JANコード(ヤンコード)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

JANコード(ヤンコード)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

JANコード (ジェイエイエヌコード)

英語表記

JAN code (ヤンコード)

用語解説

JANコードは、私たちが日常的にスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで目にする商品のパッケージに印刷されているバーコードであり、その実体は商品を世界的に一意に識別するための数字のコード体系である。正式名称は「Japanese Article Number」だが、現在では国際的な名称である「EAN(European Article Number)」コードの一部として扱われ、世界共通の商品識別コード「GTIN(Global Trade Item Number)」の構成要素となっている。このコードにより、どの事業者のどの商品であるかを特定できるため、小売店のPOSシステムや在庫管理、物流システムなど、商品の流通に関わる様々なITシステムで中心的な役割を担っている。システムエンジニアにとって、このコードの仕組みを理解することは、流通関連のシステムを開発する上で不可欠な知識となる。

JANコードには、標準タイプと短縮タイプの2種類が存在する。標準タイプは13桁の数字で構成され、最も一般的に利用されている。短縮タイプは8桁で構成され、主に印刷スペースが限られる小さな商品に使用される。標準タイプの13桁は、大きく分けて4つの部分から成り立っている。最初の2桁または3桁は「GS1国コード(プリフィックス)」と呼ばれ、どの国の事業者を表すかを示している。日本の場合は「45」または「49」から始まる。次に続くのが「GS1事業者コード」で、商品を製造または販売する事業者を一意に識別するためのコードである。このコードは、国際的な流通標準化機関であるGS1の日本支部、一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)から各事業者に貸与される。GS1事業者コードの桁数は事業者の規模などに応じて異なり、7桁、9桁、10桁のいずれかとなる。その次が「商品アイテムコード」で、これはGS1事業者コードを取得した事業者が、自社の製品ひとつひとつに割り当てる番号である。GS1事業者コードの桁数によって、商品アイテムコードに割り当てられる桁数が決まる仕組みになっている。例えば、GS1事業者コードが7桁の場合、商品アイテムコードは3桁となり、000から999までの1000アイテムを登録できる。最後の1桁は「チェックデジット」と呼ばれる。これは、バーコードリーダーによる読み取り誤りを検出するために、前の12桁の数字から特定の計算式(モジュラス10ウェイト3・1)によって算出される検査用の数字である。もし読み取ったコードのチェックデジットが計算結果と一致しない場合、そのデータは不正なものとして扱われる。この仕組みにより、データの入力精度と信頼性が格段に向上している。

JANコードそのものは数字の列であり、これを機械が光学的に読み取れるように図形化したものが一般に「バーコード」と呼ばれるシンボルである。JANコードで利用されるバーコードシンボルは「EANシンボル」という規格で定められている。つまり、JANコードは「情報体系(どの数字が何を意味するか)」であり、バーコードはそれを表現するための「シンボル体系(情報の視覚的表現)」であると区別して理解することが重要である。システムエンジニアは、スキャナから入力されたバーコードの情報をデコードし、JANコードという数値データとしてシステム内で処理することになる。

システムエンジニアがJANコードを扱う場面は非常に多い。代表的なのが小売業で使われるPOS(Point of Sale)システムである。顧客がレジに持ってきた商品のバーコードをスキャナで読み取ると、JANコードがPOS端末に送られる。端末は、そのJANコードをキーとして店内のサーバーや本部のデータベースに接続された商品マスタを検索する。商品マスタには、JANコードに対応する商品名、価格、税率などの情報が格納されており、システムはこれらの情報を取得してレシートに印字したり、売上データとして記録したりする。この一連の処理が瞬時に行われることで、迅速かつ正確な会計が実現されている。また、在庫管理システムにおいてもJANコードは不可欠である。商品の入荷時に検品担当者がJANコードをスキャンして入荷数を記録し、出荷時や販売時にも同様にスキャンすることで、リアルタイムに在庫数を更新する。これにより、欠品や過剰在庫を防ぎ、発注業務を自動化することも可能になる。データベース設計の観点からは、商品マスタテーブルにおいてJANコードを格納するカラムのデータ型選定が重要となる。JANコードは数字の羅列だが、四則演算などの計算対象となる数値ではないこと、また先頭が「0」で始まる可能性があることから、一般的には数値型(INTEGERなど)ではなく、固定長の文字列型(CHAR(13)など)として定義される。これにより、先頭のゼロが欠落する問題を回避し、データの完全性を保つことができる。

JANコードは国際標準のGTIN-13(13桁)またはGTIN-8(8桁)として世界中で通用するため、輸入品や輸出品の管理もスムーズに行える。このグローバルな互換性が、今日の国際的なサプライチェーンを支える基盤となっている。このように、JANコードは単に商品を識別する番号というだけでなく、小売、物流、製造といった幅広い業界の業務プロセスを効率化し、そのデータを処理するITシステムの根幹をなす重要な情報基盤である。システムエンジニアを目指す者は、このコードの構造と役割を正確に理解しておくことが求められる。