【ITニュース解説】Anthropic、MCPを介してClaudeとアプリ、ツールを連携させる「Integrations」機能をリリース ―Integrationsを使った高度な検索リサーチ機能「Advanced Research」も

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ITニュース概要

Anthropicは、対話型AI「Claude」と様々なアプリやツールを連携させる「Integrations」機能を公開した。これによりClaudeは外部サービスと繋がり、高度な検索リサーチ機能「Advanced Research」のような利用も可能となる。

ITニュース解説

Anthropicがリリースした「Integrations」機能は、同社の対話型生成AIサービスであるClaudeの能力を大きく拡張する画期的な技術だ。システムエンジニアを目指す初心者にとって、これはAIが単なる独立したサービスとしてではなく、多様なシステムと連携し、より広範なタスクを実行する未来を示唆する重要な一歩と言える。 まず、Anthropicとは、最先端の人工知能、特に大規模言語モデルの開発に取り組む企業である。その代表的な成果が「Claude」という対話型生成AIだ。Claudeは人間のような自然な言葉を理解し、質問に答えたり、文章を作成したり、情報を要約したりする能力を持つ。しかし、これまでのClaudeは、主に自身の内部知識や与えられたテキストデータに基づいて動作していたため、リアルタイムの外部情報にアクセスしたり、特定のアプリケーションを操作したりすることは苦手だった。 この課題を解決するのが、今回リリースされた「Integrations」機能である。Integrationsは、Claudeが外部の様々なアプリケーションやツールと連携し、それらを自身の「手足」のように使えるようにする仕組みだ。これにより、Claudeは単に言葉を操るだけでなく、例えばデータベースから最新の情報を検索したり、カレンダーに予定を登録したり、あるいは特定のソフトウェアの機能を呼び出してデータ処理を行ったりといった、より実世界に近い多様なアクションを実行できるようになる。 このIntegrations機能の中核を担うのが「MCP(Model Control Plane)」という技術だ。MCPは、Claudeが外部のツールやサービスとどのように対話すべきかを管理し、調整する役割を果たす。具体的には、Claudeが特定のタスクを実行するためにどのような外部ツールが必要か、そのツールをどのように呼び出すか、そしてツールから返された情報をどのように解釈し、次の行動に繋げるか、といった一連のプロセスを制御する。システムエンジニアの視点で見れば、これはAPI(Application Programming Interface)の連携をよりインテリジェントに、かつ自動的に行うためのフレームワークと捉えることができるだろう。MCPは、Claudeに対して外部ツールの「使い方マニュアル」を提供し、Claudeはそのマニュアルに従って適切なツールを選び、命令を送り、結果を受け取るというイメージだ。これにより、開発者は個々のツール連携ロジックを細かくコーディングする手間を減らし、より高度なAIアプリケーションの構築に集中できるようになる。 Integrationsがもたらすメリットは計り知れない。まず、Claudeの能力が飛躍的に向上する。これまでClaude単体では難しかった「最新の株価を調べる」や「顧客データベースから特定の情報を抽出する」といったタスクが、Integrationsを通じて外部の金融情報サービスやCRMシステムと連携することで可能になる。次に、作業の効率化と自動化が促進される。例えば、会議の議事録作成と同時に、関連するタスクをプロジェクト管理ツールに自動で登録し、関係者に通知するといった一連の業務フローをClaudeがIntegrationsを使って実行できるようになる。さらに、より複雑で多段階なタスクの実行が可能になる。例えば、複数の情報源からデータを収集し、それを分析し、その結果に基づいて意思決定を行い、さらにその決定を外部システムに反映させる、といった一連の高度な処理をClaudeが自律的に行えるようになる可能性がある。 このIntegrations機能の具体的な応用例として、Anthropicは「Advanced Research」機能も同時にリリースした。Advanced Researchは、Integrationsを活用して高度な検索リサーチを実行する機能だ。通常の検索エンジンでは一つずつ手動で情報を探す必要があるが、Advanced ResearchではClaudeがIntegrationsを介して複数の検索ツールや専門データベース、学術論文リポジトリなどに同時にアクセスし、関連性の高い情報を網羅的に収集・分析し、その結果を統合してユーザーに提示する。これにより、より深く、より正確な情報に基づいたリサーチが可能になり、例えば市場調査や学術研究、競合分析といった分野で大きな威力を発揮することが期待される。Claudeが自ら「どの情報を、どのツールで、どのように探すべきか」を判断し、最適な形で情報を統合してくれるため、人間が行うリサーチの負担を大幅に軽減できる。 システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このニュースは非常に重要だ。AIが私たちの社会やビジネスに浸透していく中で、AIが単独で完結するのではなく、既存の様々なシステムやアプリケーションと「いかに連携するか」がその価値を最大化する鍵となる。IntegrationsやMCPといった技術は、まさにその連携を可能にする基盤であり、今後のシステム開発においてAIを組み込む際の主要なアプローチの一つとなるだろう。APIの設計、データ連携のプロトコル、セキュリティ、そして異種システム間の通信といった知識は、AIが中心となる未来のシステムを構築するために不可欠なスキルとなる。AIが単なるツールではなく、システム全体の「脳」として機能する時代において、システムエンジニアはAIと外部システムを結びつけ、その能力を最大限に引き出すためのアーキテクチャを設計し、実装する役割を担うことになる。この技術の進化は、AIの可能性を広げると同時に、システムエンジニアの仕事のあり方にも新たな視点をもたらすものだ。これからもAIと連携技術の動向には注目していくべきだろう。

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