【ITニュース解説】ラズパイのメモリswapを止めてSDカード寿命を延ばしたい
2025年09月08日に「Qiita」が公開したITニュース「ラズパイのメモリswapを止めてSDカード寿命を延ばしたい」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Raspberry Piはメモリ不足時、SDカードの一部を一時メモリ(swap)として利用する。しかしSDカードへの頻繁な書き込みは寿命を縮める原因となるため、swap機能を無効化することで寿命を延ばすことが可能だ。その具体的な設定方法を解説する。(117文字)
ITニュース解説
Raspberry Pi(ラズベリーパイ)のような小型コンピュータは、自宅サーバーやIoTデバイスの基盤として、24時間365日稼働させる用途で広く利用されている。このような常時稼働環境で重要になるのが、システムの安定性とハードウェアの耐久性である。特にRaspberry Piでは、OSやデータを保存する記憶媒体としてSDカードが使われるが、このSDカードには書き込み回数に上限があり、消耗品としての一面を持つ。そのため、SDカードの寿命をいかに延ばすかは、長期的な安定稼働を目指す上で重要な課題となる。その寿命を縮める一因として、「スワップ」というOSの仕組みが挙げられる。
まず、コンピュータの基本的な動作を理解するために、「メモリ」と「ストレージ」の違いについて説明する。メモリ(RAM)は、CPUが処理を行うための高速な作業スペースであり、電源が切れると内容が消えてしまう揮発性の記憶領域である。一方、ストレージは、OSやアプリケーション、作成したデータなどを永続的に保存しておくための場所で、電源を切っても内容は保持される。Raspberry Piでは、このストレージの役割をSDカードが担っている。メモリは作業机、ストレージは本棚に例えられることが多い。作業が速く進むのは机の上だが、永続的に保管するのは本棚、という関係性だ。
では、「スワップ」とは何だろうか。これは、OSがメモリ不足に陥らないようにするための仕組みで、「仮想メモリ」とも関連が深い。コンピュータが多くのアプリケーションを同時に実行すると、物理的なメモリの容量を使い切ってしまうことがある。そのような状況で、OSはメモリ上で現在あまり使われていないデータの一部を、一時的にストレージ(Raspberry Piの場合はSDカード)に書き出して退避させる。そして、そのデータが再び必要になった際に、ストレージからメモリに読み戻す。このように、ストレージの一部をメモリの延長領域であるかのように利用する仕組みがスワップである。スワップのおかげで、物理的なメモリ容量を超える大きな処理を実行したり、メモリ不足によるシステム全体の停止を防いだりすることができる。
しかし、このスワップの仕組みは、SDカードをストレージとして使用するRaspberry Piにとっては諸刃の剣となる。SDカードは、パソコンで使われるSSDやHDDといったストレージと比較して、データの書き込み速度が遅く、また製品寿命を左右する総書き込み回数にも限りがある。スワップが発生するということは、SDカードに対して頻繁にデータの書き込みと読み出しが行われることを意味する。本来は永続的なデータ保存のために使われるべきSDカードが、メモリの代替として酷使されるため、消耗が激しくなり、結果として寿命を大幅に縮めてしまうのである。常時稼働のサーバーとして利用している場合、ユーザーが意図しないバックグラウンド処理などによってスワップが断続的に発生し、気づかないうちにSDカードを劣化させている可能性がある。
そこで、この問題を解決し、SDカードの寿命を延ばすための一つの有効な対策が、スワップ機能を意図的に無効化することだ。スワップを無効にすれば、メモリの内容がSDカードに書き出されることがなくなるため、SDカードへの不要な書き込みアクセスを根本的に断つことができる。具体的な手順としては、まず現在のシステムでスワップが有効になっているかを確認し、有効であればスワップを停止するコマンドを実行する。さらに、Raspberry Piを再起動してもスワップ機能が自動的に有効にならないよう、関連するサービスを無効化して設定を恒久的なものにする。これにより、SDカードは本来のデータストレージとしての役割に専念でき、寿命の延長が期待できる。
ただし、スワップを無効化する際には注意が必要である。スワップは本来、メモリ不足からシステムを保護するための保険的な機能だ。この機能を無効にした状態で、万が一物理メモリをすべて使い切ってしまった場合、システムは新しい処理のためのメモリを確保できなくなる。その結果、アプリケーションがエラーで停止したり、OSが「OOM Killer(Out of Memory Killer)」という仕組みを起動して、メモリを大量に消費しているプロセスを強制的に終了させたりすることがある。最悪の場合、システム全体が不安定になり、応答不能に陥るリスクも存在する。したがって、スワップの無効化は、搭載している物理メモリの容量に十分な余裕がある場合にのみ検討すべき対策である。例えば、比較的大容量な4GBや8GBのメモリを搭載したRaspberry Piモデルで、メモリ使用率が常に低い用途であれば、スワップを無効化するメリットは大きいだろう。自身の環境でどの程度メモリが使用されているかを事前に監視し、メモリが枯渇する危険性が低いことを確認した上で、慎重に判断することが極めて重要だ。システムの安定性とハードウェアの長寿命化という、トレードオフの関係を理解することが求められる。