【ITニュース解説】Apple AirPods Pro 3 hands-on: Impressive ANC improvements

Appleは、主力ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」シリーズの最新モデルとなる「AirPods Pro 3」を発表した。2022年に登場した前モデル「AirPods Pro 2」は、発売後もソフトウェアアップデートによって機能が追加されてきたが、今回、ハードウェアを含む全面的な刷新が行われた。新モデルはデザインが改良されたほか、心拍数センサーやライブ翻訳といった新機能が追加され、特にアクティブノイズキャンセリング（ANC）性能が飛躍的に向上している。これらの大幅な機能強化にもかかわらず、価格は据え置かれた点も注目される。

今回のアップデートで最も印象的な進化は、アクティブノイズキャンセリング機能である。この機能は、イヤホンに搭載されたマイクで周囲の騒音を拾い、その音波と逆の位相を持つ音波（アンチノイズ）を内部のプロセッサで瞬時に生成し、スピーカーから再生することで騒音を打ち消す技術である。この一連の処理を遅延なくリアルタイムで行うには、高度な信号処理技術と強力なプロセッサが不可欠であり、その性能向上が静寂性の向上に直結する。新モデルのデモは、音が反響しやすい大理石でできた空間で行われたが、ANCを有効にした瞬間、部屋全体の騒がしい反響音が完全に消え去り、周囲の混沌から切り離されたかのような静寂を体験できたという。特に、人の話し声のような、従来はキャンセルが難しいとされてきた不規則な音に対しても高い効果を発揮し、すぐ近くで話している人の声が聞こえなくなるほど強力だったと報告されている。この性能向上は、電車内での移動中やカフェでの作業など、騒音が気になる環境で集中したいユーザーにとって大きなメリットとなる。

このANC性能の向上には、ハードウェアの改良も大きく寄与している。AirPods Pro 3では、耳に装着するイヤーチップの素材が従来のシリコン製からフォーム素材に変更された。フォーム素材は体温で柔らかくなり、ユーザー一人ひとりの耳の形にぴったりとフィットする特性を持つ。これによりイヤホンと耳の間の密閉性が高まり、物理的に外部の音を遮断する「パッシブノイズアイソレーション」性能が向上する。まず物理的に騒音の侵入を抑制し、その上でアクティブノイズキャンセリング機能が残った騒音を電気的に打ち消すという、ハードウェアとソフトウェア両面からのアプローチによって、これまでにないレベルの静寂性を実現している。

さらに、AirPods Pro 3はオーディオデバイスの枠を超え、ヘルスケアデバイスとしての側面も強化された。新たに搭載された心拍数センサーにより、装着中に心拍数を計測することが可能になる。これにより、日常の健康管理や運動中のコンディション把握など、Apple Watchのようなウェアラブルデバイスが担ってきた役割の一部をイヤホンで代用できるようになる可能性を秘めている。また、ソフトウェア面ではライブ翻訳機能が追加された。これは、イヤホンを通じてリアルタイムで会話を翻訳する機能であり、異なる言語を話す人とのコミュニケーションを円滑にする。この機能は、デバイスに搭載されたAIとプロセッサの能力を活用したものであり、今後のグローバルなコミュニケーションのあり方を変える可能性を持つ。

総じて、AirPods Pro 3は、音響技術の進化だけでなく、センサー技術、AIを活用したソフトウェア機能を統合した、多機能なウェアラブルデバイスへと進化を遂げた。ノイズキャンセリングという中核機能の劇的な性能向上に加え、ヘルスケアやコミュニケーション支援といった新たな価値を提供することで、ユーザーの日常生活をより豊かにする製品となっている。これらの機能は、高性能なプロセッサ、複数のセンサー、そしてそれらを制御する洗練されたソフトウェアアルゴリズムの組み合わせによって実現されており、現代のシステム技術の集大成の一つと言えるだろう。