Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

SECIモデル(セキモデル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

SECIモデル(セキモデル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

セキモデル (セキモデル)

英語表記

SECI Model (セキモデル)

用語解説

SECIモデル(セキモデル)とは、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏と竹内弘高氏によって提唱された、組織における知識創造のプロセスを説明するフレームワークである。SECIは、Socialization(共同化)、Externalization(表出化)、Combination(連結化)、Internalization(内面化)の頭文字から取られている。このモデルは、個人が持つ暗黙的な知識(言葉や文字では表現しにくい、経験に基づく勘やノウハウ)と、組織で共有・体系化された形式的な知識(マニュアルや設計書、データなど)の間で、どのように知識が変換・循環し、新たな知識が創造されていくかを明らかにする。システム開発の現場では、個々のエンジニアが持つ技術的な知見や経験を組織全体で共有し、プロジェクトとして新しい価値を生み出す上で非常に重要な考え方となる。単に情報を蓄積するだけでなく、知識を「生きたもの」として発展させていくための実践的なモデルである。

SECIモデルは、暗黙知と形式知という二種類の知識が、以下の四つの変換モードを通じて相互に作用し、知識が螺旋状に深化・拡大していく過程を示す。

一つ目のモードは共同化 (Socialization) である。これは、暗黙知から暗黙知への変換を指す。個人が経験を通じて培った、言葉では伝えにくい「勘」や「コツ」、「身体で覚えたスキル」といった暗黙知を、他者と直接的な経験を共有することで伝達するプロセスである。例えば、新入社員が熟練エンジニアの横で作業を見学し、共に手を動かすことで、非言語的な雰囲気や身体的な動きを通じて技術やノウハウを学ぶケースがこれにあたる。ミーティングでの意見交換やブレインストーミングも、互いの思考を刺激し、新たな暗黙知を生み出す共同化の場となり得る。この段階では、明確な言葉や資料が存在しないため、実践的な体験が重要となる。

二つ目のモードは表出化 (Externalization) である。これは、暗黙知から形式知への変換を指す。個人が持つ漠然とした暗黙知を、言語、図、記号、モデルなどを用いて客観的に表現し、誰もが理解できる形式知として明確にするプロセスである。システム開発においては、アイデアや構想といった頭の中のイメージを、要件定義書、設計書、UML図、プロトタイプといった具体的なドキュメントや成果物として言語化・視覚化する作業が該当する。この段階で、個人の頭の中にあった漠然とした知見が、他者と共有し議論できる形に変換され、知識創造の次のステップへと進むための基盤が築かれる。

三つ目のモードは連結化 (Combination) である。これは、形式知から形式知への変換を指す。既に存在している複数の形式知を組み合わせて、新たな形式知を創造するプロセスである。例えば、複数の設計書や仕様書、既存のシステム情報、過去の障害事例レポートといった形式知を集め、それらを統合・再構成することで、より包括的なシステムアーキテクチャや新しい業務プロセス、あるいは新たなマニュアルやデータベースを構築することがこれにあたる。異なる部署から集められたデータを分析し、新しいビジネスレポートを作成する作業も連結化の一例である。この段階では、既存の知識を体系的に整理し、論理的な繋がりを見出すことで、より高度で複雑な知識へと発展させる。

四つ目のモードは内面化 (Internalization) である。これは、形式知から暗黙知への変換を指す。連結化によって生み出された形式知を個人が学習し、実践を通じて自身の暗黙知として習得するプロセスである。新しいマニュアルや手順書、フレームワークなどを読み込み、それを実際に業務で適用し、試行錯誤を繰り返すことで、その内容が個人の経験やスキルとして定着する。例えば、新しいプログラミング言語の仕様書を読み込み、実際にコードを書いてバグを修正する中で、その言語特有の書き方や効率的なコーディングパターンを習得し、無意識のうちに使いこなせるようになる状態がこれにあたる。内面化された知識は、新たな共同化の出発点となり、知識創造のサイクルを次のレベルへと押し上げる。

これら四つのモードは独立して存在するのではなく、共同化から始まり、表出化、連結化、内面化へと順に進み、そして内面化された新たな暗黙知が再び共同化のきっかけとなることで、知識が螺旋を描くように増幅・進化していく。この知識の螺旋(スパイラル)が、組織全体の知識レベルを高め、イノベーションを生み出す原動力となる。システムエンジニアリングの現場では、個々のエンジニアが持つ独自の技術や経験を「共同化」で共有し、それを設計書やドキュメントとして「表出化」させ、さらに既存の技術や知識と「連結化」して新しいシステムやソリューションを構築する。そしてその成果やプロセスをエンジニアが実践を通じて「内面化」することで、個人のスキルが向上し、それがまた新たな知識創造の源泉となる。SECIモデルは、単なる情報の管理に留まらず、組織が継続的に学習し、新しい価値を生み出し続けるための強力な指針を提供するのである。

関連コンテンツ