた思想と技術を基盤としていると言える。VANは、企業間データ連携の歴史において、技術的な壁を乗り越え、ビジネスプロセスの効率化を大きく推進した重要な存在である。システムエンジニアを目指す上で、このような企業間連携の歴史と、その中でVANが果たした役割を理解することは、現代の複雑なシステム連携を理解する上でも非常に有益である。
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