間接アドレス指定 (カンセツアドレスしてい) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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間接アドレス指定 (カンセツアドレスしてい) の読み方

日本語表記

間接アドレス指定 (カンセツアドレスしてい)

英語表記

indirect addressing (インダイレクト アドレス)

間接アドレス指定 (カンセツアドレスしてい) の意味や用語解説

間接アドレス指定は、コンピュータのメモリ上のデータにアクセスする際の方法の一つである。データそのものが格納されているメモリの位置を直接指定するのではなく、データが格納されている場所のアドレス(番地)を別のメモリ位置に格納し、そのアドレスを参照することで目的のデータにアクセスする方式を指す。これは、コンピュータがデータを探す際に、まず「データのアドレスが書かれている場所」を見つけ、次にその場所に書かれたアドレスに従って目的のデータを見つけ出す、という二段階以上の手順を踏むイメージである。この方式は、プログラムの柔軟性や効率性を高める上で非常に重要な役割を果たす。 コンピュータのCPUがプログラムを実行する際、様々なデータがメモリに格納される。例えば、変数に代入された数値や文字列などである。これらのデータにアクセスするためには、それぞれのデータがメモリ上のどこに格納されているかを知る必要がある。このデータの格納場所をアドレス(番地)と呼ぶ。 直接アドレス指定の場合、プログラムコードは「メモリ番地Xにあるデータを読み込め」という命令をCPUに直接与える。CPUは指定された番地Xにアクセスし、そこに格納されているデータを取得する。これは非常に単純で直接的な方法である。 しかし、間接アドレス指定ではこのプロセスが一段階複雑になる。プログラムコードは「メモリ番地Yにある値を読み込め。その値は、目的のデータが格納されているメモリ番地を指し示している」という命令をCPUに与える。具体的には、CPUはまずメモリ番地Yにアクセスし、そこに格納されている値を取得する。この取得した値は、目的のデータそのものではなく、目的のデータが格納されている別のメモリ番地(例えば番地Z)である。次にCPUは、この取得した番地Zに再度アクセスし、そこに格納されている最終的な目的のデータを取得する。このように、目的のデータに到達するために、一度アドレスを読み出し、そのアドレスを使って再度メモリにアクセスする方式が間接アドレス指定である。 この仕組みは、プログラミングにおける「ポインタ」の概念と密接に関連している。C言語などで使われるポインタ変数は、まさに間接アドレス指定を実現するための手段である。ポインタ変数はデータそのものを格納するのではなく、データが格納されているメモリのアドレスを値として持つ。ポインタ変数を通じてデータにアクセスする操作は、内部的に間接アドレス指定が用いられている。例えば、ポインタ変数`p`にアドレス`0x1000`が格納されており、そのアドレス`0x1000`のメモリ位置にさらに別のアドレス`0x2000`が格納されている場合、`*p`のような操作では`0x1000`を読み出し、さらにその値`0x2000`をアドレスとして利用して、最終的にメモリ番地`0x2000`に格納されているデータにアクセスすることになる。 間接アドレス指定には多くの利点がある。第一に、プログラムの**柔軟性**を高めることができる。例えば、配列の要素にアクセスする場合を考える。配列の各要素は連続したメモリ領域に格納されているが、間接アドレス指定を用いることで、配列の先頭アドレスを基準にオフセット(ずれ)を計算し、目的の要素のアドレスを動的に算出できる。これにより、同じ処理コードを使いながら、異なる配列の要素や、配列内の異なる位置の要素にアクセスすることが可能となる。関数に配列を渡す際も、配列全体をコピーするのではなく、先頭アドレスだけを渡すことで、関数内部で間接アドレス指定を利用して配列の要素にアクセスできる。 第二に、**効率的なデータ処理**を可能にする。大きなデータ構造(例えば、画像データやデータベースのレコード)を関数に渡す際、データそのものをすべてコピーして渡すのではなく、データの先頭アドレスだけを渡すことで、メモリのコピーにかかる時間とリソースを大幅に節約できる。関数内部では、渡されたアドレス(ポインタ)を使って間接的に元のデータにアクセスする。これにより、複数の箇所から同じデータを共有し、更新することも容易になる。 第三に、**動的なメモリ割り当て**に不可欠である。プログラムの実行中に必要に応じてメモリを確保する場合、その確保されたメモリ領域のアドレスは実行時までわからない。間接アドレス指定を用いることで、確保されたメモリ領域の先頭アドレスをポインタ変数に格納し、そのポインタを通じてデータにアクセスできるようになる。これにより、実行時の状況に応じて柔軟にメモリを使用し、複雑なデータ構造(連結リスト、木構造など)を構築することが可能となる。これらのデータ構造では、次のデータ要素がどこにあるかを示すアドレスを各要素が保持しており、これも間接アドレス指定の典型的な応用例である。 また、**サブルーチン(関数)の呼び出し**においても間接アドレス指定は利用されることがある。特に、呼び出し元に戻るべきアドレス(リターンアドレス)をスタックメモリに格納し、サブルーチン終了時にそのアドレスを間接的に参照して元のプログラムフローに戻る、といった仕組みで使われる。関数ポインタも、実行時に呼び出す関数を変更できるという点で間接アドレス指定の応用と言える。 しかし、間接アドレス指定にはいくつかの注意点も存在する。メモリへのアクセス回数が直接アドレス指定よりも一度増えるため、わずかながら**処理のオーバーヘッド**が生じる可能性がある。特に、多段階の間接参照を繰り返す場合は、そのオーバーヘッドが無視できないレベルになることもある。現代の高性能なCPUでは、キャッシュメモリの利用によりこの影響は軽減されることが多いが、基本的な原理としてはアクセス回数は増える。 また、プログラミングにおいては、ポインタの誤った操作が**セキュリティ上の脆弱性**や**プログラムのクラッシュ**(例えば、ヌルポインタ参照や存在しないメモリ領域へのアクセス)を引き起こす原因となることがある。ポインタが指し示すアドレスが不正な場合、プログラムが意図しないメモリ領域にアクセスしたり、データを破壊したりする可能性がある。間接アドレス指定は強力な機能である反面、その取り扱いには細心の注意と正確な理解が求められる。 これらの点を踏まえ、間接アドレス指定は現代のコンピュータシステムおよびプログラミングにおいて、メモリを効率的かつ柔軟に利用するための基本的な概念であり、システムエンジニアを目指す上でその仕組みと応用を深く理解しておくことは不可欠である。

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