HDD(エイチディーディー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
HDD(エイチディーディー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ハードディスクドライブ (ハードディスクドライブ)
英語表記
HDD (エイチディーディー)
用語解説
HDDは、Hard Disk Driveの略称であり、コンピュータの主要な記憶装置の一つである。ストレージとも呼ばれ、オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションソフトウェア、そして利用者が作成した文書や画像、動画などのデジタルデータを恒久的に保存する役割を担う。HDDの最大の特徴は、電源が供給されていない状態でも記録したデータを保持し続ける「不揮発性」にある。これにより、コンピュータの電源を一度切っても、次回起動時には前回の状態から作業を再開したり、保存したファイルを利用したりすることが可能となる。近年、同じ不揮発性の記憶装置であるSSD(Solid State Drive)が普及しているが、HDDは依然として大容量のデータを低コストで保存できるという強力な利点を持ち、特にサーバーでのデータ保管やバックアップ、個人の大容量データアーカイブなどの用途で広く利用され続けている。
HDDの内部構造と動作原理は、物理的な機械部品の精密な連携に基づいている。内部は塵や埃を嫌うため、密閉された筐体の中に主要な部品が収められている。中心的な役割を果たすのは「プラッタ」と呼ばれる、磁性体を塗布した円盤状の記録媒体である。このプラッタは「スピンドルモーター」によって高速で回転する。プラッタの表面には、「磁気ヘッド」が配置されており、データの読み書きを行う。磁気ヘッドは「アクチュエータ」と呼ばれるアームの先端に取り付けられており、プラッタが回転する中で目的のデータが記録されている位置まで極めて高速かつ正確に移動する。データの記録は、磁気ヘッドがプラッタ表面の磁性体を微小な領域ごとに磁化させることで行われる。磁化の向き(N極またはS極)をデジタルデータの0と1に対応させることで、情報を記録する。読み出しはその逆で、磁気ヘッドがプラッタ上の磁化の状態を検知し、それを電気信号に変換してデータとして解釈する。磁気ヘッドはプラッタに直接接触するのではなく、プラッタの高速回転によって生じる空気の流れに乗り、ごくわずかに浮上した状態で動作する。この物理的な動作を伴うため、動作音や振動が発生し、衝撃に弱いという機械的な特性を持つ。
HDDの性能を評価する際には、いくつかの主要なスペックが指標となる。最も基本的な指標は「記憶容量」であり、保存できるデータ量をGB(ギガバイト)やTB(テラバイト)といった単位で示す。HDDは技術的に大容量化が容易であり、テラバイト級の製品が手頃な価格で入手できる点が大きな魅力である。「回転数」は、プラッタが1分間に回転する速度をrpm(revolutions per minute)という単位で示すもので、データの読み書き速度に直結する重要な要素だ。一般的に、5400rpmや7200rpmの製品が多く、回転数が高いほどデータの読み書き性能は向上するが、その分、消費電力や動作音、発熱も増加する傾向にある。また、「キャッシュメモリ」も性能に影響を与える。これはHDD内部に搭載された高速な半導体メモリであり、コンピュータ本体とHDDとの間のデータ転送を円滑にするための一時的な保管場所として機能する。キャッシュ容量が大きいほど、頻繁にアクセスされるデータへの応答速度が改善されることがある。物理的なサイズを示す「フォームファクタ」も重要で、主にデスクトップPCで使われる3.5インチと、ノートPCや小型サーバーで使われる2.5インチの2種類が存在する。
コンピュータとHDDを接続するためのインターフェース規格も複数存在するが、現在、個人向けおよび一般的なサーバー用途で主流となっているのはSATA(Serial ATA)である。SATAは扱いやすいケーブルで接続でき、世代が上がるごとに転送速度が向上している。一方、高い信頼性、性能、拡張性が求められるエンタープライズ向けのサーバーやストレージシステムでは、SAS(Serial Attached SCSI)が広く採用されている。SASはSATAと物理的な互換性を持ちつつ、より高度な機能や高速なデータ転送をサポートしている。システムを構築する際には、マザーボードやコントローラーが対応するインターフェース規格に合わせてHDDを選定する必要がある。
システムエンジニアとしてHDDを取り扱う上では、これらの基本的な知識に加え、いくつかの実用的な観点を理解しておくことが不可欠である。まず、SSDとの適切な使い分けが挙げられる。OSやデータベースなど、高速な読み書きが求められる用途にはSSDを、大容量データのバックアップやアーカイブ、アクセス頻度の低いデータの保管には、容量単価が安いHDDを利用するというハイブリッド構成が一般的である。次に、信頼性と故障対策も極めて重要となる。HDDは物理的な駆動部品を持つため消耗品であり、いずれは故障する。その予兆を検知するためにS.M.A.R.T.という自己診断機能の情報を監視したり、重要なデータについては冗長化を図る必要がある。その冗長化を実現する代表的な技術がRAIDである。RAIDは複数のHDDを組み合わせて仮想的な一つのドライブとして扱い、ミラーリング(同じデータを複数のドライブに書き込む)やパリティ(誤り訂正符号を付加する)といった手法を用いて、一台のHDDが故障してもデータが失われない耐障害性を確保したり、あるいはストライピング(データを分散して書き込む)によって読み書き性能を向上させたりする。サーバー環境では、このRAID構成を前提としてHDDの機種や本数を選定することが基本となる。これらの特性を深く理解し、システムの要件や目的に応じて最適なストレージを選択、設計、運用することが、システムエンジニアに求められる重要なスキルの一つである。