【ITニュース解説】Anthropic: 従来のソフトウェア開発手法ではAIエージェントの未来が「終わる」。非確定的システムに対応する、協調型開発へのパラダイムシフト
2025年09月12日に「Qiita」が公開したITニュース「Anthropic: 従来のソフトウェア開発手法ではAIエージェントの未来が「終わる」。非確定的システムに対応する、協調型開発へのパラダイムシフト」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Anthropicは、従来の確実な動きを想定した開発手法ではAIエージェントの未来は閉ざされると指摘。AIエージェントは予測不能な動きをするため、確実性が前提の開発では対応できない。AIエージェントとツールが連携する新しい協調型開発への転換が求められている。
ITニュース解説
近年、AIエージェントと呼ばれる、大規模言語モデル(LLM)を核とする人工知能が進化し、自律的に様々なタスクをこなすようになってきた。この新しい技術の登場は、ソフトウェア開発の現場に大きな変革をもたらそうとしている。従来の開発手法では、これから登場するAIエージェントの可能性を最大限に引き出すことが難しく、場合によってはその未来を阻害する可能性さえ指摘されている。
私たちがこれまで開発してきたソフトウェアのほとんどは、「確定的システム」という前提に基づいている。これは、特定の入力に対して常に同じ結果が返ってくるシステムを指す。例えば、計算アプリで「1+1」と入力すれば、いつでも「2」という結果が得られる。もし「3」と表示されたら、それは明らかにバグであり、開発者はその原因を突き止め、コードを修正することで問題を解決できる。従来のソフトウェア開発では、プログラムが設計通りに、予測可能な挙動をすることを保証するために、厳密なロジックを組み、テストを重ねてきた。
しかし、AIエージェントはこれとは全く異なる性質を持つ「非確定的システム」である。同じ入力や質問に対しても、その時の状況、内部の状態、過去の学習データ、あるいは文脈によって、異なる出力や反応を示すことがある。これは、AIが確率的な推論に基づいて動作し、人間の思考のような柔軟性を持つためだ。この非確定的という特性は、AIエージェントの大きな強みであると同時に、従来のソフトウェア開発手法が直面する大きな課題となっている。
非確定的であるAIエージェントの開発には、従来のデバッグやテストの手法が通用しにくい。特定のバグを修正したとしても、その修正が原因で予期せぬ別の場所で問題が発生する「リグレッション」が頻繁に起こりうる。また、AIエージェントの内部動作は複雑で、なぜそのような結果を出力したのか、その思考プロセスがブラックボックス化しやすいため、問題の原因を特定することが極めて困難になる。さらに、全ての可能な挙動パターンを網羅的にテストすることは事実上不可能であり、予測不可能な自律的挙動に対して、開発者が常に全責任を負うのは現実的ではない。システムに予期せぬ挙動があった際に、その都度ルールを追加していくようなアプローチでは、システムは硬直化し、複雑怪奇なものとなってしまい、保守が非常に難しくなる。
このような課題に対し、Anthropic社は「協調型開発」という新しいパラダイム(考え方)へのシフトを提唱している。これは、AIエージェントを単なるツールとしてではなく、人間と協力し合う「チームメンバー」と見なし、共にシステムを開発・改善していくアプローチである。
協調型開発では、いくつかの重要な要素が組み合わされる。一つは「憲法AI(Constitutional AI)」という考え方だ。これは、AIエージェントに倫理的な原則や行動規範をあらかじめ与えることで、自律的な判断の指針とし、望ましくない挙動を抑制する仕組みを指す。人間が直接的に細かい指示を与えるのではなく、AI自身が与えられた原則に従って行動するように導くのである。
次に「監視可能なAI(Monitored AI)」がある。これは、AIエージェントの思考プロセスや判断の根拠を可視化し、人間がその挙動を理解できるようにすることを目指す。AIがなぜ特定の行動をとったのか、どのような意図があったのかを把握できることで、問題発生時の原因究明や、エージェントの挙動を改善するための貴重な情報が得られる。
さらに、人間がAIエージェントの挙動を評価し、そのフィードバックをエージェント自身が学習・反映する「フィードバックループ」も不可欠となる。人間が教師となり、AIエージェントを継続的に訓練・改善していくことで、システムの性能と信頼性を高めていくことができる。
そして、「サンドボックス環境」の活用も重要だ。これは、実際の運用環境とは切り離された安全なテスト環境で、AIエージェントを自由に動作させる場所を指す。この環境でエージェントの多様な挙動を観察し、潜在的な問題点や改善点を見つけ出す。人間の厳密な介入なしに、エージェントが自律的に探索し、学習する場を提供することで、より頑健なシステムへと育て上げることが可能になる。
このような新しい開発パラダイムでは、AIエージェントとツールの関係も変化する。従来の開発では、人間がツールを明確に指示して使わせていたが、これからはAIエージェントが自律的に最適なツールを選択し、組み合わせて使用するようになる。人間はエージェントに利用可能なツールを提供する役割へと変わり、ツール自体も、エージェントが柔軟に活用できるような、モジュール化された形式が求められるようになるだろう。
このように、AIエージェントの非確定的という特性に対応するためには、従来の確定的システムを前提とした開発手法から、人間とAIが協力し、継続的に学習・改善していく「協調型開発」へと、開発の考え方を大きく転換する必要がある。この新しいパラダイムこそが、AIエージェントの持つ無限の可能性を解き放ち、その未来を切り開く鍵となる。