【ITニュース解説】@ITはエスカルゴIT? 「@」の読み方仰天世界の旅
2025年10月02日に「@IT」が公開したITニュース「@ITはエスカルゴIT? 「@」の読み方仰天世界の旅」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
メールアドレスなどでユーザー名とドメイン名を分ける記号「@」。この記号の呼び方は、日本では「アットマーク」だが、他の国では様々な独自の呼び方が存在する。
ITニュース解説
ITの世界では、日々さまざまな情報や技術が生まれ、発展している。その中で、ごく当たり前に使われている記号一つにも、意外な歴史や文化が隠されていることがある。今回は、誰もが知るメールアドレスでおなじみの記号「@」に焦点を当てる。この記号は、Webサイト「@IT」の名称にも使われており、日本で生活する私たちにとっては何の疑問もなく「アットマーク」と呼んでいる。しかし、世界に目を向けると、その呼び方は驚くほど多様で、各国の人々の視点や文化を映し出す鏡のようである。
まず、私たちにとって最も身近な存在である「@」が、ITの文脈でどのように使われているかを確認しておこう。メールアドレスにおいては、「ユーザー名」と「ドメイン名」を区切る役割を担う。例えば「user@example.com」といった形式で、誰が(user)、どの組織やサービス(example.com)に属しているかを明確に示している。このように、情報の所在地や帰属を指し示す重要な記号として、インターネットの黎明期から現代に至るまで広く利用され続けている。
日本では、この記号を「アットマーク」と呼ぶのが一般的である。これは英語の「at mark」をカタカナにしたもので、特定の場所や状況を示す「at」という前置詞の感覚と一致する。しかし、この「アットマーク」という呼び方は、実は世界共通ではない。英語圏では「at sign(アットサイン)」や「at symbol(アットシンボル)」と呼ぶことが多く、単に「アット」と発音する場合も少なくない。ここですでに、日本語と英語での呼び方に違いがあることがわかる。
さらに海外に目を向けると、この記号の呼び方は非常にバラエティ豊かになる。その多くは、記号の形状から連想されるものや、その国の文化に根ざしたユニークな表現が使われているのだ。
例えば、フランス語圏では「エスカルゴ(escargot)」と呼ぶことがある。これは、巻貝の形に似ていることから、食用としても知られる「カタツムリ」を意味する単語が当てられている。同じように、イタリア語圏でも「キオッチョラ(chiocciola)」と呼び、これも「カタツムリ」を意味する。韓国でも「カタツムリ」と表現されることがあるようだ。このように、ヨーロッパのラテン系言語圏の一部やアジアの一部の国では、螺旋状の見た目からカタツムリを連想する文化が見られるのは興味深い。
ドイツ語圏では、これもまた形状からの連想で、いくつかの呼び方がある。「クランマー(Klammer)」は「留め金」や「クリップ」といった意味を持ち、その丸まった形が物を留める金具のように見えることから来ている。また、「アッフェンシュヴァンツ(Affen-schwanz)」という非常にユニークな呼び方もあり、これは直訳すると「猿のしっぽ」を意味する。オランダ語圏でも同様に「アッペンスタールチェ(apenstaartje)」と呼ばれ、これも「猿のしっぽ」を意味する。くるりと巻かれた部分が、ぶら下がった猿のしっぽのように見えるのだろう。
ロシア語圏では「ソバーカ(собака)」という呼び方がある。これは「犬」を意味する言葉で、記号のくるりとした部分が、座って丸まっている犬や、あるいは犬がしっぽを巻いている姿を連想させることから来ていると言われている。フィンランド語圏では「ミーアキャット」と呼ぶこともあるという。これは、丸まった記号がミーアキャットが直立して警戒する姿に似ている、あるいはその特徴的な姿勢から連想されるのかもしれない。
さらに、トルコ語圏では「クルク(kuyruk)」、これは「しっぽ」を意味するが、特に「バラ(kulak)」、すなわち「耳」と呼ぶこともある。これは、その形状が耳のようにも見えるという視点から来ているようだ。ハンガリー語圏では「クカック(kukac)」と呼び、これは「虫」や「ミミズ」を意味する。丸まった形が、土の中でとぐろを巻く虫のように見えるのだろう。
スウェーデン語圏では、一風変わった例として、カナダの菓子パンである「カナダブッラル(kanelbulle)」に似ていることからそう呼ばれることもあるという。これは、シナモンロールのような螺旋状のパンの形と記号の形状が重なるという、具体的な食べ物からの連想である。
中国語圏では「小老鼠(xiǎo lǎoshǔ)」と呼ばれ、これは「小さなネズミ」を意味する。丸っこい形と、それに続く線がネズミの姿を連想させるのだろう。
これらの多様な呼び方を見ると、共通して言えるのは、その記号の形状から連想される動物や物体、あるいは文化的な背景が色濃く反映されているということである。また、「@」という記号は、元々古代から使われていた単位記号や、商取引において「単価」を示す「at the rate of」を略す形で使われていたという歴史的経緯も持っている。それがコンピュータやインターネットの普及とともに、メールアドレスの区切り記号として広く使われるようになり、世界中でその呼び方が定着していったのだ。
システムエンジニアを目指す上で、このような一見すると些細な知識は、直接的にプログラムを書いたりシステムを構築したりする技術とは異なるかもしれない。しかし、ITはグローバルな分野であり、多国籍のチームで開発を進めたり、海外のユーザーとコミュニケーションを取ったりする機会は少なくない。その際、このような文化的な違いを知っていることは、相手への理解を深め、円滑なコミュニケーションを築く上で思わぬ助けとなる場合がある。身近な記号一つにも、これだけの多様な文化が息づいていることを知ることは、ITという広い世界で働く上で、多様性を受け入れ、異なる視点を持つことの重要性を教えてくれるだろう。単なる記号の読み方から、異文化理解へと繋がる奥深さに気付かされるのである。