機密保持契約 (キムインホジケイヤク) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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機密保持契約 (キムインホジケイヤク) の読み方

日本語表記

機密保持契約 (キムイホジケイヤク)

英語表記

Confidentiality Agreement (コンフィデンシャリティ・アグリーメント)

機密保持契約 (キムインホジケイヤク) の意味や用語解説

機密保持契約とは、取引や業務提携などを行う際に、一方が他方に開示する営業秘密や個人情報などの機密情報を、目的外に利用したり第三者に漏洩したりしないことを約束する法的な契約である。英語の「Non-Disclosure Agreement」の頭文字をとって「NDA」とも呼ばれる。特にシステム開発の現場において、この契約はプロジェクトの土台となる極めて重要な役割を担う。システム開発を発注する顧客は、自社の業務プロセス、経営戦略、顧客データといった外部に漏れると深刻な損害に繋がりかねない情報を、開発を担当するIT企業に開示する必要がある。開発側はこれらの情報がなければ、顧客のニーズに合ったシステムを構築することができない。機密保持契約は、このような状況下で、情報を受け取る側であるIT企業に厳格な守秘義務を課すことで、情報を提供する側である顧客が安心して情報を提供できるようにするためのものである。この契約があることで、両社間の信頼関係が構築され、プロジェクトを円滑に推進することが可能となる。 機密保持契約の対象となる「機密情報」の範囲は、契約書の中で具体的に定義される。一般的には、書面や電子媒体で開示される際に「機密」や「Confidential」といった表示がされている情報、または口頭で開示された後に一定期間内に書面で機密情報である旨が特定された情報などが該当する。システム開発プロジェクトにおける機密情報には、システムの要件定義書、設計書、ソースコード、データベースのスキーマ情報、テストに用いる実データ、さらには顧客固有の業務ノウハウや未公開の事業計画など、有形無形を問わず多岐にわたる情報が含まれる。ただし、契約締結時点ですでに公知となっている情報や、正当な権限を持つ第三者から守秘義務を負うことなく入手した情報などは、通常、機密情報の範囲から除外される。 この契約を締結すると、情報を受領した側にはいくつかの具体的な義務が発生する。第一に、開示された機密情報を、契約で定められた特定の目的、例えば「特定システムの開発プロジェクトの遂行」以外に使用してはならないという「目的外使用の禁止」義務がある。顧客Aのプロジェクトで得た技術情報を、無断で顧客Bのプロジェクトに流用するような行為は固く禁じられる。第二に、開示者の事前の書面による承諾なしに、機密情報を第三者に開示してはならない「第三者への開示禁止」義務がある。これには、業務を再委託するパートナー企業や、自社の関連会社なども含まれる場合があり、開示が必要な際には慎重な手続きが求められる。第三に、機密情報が漏洩、紛失、盗難などに遭わないよう、善良な管理者として注意を払って情報を管理する「善管注意義務」がある。具体的には、情報へのアクセス制限、パスワードによる保護、施錠管理といった物理的・技術的な安全管理措置を講じることが求められる。最後に、プロジェクトの終了や契約解除時には、開示された機密情報及びその複製物を、開示者の指示に従って速やかに返還または破棄する「返還・破棄義務」を負う。 機密保持義務が有効である期間は、契約書で定められる。多くの場合、契約が終了した後も一定期間、守秘義務が継続する旨の「存続条項」が設けられる。これは、プロジェクト終了後も情報の価値が存続するためであり、一般的には契約終了後3年から5年程度とされるが、技術情報など特に重要な情報については、より長期間に設定されることもある。万が一、契約に違反して機密情報を漏洩させてしまった場合、その影響は甚大である。情報開示者は、契約違反者に対して情報の使用差し止めを請求したり、漏洩によって被った損害の賠償を請求したりすることができる。これは企業としての責任だけでなく、漏洩に関与した従業員個人の責任問題に発展する可能性もある。法的な責任に加え、企業の社会的信用の失墜という計り知れないダメージを受けることになる。 システムエンジニアを目指す者にとって、機密保持契約は単なる形式的な書類ではなく、日々の業務における行動規範そのものであると理解する必要がある。顧客のオフィスで作業する際には、会話の内容やPCの画面が関係者以外に見聞きされないよう配慮する。機密情報を含むPCやUSBメモリを社外に持ち出す際は、会社の規定を厳格に遵守する。そして、友人との会話やSNSへの投稿などで、担当しているプロジェクトの内容や顧客名をうかがわせるような発言は決して行わない。これらの行動は、機密保持契約という法的な約束を、現場のエンジニア一人ひとりが誠実に履行している証となる。高い倫理観とセキュリティ意識を持つことが、信頼されるシステムエンジニアになるための第一歩である。

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