操作性テスト (ソウサセイテスト) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
操作性テスト (ソウサセイテスト) の読み方
日本語表記
操作性テスト (ソウサセイテスト)
英語表記
Usability testing (ユーザビリティ テスティング)
操作性テスト (ソウサセイテスト) の意味や用語解説
操作性テストとは、システムやソフトウェア、ウェブサイトなどが、利用者にとってどれほど使いやすいかを評価するための検証プロセスである。ユーザビリティテストとも呼ばれ、ユーザーの視点に立って製品の品質を測ることを目的とする。システム開発におけるテストには、機能が仕様通りに正しく動作するかを確認する機能テストなど様々な種類が存在するが、操作性テストは「正しく動くか」ではなく、「人間にとって直感的で、簡単かつ快適に使えるか」という点に焦点を当てる。その目的は、ユーザーがストレスを感じることなく、効率的に目的を達成できるシステムを提供することにある。優れた操作性は、ユーザー満足度の向上に直結し、製品やサービスの継続的な利用を促す。また、業務システムにおいては、従業員の学習コストを削減し、作業効率を高め、入力ミスなどのヒューマンエラーを減少させる効果も期待できる。このテストでは、単に「使いやすい」という曖昧な感覚だけでなく、「有効さ」「効率性」「満足度」といった具体的な指標を用いて、客観的かつ定量的に評価が行われる。対象は多岐にわたり、スマートフォンのアプリケーションから企業の基幹システム、ECサイトまで、ユーザーが直接触れるあらゆるインターフェースが評価の対象となる。 操作性テストにおける評価は、主に国際規格ISO 9241-11で定義されている複数の指標に基づいて行われる。第一に「有効さ」があり、これはユーザーが指定された目標をどれだけ正確に達成できたかを示す指標である。例えば、特定のタスクを10人の被験者が試行し、9人が成功すればタスクの成功率は90%と評価される。第二に「効率性」で、ユーザーが目標を達成するために費やしたリソース、主として時間を測る。タスク完了までの時間、画面遷移の回数、クリック数などが具体的な測定項目となる。これが少なければ少ないほど、効率性が高いと判断される。第三に「満足度」であり、ユーザーがシステムを利用した際に抱いた主観的な感情や感想を評価する。これは、システムユーザビリティスケール(SUS)のような標準化されたアンケートや、テスト後のインタビューを通じて測定される。これらの主要な指標に加えて、初めてのユーザーがどれだけ早く基本的な操作を習得できるかを示す「学習しやすさ」、一度操作を覚えたユーザーが期間を空けて再度利用する際にどれだけスムーズに操作を思い出せるかを示す「記憶しやすさ」、そして操作中にどれくらいの頻度でエラーが発生し、そのエラーから容易に回復できるかを示す「エラー発生率」なども重要な評価観点となる。 操作性テストを実践するための具体的な手法も複数存在する。最も代表的な手法が「思考発話法」である。これは、実際のユーザーまたはそれに近い属性を持つ被験者にシステムを操作してもらいながら、その時に考えていること、感じていること、次に何をしようとしているかを声に出して話してもらう手法である。観察者はその発話内容と行動を記録することで、ユーザーがどこでつまずき、何に戸惑っているのかを直接的に理解することができる。次に「ヒューリスティック評価」がある。これは、ユーザビリティの専門家が、経験則や確立された設計原則(ヒューリスティクス)に基づいてシステムのインターフェースを評価する手法である。ヤコブ・ニールセンが提唱した「ユーザビリティ10原則」などが評価の基準としてよく用いられる。この手法は実際のユーザーを必要としないため、比較的低コストかつ短期間で問題点を洗い出せる利点がある。その他にも、多数のユーザーから定量的な満足度データを収集するための「アンケート調査」、特定の操作感について深く掘り下げて聞き出す「インタビュー」、専用の機材でユーザーの視線の動きを追跡し、画面上のどこに注目しているかを分析する「アイトラッキング」など、目的や状況に応じて様々な手法が使い分けられる。 操作性テストは、一般的に計画、被験者の募集、テスト環境の準備、テストの実施、分析と報告、そして改善という一連のプロセスで進められる。まず計画段階で、テストの目的、対象ユーザー層、評価対象となる具体的なタスク、用いる手法、成功基準となる指標を定義する。次に、定義したユーザー層に合致する被験者を募集し、テストを実施するためのPCや録画・録音機材といった環境を整える。テスト当日は、モデレーターと呼ばれる進行役が被験者に対してテストの趣旨を説明し、タスクを提示して、その様子を観察・記録する。テスト終了後、収集した観察記録、発話内容、アンケート結果などのデータを分析し、操作性に関する問題点を特定する。特定された問題点は、その深刻度や改善の優先順位とともに報告書にまとめられ、開発チームにフィードバックされる。そして、そのフィードバックを基にシステムの設計や実装が修正され、製品の品質が向上していく。このサイクルを開発の早期段階から繰り返し行うことで、開発終盤での大規模な手戻りを防ぎ、よりユーザーにとって価値の高いシステムを構築することが可能となる。操作性テストは、単に欠陥を見つけるだけでなく、ユーザー中心の設計思想を開発プロセスに組み込むための重要な活動なのである。