可変長 (カヘンチョウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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可変長 (カヘンチョウ) の読み方

日本語表記

可変長 (カヘンチョウ)

英語表記

variable-length (バリアブルレングス)

可変長 (カヘンチョウ) の意味や用語解説

可変長とは、データを格納する際に、そのデータの実際の長さに応じて確保する領域の大きさが変わる性質、またはその形式のことである。この概念を理解するためには、対義語である「固定長」と比較するのが有効だ。固定長は、格納するデータの種類ごとに、あらかじめ決められた一定の長さの領域を確保する方式である。例えば、氏名を格納するために「30バイト」と決めた場合、実際の氏名が「10バイト」であっても「30バイト」であっても、常に30バイト分の領域が使用される。氏名が10バイトの場合は、残りの20バイトは空白文字などで埋められ、未使用の領域となる。逆に、30バイトを超える氏名は格納できないか、超えた部分が切り捨てられてしまう。これに対して可変長は、データの内容に合わせて必要な分だけ領域を確保する。氏名が10バイトであれば10バイト分の領域を、30バイトであれば30バイト分の領域を使用するため、固定長のように未使用領域が発生することがなく、記憶媒体を効率的に利用できる。 可変長のデータ形式を実現するためには、コンピュータが各データの「始まり」と「終わり」を正確に認識できる仕組みが必要である。そのための代表的な実装方法が二つ存在する。一つは「区切り文字(デリミタ)」を用いる方式だ。これは、データの終端に特定の記号やコードを付加することで、データの終わりを示す方法である。例えば、カンマ区切りで値を並べるCSVファイルでは、カンマがデータの区切り文字として機能する。また、プログラミング言語Cにおける文字列は、文字列の最後にヌル文字という特殊な文字を置くことで終端を示している。コンピュータはデータを先頭から順に読み進め、この区切り文字が出現した時点で一つのデータの終わりと判断する。もう一つは「長さ情報(プレフィックス)」を用いる方式である。これは、実際のデータの前に、そのデータの長さを示す数値を格納しておく方法だ。データを読み取る側は、まず先頭にある長さ情報を読み込み、その数値分のデータを後続から読み取る。この方式は、ネットワーク通信で送受信されるデータパケットや、多くの現代的なプログラミング言語における文字列型(例えばJavaのString型やPythonのstr型)の内部実装で採用されている。長さ情報が事前にわかるため、区切り文字を探しながら読み進める必要がなく、効率的な処理が可能である。 可変長は、その柔軟性からITシステムの様々な場面で活用されている。最も代表的な例は、データベースにおける文字列型のデータである。ユーザーの氏名、住所、商品の説明文など、その長さが一人ひとり、あるいは一つひとつ異なるデータを格納する場合、VARCHAR型やTEXT型といった可変長のデータ型が用いられる。これにより、ストレージ容量を無駄なく使用できる。ファイルフォーマットにおいても、JSONやXMLのように、構造化されたデータを柔軟に表現するために可変長の考え方が基礎となっている。これらの形式では、各要素や値の長さが異なることを前提として設計されている。また、プログラム内部で扱うデータ構造、例えば動的配列やリストなども可変長の性質を持つ。要素が追加されれば必要なメモリを動的に確保し、削除されれば解放することで、データ量に応じて柔軟にサイズを変化させることができる。 可変長データ形式の最大のメリットは、記憶領域の効率的な利用にある。特に、データの長さが大幅に異なる可能性がある場合や、短いデータが大多数を占める場合には、固定長に比べてストレージやメモリの消費を大幅に削減できる。また、将来的に現在想定しているよりも長いデータが発生する可能性があっても、システムが柔軟に対応できるという利点もある。しかし、可変長にはデメリットも存在する。最も大きな点は、処理性能への影響である。固定長のデータは、全てのデータのサイズが同じであるため、N番目のデータがどこにあるかを「先頭アドレス + (N-1) × データ長」という単純な計算で即座に特定できる。これをランダムアクセスと呼ぶ。一方、可変長の場合は各データの長さが異なるため、N番目のデータにアクセスするには、先頭から順にN-1番目までのデータの長さを読み取り、その終わりを特定していく必要がある。これにより、特定のデータへのアクセス速度は固定長に比べて遅くなる傾向がある。また、データの読み書きごとに追加の処理、つまり区切り文字の探索や長さ情報の解析が必要になるため、CPUへの負荷も高くなる可能性がある。さらに、データの更新によって長さが変わる場合、メモリの再確保やデータの移動が発生し、メモリの断片化(フラグメンテーション)を引き起こす原因となり得る。このように、可変長は柔軟性と効率性に優れる一方で、処理性能の観点では課題も抱えている。そのため、システムを設計する際には、扱うデータの特性や、アクセス頻度、パフォーマンス要件などを総合的に考慮し、固定長と可変長を適切に使い分ける判断が求められる。

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