【ITニュース解説】従業員のデジタル体験を改善するDEXに注力--TeamViewer、日本市場での展開を加速
2025年09月08日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「従業員のデジタル体験を改善するDEXに注力--TeamViewer、日本市場での展開を加速」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
リモート接続ツールで知られるTeamViewerが、日本市場での事業強化を発表した。従業員のPC利用環境を快適にする「DEX(デジタル従業員体験)」の改善に注力し、企業の生産性向上を支援することが狙いだ。
ITニュース解説
ソフトウェア企業のTeamViewerが、日本市場における新たな事業戦略を発表した。この戦略の中心にあるのが「DEX(デジタル・エンプロイー・エクスペリエンス)」という考え方である。DEXとは、直訳すると「従業員のデジタル体験」となり、従業員が仕事で利用するパソコンやスマートフォン、ソフトウェア、ネットワークといったIT環境全般における快適さや使いやすさの度合いを指す。TeamViewerは、このDEXを向上させるためのソリューションに注力し、日本での事業展開を加速させる方針を示した。これは、同社が従来から強みとしてきたリモートアクセスやリモートサポートの技術を、より広い視野で活用していくという意思表示でもある。
なぜ今、DEXがこれほど重要視されているのか。その背景には、近年の働き方の大きな変化がある。特に、リモートワークや、オフィス勤務と在宅勤務を組み合わせたハイブリッドワークが多くの企業で定着した。従業員はオフィスだけでなく、自宅や外出先など、さまざまな場所で仕事をするようになった。これにより、従業員が使用するデバイスの種類は増え、利用するアプリケーションも多様化し、IT環境は以前よりも格段に複雑になった。かつては、パソコンに不具合が生じれば、社内のIT部門に直接持ち込んで見てもらうことができたが、現在ではそれも難しい。従業員一人ひとりが直面する「パソコンの動作が遅い」「特定のアプリケーションが頻繁にフリーズする」「ネットワークに繋がりにくい」といった小さなトラブルが、仕事の生産性を直接的に低下させる要因となっている。これらの問題は、従業員のストレスやモチベーションの低下にも繋がり、ひいては優秀な人材の離職リスクを高めることにもなりかねない。一方で、IT部門の負担も増大している。多様化する問い合わせに一つひとつ対応する「受け身」のサポートでは、根本的な問題解決に至らず、同じようなトラブルが繰り返し発生してしまうという課題を抱えている。
こうした課題に対し、TeamViewerは自社のDEXソリューションを核として、新しいアプローチを提案している。従来のITサポートは、問題が発生した後に対応する「リアクティブ(事後対応型)」なものが主流だった。しかし、TeamViewerが目指すのは、問題が発生する前にその兆候を検知し、未然に防ぐ「プロアクティブ(予防的)」なサポートである。具体的には、社内にある全てのパソコンの稼働状況をリアルタイムで監視する。例えば、バッテリーの劣化が進んでいる、ハードディスクの空き容量が少なくなっている、メモリの使用率が常に高いといったパフォーマンス低下の予兆をシステムが自動で検知し、IT部門に警告を発する。これにより、IT担当者は、従業員が実際に不便を感じる前に、部品の交換を指示したり、不要なデータを整理するよう促したりといった先手の対策を打つことが可能になる。
さらに、このソリューションは会社全体のIT環境をデータに基づいて可視化し、分析する機能も提供する。どの部署で、どのアプリケーションが最も頻繁にクラッシュしているか、あるいは特定の機種のパソコンで共通の問題が発生していないか、といった傾向を把握できる。このようなデータに基づいた分析は、IT資産の最適な導入計画や、全社的なIT環境の改善策を立案する上で非常に有効な情報となる。もちろん、実際にトラブルが発生してしまった場合でも、従来から評価の高い強力なリモートアクセス機能を用いて、遠隔から迅速に原因を特定し、問題を解決することができる。このように、TeamViewerのDEXソリューションは、問題の「予防」、データの「可視化と分析」、そして迅速な「問題解決」という三つの要素を組み合わせることで、従業員が常に快適なIT環境で働ける状態を目指している。
この戦略は、システムエンジニアを目指す者にとっても重要な示唆を含んでいる。これからのシステムエンジニアには、単にサーバーを構築したり、システムを開発したりするだけでなく、それを利用するエンドユーザー、つまり従業員の体験価値をいかに高めるかという視点が不可欠になる。ユーザーが直面している問題を深く理解し、データを活用して潜在的なリスクを予測し、プロアクティブに解決策を講じる能力が求められるようになるだろう。TeamViewerの取り組みは、ITの役割が「システムを動かす」ことから、「ビジネスの生産性を高め、働く人を支える」ことへと進化している現代の流れを象徴している。同社はこれまで中小企業を主なターゲットとしてきたが、今後は大企業への展開も強化していく方針であり、日本市場の重要性を強調している。これは、DEXという課題が、企業の規模を問わず、現代のあらゆる組織にとって避けては通れない経営課題となっていることの証左と言える。