アンチパスバック(アンチパスバック)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アンチパスバック(アンチパスバック)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アンチパスバック (アンチパスバック)

英語表記

anti-passback (アンチパスバック)

用語解説

アンチパスバックとは、主に物理的な入退室管理システムにおいて、認証媒体(ICカード、生体認証など)の不正な使い回しや、入室と退室のシーケンスを無視したアクセスを防ぐためのセキュリティ機能である。この機能は、一度認証して入室した認証媒体が、そのエリアから退室するまで再び入室のために使用されることを防ぐ。同様に、一度も入室していない認証媒体が退室のために使用されることも防ぐ。これにより、一つの認証媒体を複数人で貸し借りして不正に入室したり、エリア内に居座り続けながら再入室を試みたりする行為を効果的に防止し、施設のセキュリティレベルを向上させる。システムは、各認証媒体の直前の入退室状態を常に記録し、その状態に基づいて次のアクセス要求を許可または拒否することで、厳密なアクセスの連続性を保証する。

アンチパスバック機能は、特定のセキュリティゾーンや施設へのアクセス管理において極めて重要な役割を果たす。その主な目的は、認証媒体の悪用を防ぎ、セキュリティゾーン内の人数管理を適切に行うことにある。例えば、一人の正規のユーザーが認証媒体を使って入室した後、それを他の人に渡してその人が入室したり、あるいは退室せずに再び入室しようとしたりする行為は、セキュリティ上の大きな脅威となる。アンチパスバックは、このような状況をシステム的に排除する。

この機能の基本的な動作原理は、各認証媒体が現在どの状態にあるかをシステムが記憶している点にある。具体的には、「入室済み」の状態か「退室済み」の状態かを記録する。ある認証媒体で入室ゲートを通過した場合、その媒体の状態は「入室済み」に更新される。この「入室済み」の状態で再び入室ゲートを通過しようとすると、システムはそれを拒否する。逆に、その媒体で退室ゲートを通過すれば状態は「退室済み」に戻り、次の入室が可能になる。退室に関しても同様で、「退室済み」の状態の媒体で退室ゲートを通過しようとすると、システムはそれを拒否する。この一連のプロセスにより、認証媒体の入室と退室が必ず一対一で対応するよう強制される。

アンチパスバックには、その厳格さや適用範囲に応じていくつかの種類がある。

まず、ハードアンチパスバック(厳格アンチパスバック)は、最も厳しい形態である。これは、アンチパスバックのルールに違反するアクセス要求を完全に拒否し、アクセスを一切許可しない。高セキュリティが要求されるエリアや、機密性の高い情報を取り扱う施設などで採用されることが多い。例えば、工場内の特定ラインや研究所のクリーンルームなどだ。しかし、この方式は厳格である反面、認証媒体の紛失、システムエラー、あるいは緊急避難などによって正規のユーザーのアンチパスバック状態が不正になった場合、そのユーザーが正しく入退室できなくなるという問題も抱えている。

これに対し、ソフトアンチパスバック(緩和アンチパスバック)は、ルール違反が検出された場合でも、アクセスを完全に拒否するのではなく、警告を発したり、ログに記録したりするに留める方式である。アクセス自体は許可される場合もあり、利便性を損なわずに違反行為の証拠を残すことを目的とする。比較的セキュリティレベルが低く、利便性を重視するオフィスビルや一般的な施設などで利用されることがある。しかし、不正行為を完全に防ぐことはできないため、あくまで補助的な監視機能と捉えるべきである。

また、アンチパスバックの適用範囲による分類もある。ローカルアンチパスバックは、単一の入退室ポイントや、隣接する一組の入室ゲートと退室ゲートに適用される。例えば、ある特定の部屋の入り口と出口がそれぞれリーダーを備え、その部屋への入退室のみを管理する場合などだ。これに対し、グローバルアンチパスバックは、複数のゲートやエリア、あるいは異なる建物にまたがってアンチパスバックルールを適用する。例えば、建物のメインエントランスから入室した後、別のフロアの特定エリアを通過し、さらに別の出口から退室するまでの一連の動きを管理する場合などだ。大規模な施設やキャンパス、複数の拠点を持つ企業などで、より広範囲にわたるセキュリティ管理を実現するために利用される。

アンチパスバック機能を運用する上で考慮すべき課題も存在する。最も一般的なのは、正規のユーザーが何らかの理由でアンチパスバックルールに違反した状態になってしまうことである。例えば、カードを紛失したり、緊急時に認証せずに非常口から退室したりした場合、システム上の状態と実際の状態が不一致になる。このような状況では、そのユーザーは以降、正規の手段でアクセスできなくなるため、管理者はその認証媒体のアンチパスバック状態をリセットする機能が必要となる。リセットは通常、管理者権限を持つ者が手動で行うか、一定時間経過後に自動的にリセットされるタイマー機能を設定することで対応する。ただし、リセット機能の悪用を防ぐための厳重な管理も同時に求められる。また、アンチパスバックはセキュリティを強化する反面、利便性を低下させる側面も持つため、システム設計時には施設の利用形態やセキュリティ要件に応じて、適切なアンチパスバックの種類と運用ルールを選択することが重要となる。

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