キー (キー) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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キー (キー) の読み方

日本語表記

キー (キー)

英語表記

key (キー)

キー (キー) の意味や用語解説

「キー」は、IT分野において非常に多義的な言葉である。システムエンジニアを目指す上で、この言葉が指す具体的な意味や役割を文脈に応じて正確に理解することは、システム設計、開発、運用において不可欠となる。一般的に「鍵」と訳されることが多いが、単に錠を開ける道具としての意味合いを超え、情報を識別し、関連付け、保護し、操作するための中心的な要素として機能する。 この用語は、主にデータ管理におけるデータの識別子、情報セキュリティにおける暗号化の鍵、入力装置のボタン、ソフトウェアの認証情報など、多様な分野で用いられる。それぞれの文脈で「キー」が果たす役割は異なり、その理解が専門知識の深化に直結する。 **データベースにおけるキー** リレーショナルデータベース(RDB)において「キー」は最も重要な概念の一つである。RDBはデータをテーブル形式で管理し、複数のテーブルを関連付けて情報の集合体を構築する。このテーブル内の特定のデータ(行またはレコード)を一意に識別したり、異なるテーブル間の関連性を定義したりするためにキーが用いられる。キーの適切な設計は、データベースの整合性、検索効率、保守性を大きく左右する。 * **主キー(Primary Key)** 主キーは、テーブル内の各行を一意に識別するために指定される一つ以上の列(属性)の集合である。主キーは「一意性」を持ち、その値はテーブル内で重複しない。また「非NULL性」も持ち、主キーのすべての列はNULL(値がない状態)であってはならない。これにより、特定の主キー値を指定すれば必ず一つの行を特定でき、データの整合性を保証する上で極めて重要な役割を果たす。例えば、顧客情報テーブルの「顧客ID」などが主キーとして適切である。 * **外部キー(Foreign Key)** 外部キーは、あるテーブルの列、または列の集合であり、それが別のテーブルの主キーを参照することで、テーブル間の関連付けを定義する。参照される側のテーブルを親テーブル、参照する側のテーブルを子テーブルと呼ぶ。外部キーの主な目的は「参照整合性」を維持することにある。これは、子テーブルの外部キーの値が、親テーブルの主キー値として必ず存在することを保証する仕組みである。これにより、関連するデータが存在しない不整合な状態を防ぐことができる。例えば、注文テーブルの「顧客ID」が顧客テーブルの「顧客ID」を参照するケースなどが該当する。 * **候補キー(Candidate Key)** 候補キーは、テーブル内の各行を一意に識別できる列の集合のうち、最小限の列で構成されるものである。一意性を持ち、かつその列からどの列を一つでも取り除くと一意性が失われる「最小性」の特性を持つ。一つのテーブルには複数の候補キーが存在しうる。これらの候補キーの中から、テーブルの設計者が一つを選んで主キーとする。 * **代替キー(Alternate Key)** 代替キーは、候補キーのうち、主キーとして選択されなかった残りの候補キーを指す。これらも一意にレコードを識別する能力を持つが、主キーではない。 * **スーパーキー(Super Key)** スーパーキーは、テーブル内の各行を一意に識別できる列の集合全般を指す。一意性を持つが、最小性は持たなくてもよい。候補キーや主キーもスーパーキーの一種である。 * **インデックスとしてのキー** データベースにおいてキーは、データを高速に検索するための「インデックス(索引)」の作成にも利用される。テーブルの特定の列にインデックスを作成すると、その列の値で検索やソートを行う際に、データベースシステムが効率的に目的のデータを見つけ出すことができる。インデックスは、データへの高速アクセスを可能にし、データベースの性能向上に貢献する。 **セキュリティにおけるキー** 情報セキュリティの分野では、「キー」は「鍵」と訳され、データの暗号化や復号、デジタル署名の生成や検証、ユーザー認証などに用いられる。 * **暗号化キー** データを秘匿するために、平文(元のデータ)を暗号文(読めないデータ)に変換する際に使用される情報が暗号化キーである。また、暗号文を平文に戻す(復号する)際にも復号キーが使用される。 大きく分けて、暗号化と復号に同じキーを用いる「共通鍵暗号方式」と、異なるキーを用いる「公開鍵暗号方式」がある。共通鍵暗号方式では単一の共通鍵(秘密鍵)を、公開鍵暗号方式では対になる公開鍵と秘密鍵を用いる。これらのキーは、データの機密性や完全性を保護するための根幹となる要素である。 **その他のIT分野におけるキー** 「キー」という言葉は、上記以外にも多様な文脈で利用される。 * **キーボードのキー** コンピュータの入力装置であるキーボードに配置されている、文字、数字、記号、ファンクション、修飾などの機能を持つ物理的なボタンを指す。これらを押すことで、コンピュータに命令を与えたり文字を入力したりする。 * **ライセンスキー(プロダクトキー)** ソフトウェア製品の正規利用を認証するために提供される、英数字の羅列で構成される「鍵」である。ソフトウェアのインストール時や初回起動時に入力することで、不正コピーを防ぎ、正当な利用権を証明する役割を果たす。 * **APIキー** Webサービスやアプリケーションが提供するAPI(Application Programming Interface)を利用する際に、その利用者を認証し、アクセスを制御するために発行される識別子である。不正なアクセスや過剰な利用を防ぐ目的で用いられる。 * **レジストリキー** Windowsオペレーティングシステムにおいて、システム設定やアプリケーション設定が階層構造で格納されている「レジストリ」の中で、それぞれの設定項目を識別するパスのような役割を持つ要素を指す。 * **ハッシュキー** データをハッシュ関数に通して得られる固定長の短いデータ(ハッシュ値)を指す場合がある。ハッシュキーは、データの検索効率を向上させるハッシュテーブルなどで利用されるほか、データが改ざんされていないかを確認するデータの整合性チェックにも使われる。 このように、「キー」という言葉はITの様々な分野で用いられ、それぞれ異なる具体的な意味と役割を持っている。システムエンジニアとして、どの文脈で「キー」が使われているのかを正確に把握し、それぞれの機能と重要性を理解することは、堅牢で効率的なシステムを構築する上で不可欠な知識である。

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