インベントリ(インベントリ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

インベントリとは、ITシステムを構成するハードウェアやソフトウェアなどのIT資産に関する情報を収集、整理し、一覧化した目録、またはその情報を管理する活動全般を指す言葉である。元々は英語の「inventory」が意味する在庫や棚卸し、資産目録といった概念に由来しており、ITの文脈においても、組織が保有するIT資産の全体像を正確に把握するという目的は共通している。システムを安定的かつ安全に運用管理するためには、どのような資産がどこにあり、どのような状態にあるのかを常に把握しておく必要があり、インベントリはそのための基礎となる重要な情報基盤となる。

インベントリ情報には、大きく分けてハードウェアに関する情報とソフトウェアに関する情報がある。ハードウェアインベントリには、サーバー、PC、ネットワーク機器などの物理的な資産に関する詳細な情報が含まれる。具体的には、機器のメーカー名やモデル名、CPUの種類と性能、メモリの搭載容量、ストレージの種類と容量、ネットワークインターフェースのMACアドレス、そして資産管理番号やシリアル番号といった個体を識別するための情報が記録される。これらの情報を管理することで、機器の物理的な所在やスペックを把握し、老朽化した機器の更新計画や、増設、廃棄といったライフサイクル管理を適切に行うことが可能になる。

一方、ソフトウェアインベントリは、各ハードウェア上で稼働しているオペレーティングシステム（OS）やアプリケーションに関する情報を対象とする。OSの種類、バージョン、エディション、適用されているサービスパックやパッチの情報、インストールされているアプリケーションソフトウェアの一覧とそれぞれのバージョン、ライセンス情報などがこれにあたる。ソフトウェアインベントリは、特にライセンス管理とセキュリティ対策の観点から極めて重要である。組織が保有するライセンス数と実際に使用しているソフトウェアの数を照合し、ライセンス違反がないかを確認したり、逆に余剰ライセンスを把握してコストを最適化したりする上で不可欠な情報となる。また、ソフトウェアのバージョンやパッチの適用状況を把握することで、脆弱性が存在するシステムを迅速に特定し、セキュリティインシデントを未然に防ぐための対策を講じることができる。

インベントリ情報の収集方法には、手動によるものとツールを用いた自動収集がある。小規模な環境であれば、担当者が各機器の情報を直接確認し、スプレッドシートなどの台帳に手作業で記録することも可能である。しかし、この方法は多大な工数がかかる上に、ヒューマンエラーが発生しやすく、情報の鮮度を保つことも難しい。そのため、多くの企業や組織では、専用のIT資産管理ツールや構成管理ツールを導入し、定期的にインベントリ情報を自動収集するアプローチが採用される。これらのツールは、管理対象の機器に常駐するエージェントソフトウェアを通じて情報を収集する方式や、ネットワーク経由で外部から情報を取得する方式を用いて、効率的かつ正確に最新のインベントリ情報を維持する。

収集されたインベントリ情報は、多様なIT管理業務に活用される。前述のIT資産管理やセキュリティ対策に加え、システムの構成管理においても中核的な役割を担う。システムの構成要素とその関連性を正確に記録した構成管理データベース（CMDB）を構築する際の基礎データとなる。障害が発生した際には、正常時のインベントリ情報と比較することで、変更点を特定し、原因究明を迅速化することができる。さらに、近年注目されているサーバー構成の自動化においてもインベントリは重要な概念である。Ansibleなどの構成管理ツールでは、設定変更やアプリケーションのデプロイといった操作を適用する対象となるサーバー群のリストや接続情報を記述したファイルを「インベントリファイル」と呼ぶ。このインベントリファイルに基づいて、多数のサーバーに対して一括で、かつ冪等性を持って処理を実行することが可能になる。

このように、インベントリは単に資産のリストを作成する作業ではなく、ITガバナンス、セキュリティ、コスト管理、運用効率化など、ITシステム管理のあらゆる側面に影響を及ぼす根幹的な活動である。システムエンジニアは、インベントリの重要性を理解し、その情報をいかに正確に収集・維持し、日々の業務に活用していくかを常に意識する必要がある。システムの現状を正確に可視化するインベントリは、信頼性の高いシステムを構築・運用していく上で不可欠な羅針盤と言えるだろう。