Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】Real game AI, not a chatbot: why these opponents don't use an LLM

2026年09月17日に「Dev.to」が公開したITニュース「Real game AI, not a chatbot: why these opponents don't use an LLM」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

ゲームAIはLLMではなく、ミニマックスなどの古典的ゲーム木探索を使う。これにより、正確で高速、常に最適な手を打つAIを実現できる。LLMは言語処理は得意だが、ゲームの必勝戦略を見つけるのには向かず、遅延も発生するため、適切なアルゴリズム選択が重要だ。

ITニュース解説

最近のIT業界では「AI」という言葉を聞くと、まるでそれが「大規模言語モデル(LLM)」のことを指すかのように感じられる場面が多い。しかし、すべてのAIがLLMであるわけではなく、特定の種類の問題には、昔からある古典的なAI技術が今でも最適解となる場合がある。この記事では、特にゲームAIを例に挙げ、なぜLLMではなく古典的なアルゴリズムが選ばれるのか、その理由をシステムエンジニアを目指す初心者の皆さんにも分かりやすく解説する。

ゲームAI、例えば三目並べや2048のようなボードゲームの相手を考える場合、求められるのは「最適な一手」を素早く、確実に導き出すことだ。筆者の開発したゲームAIでは、LLMではなく、ゲームツリー探索という古典的な手法を採用している。これは、ミニマックス、期待値ミニマックス、幅優先探索といったアルゴリズムの総称であり、これらは意図的な設計選択の結果である。この選択が、結果として「証明可能に正しい手」を「瞬時に」打つ相手と、「それっぽい手」を「遅く」打つ相手との決定的な違いを生む。

具体的に、三目並べのAIは、わずか0.3ミリ秒(1000分の3秒)程度で最適な一手を見つけ出し、しかもネットワーク通信なしでユーザーのデバイス上で動作する。そして、1200回のテストゲームで一度も負けたことがないという実績を持つ。このような「決まった入力に対して決まった出力が必ず得られる(決定論性)」、「正しいことが数学的に証明できる」、「サーバーとの通信なしで非常に低い遅延(レイテンシ)で動作する」といった特性は、LLMでは構造上提供できないものだ。

「なぜLLMを使わないのか?」という疑問は、今の時代では当然湧いてくるだろう。ボードの状態をLLMに伝えて一手を聞くことも技術的には可能かもしれない。しかし、LLMは基本的に「次に続く最もらしいテキスト(単語や記号の連なり)を予測する」ために訓練されている。ゲームツリーを探索し、最適な一手を見つけることとは目的が全く異なるのだ。LLMは三目並べの戦略を流暢に説明できるかもしれないが、それでも実際にプレイすると負けてしまう手を打つ可能性がある。なぜなら、流暢なテキスト生成と最適なゲームプレイは、AIが目指す異なる目標だからである。決まったルールを持つゲームで勝利することは、まさに「探索問題」であり、そのための正確かつ高速なアルゴリズムはすでに確立されている。

筆者が開発した三つのゲームエンジン、すなわち三目並べ(ミニマックス+アルファベータ法)、2048(期待値ミニマックス)、そしてカラーラインズ(幅優先探索)は、いずれも教科書に載っているような古典的かつ決定論的なアルゴリズムを使用しており、ブラウザのタブ内でミリ秒以下の速さで動作する。

ここで、ゲームツリー探索とLLMの主な違いを比較してみよう。ゲームツリー探索は、合法的な局面の木(ツリー)を探索して一手を選び、その正しさはゲームの深さ全体に対して証明可能だ。同じ盤面が与えられれば必ず同じ手(決定論的)を返し、ミリ秒以下の遅延でデバイス上で動作し、サーバーを必要としない。一方、LLMは次に続くテキストを予測して一手を選び、正しさの保証はなく、流暢なテキストが最適解とは限らない。サンプリングや表現によって出力が変わる(非決定論的)可能性があり、ネットワークを介したサーバーとの通信が必要なため、遅延が発生する。これらは、単に性能の比較ではなく、それぞれのシステムがどのように判断を下すかという根本的な設計の違いに他ならない。

古典的なゲームAIの「決定論性」は、AIの強さを客観的に評価する上でも大きな利点となる。出力が揺らがないため、AIを何百回も実行し、その結果を正確に数え上げることができるのだ。例えば、2048のAIは250回の自己対戦で、約69.6%のゲームで2048タイルに到達し、30%が4096タイルに到達した。これは、1手あたり約0.5ミリ秒で探索を行う「コーナー・スネーク戦略」の期待値ミニマックスが達成できる、正直な上限値を示している。三目並べの場合はさらに明確で、完全な深さまで探索するミニマックスは「絶対に負けない」ことが数学的な定理として証明されている。1200回の自己対戦(ランダムな相手との1000回、完璧なコピーAIとの200回)で一度も負けていない。アルファベータ法という最適化手法を使うことで、最初の局面での探索ノード数を大幅に削減しつつ(約93%削減)、0.3ミリ秒程度という高速さを実現している。

これらの話は、決してLLMを否定するものではない。LLMは言語に関するタスクにおいて非常に優れた能力を発揮する。筆者のサイトにあるツールの中にも、純粋に言語処理を必要とするものにはLLMが役立つ場面もあるだろう。しかし、明確なルールと有限な局面の木を持つボードゲームは、まさに古典的な探索アルゴリズムが発明された目的そのものなのである。それぞれのタスクに「適切なツール」を選ぶことこそが、システムエンジニアリングにおいて非常に重要な考え方なのだ。

関連コンテンツ

関連IT用語