ゾーン (ゾーン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ゾーン (ゾーン) の読み方

日本語表記

ゾーン (ゾーン)

英語表記

zone (ゾーン)

ゾーン (ゾーン) の意味や用語解説

IT分野における「ゾーン」とは、特定の目的のために論理的または物理的に区切られた範囲や領域を指す総称である。この用語は非常に多義的であり、使用される文脈、例えばクラウドコンピューティング、ネットワークセキュリティ、DNS(Domain Name System)、ストレージなどによって具体的な意味が異なる。共通しているのは、何かを管理、分離、保護するための境界線を定義するという概念である。システムエンジニアは、設計や構築、運用の各場面で、どの分野の「ゾーン」について話しているのかを正確に理解する必要がある。各分野での「ゾーン」は、システムの可用性、セキュリティ、管理性を向上させるための基本的な構成要素として機能する。 詳細を説明する。まず、クラウドコンピューティングの文脈で頻繁に用いられるのが「アベイラビリティゾーン(Availability Zone, AZ)」である。これは、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azure、Google Cloudなどのクラウドプロバイダーが提供する、データセンター内の物理的に独立した区画を指す。一つのアベイラビリティゾーンは、独立した電源、冷却装置、ネットワーク設備を備えており、あるゾーンで障害が発生しても他のゾーンに影響が及ばないように設計されている。通常、一つの地理的な地域(リージョン)は、複数のアベイラビリティゾーンで構成される。システムを複数のアベイラビリティゾーンにまたがって冗長構成で構築することにより、単一障害点(Single Point of Failure)を排除し、高い可用性と耐障害性を実現できる。例えば、WebサーバーをゾーンAとゾーンBの両方に配置しておけば、ゾーンAで停電などの大規模障害が発生しても、ゾーンBのサーバーが処理を引き継ぎ、サービスを継続させることが可能となる。 次に、ネットワークセキュリティにおける「ゾーン」は、ファイアウォールなどのセキュリティ機器で定義される、信頼レベルが同じネットワークセグメントの集合を指す。代表的なものとして、インターネットに接続された「外部ゾーン(Untrusted Zone)」、社内LANなどの信頼できるネットワークである「内部ゾーン(Trusted Zone)」、そして外部と内部の中間に位置し、Webサーバーなどの公開サーバーを設置する「DMZ(DeMilitarized Zone、非武装地帯)」がある。ファイアウォールは、これらのゾーン間の通信を監視し、あらかじめ設定されたセキュリティポリシーに基づいて通信を許可または拒否する。例えば、「外部ゾーンから内部ゾーンへの通信は原則としてすべて拒否するが、特定のポートを通る通信のみ許可する」といったルールを設定することで、外部からの不正なアクセスを防ぎ、内部ネットワークの安全性を確保する。このようにゾーンを分けることで、ネットワーク全体のセキュリティポリシーをシンプルかつ効果的に管理できる。 また、DNSにおける「ゾーン」は、特定のドメイン名を管理する範囲を意味する。DNSは、インターネット上のドメイン名とIPアドレスを対応付けるシステムであり、その管理情報は「ゾーンファイル」と呼ばれるファイルに記述される。例えば、「example.com」というドメインを管理している場合、そのドメインとサブドメインの情報を含む範囲が「example.comゾーン」となる。このゾーンの情報は、権威DNSサーバーによって保持され、外部からの問い合わせに応答する。さらに、ドメインの管理を委任することも可能である。例えば、「sub.example.com」というサブドメインの管理を別のDNSサーバーに任せる場合、「sub.example.com」は親の「example.com」ゾーンから分離され、独立した新しいゾーンとして扱われる。これにより、大規模な組織でもドメイン管理を部署ごとや拠点ごとに分散させることが可能になる。 最後に、ストレージの分野、特にSAN(Storage Area Network)においても「ゾーン」という概念が用いられる。これは「ゾーニング」と呼ばれ、SANを構成するFibre Channelスイッチ上で設定される。ゾーニングは、SANに接続された多数のサーバーとストレージ装置の中から、特定のサーバーがアクセスできるストレージ装置を論理的にグループ化し、制限する機能である。これにより、関係のないサーバーが他のサーバーのデータ領域にアクセスすることを防ぎ、セキュリティを確保するとともに、意図しないデータ破壊やパフォーマンスへの影響を防止する。例えば、サーバーAはストレージXにのみ、サーバーBはストレージYにのみアクセスできるように設定することができる。アクセス制御を細かく行うことで、安全で安定したストレージ環境を構築するために不可欠な技術である。 これらの例からわかるように、「ゾーン」は、ITインフラの様々な階層で、境界を定義し、その内部を一つの単位として扱うための基本的な概念である。それぞれの文脈における「ゾーン」の役割と特性を正しく理解することは、堅牢で安全なシステムを設計・運用する上で極めて重要となる。

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