アットマーク(アットマーク)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アットマーク(アットマーク)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アットマーク (アットマーク)

英語表記

at sign (アットサイン)

用語解説

アットマークは「@」と表記される記号である。一般的には「アットマーク」と呼称されるが、英語圏では「アットサイン」や単に「アット」と呼ばれることが多い。この記号の最も広く知られている用途は、電子メールアドレスにおいて、受信者を識別するユーザー名と、メールサーバーの場所を示すドメイン名を区切る役割である。しかし、IT分野、特にシステム開発の現場においては、電子メール以外にも極めて多様な意味と機能を持つ重要な記号として扱われる。プログラミング言語における特定の構文、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でのユーザー指定、コマンドラインでの表示制御など、その使われ方は文脈によって大きく異なる。そのため、システムエンジニアを目指す者は、この記号が持つ多様性を正確に理解しておく必要がある。

アットマークの起源はコンピュータの登場より古く、元々は商業取引における単価を示す記号として、「at a price of」の意味で用いられていた。例えば、「5 pens @ 100 yen」は「1本100円のペンが5本」ということを意味する。この記号がコンピュータの世界で決定的な役割を担うことになったのは、1971年にプログラマーのレイ・トムリンソンが、ネットワークを介した電子メールシステムを開発した際に、送信先のユーザー名とホスト名(コンピュータ名)を区切るための記号として採用したことに始まる。当時、標準的なキーボードに存在し、かつ一般的な人名やコンピュータ名で使われることのない記号として「@」が選ばれた。この「user@host」という形式は、その後のインターネットの発展とともに事実上の標準となり、現在に至るまで電子メールアドレスの基本的な構造として利用されている。電子メールアドレスにおける「@」は、所属や場所を示す英語の前置詞「at」の役割を果たす。例えば「taro.yamada@example.com」というアドレスでは、「@」は「example.com」というドメイン(メールサーバー)に所属する「taro.yamada」というユーザー、という関係性を示している。左側のユーザー名部分はローカルパートと呼ばれ、ドメイン内で一意の受信者を識別する。右側のドメイン名部分は、インターネット上のどこにそのメールサーバーが存在するかを示す住所に相当する。アットマークは、この個人識別子と場所の情報を明確に分離するための、不可欠な区切り文字として機能するのである。

プログラミングの世界では、アットマークは言語やフレームワークごとに特殊な意味を持つメタ文字として頻繁に利用される。Javaでは、ソースコードにコンパイラやフレームワークへの指示などの追加情報(メタデータ)を付与するアノテーションの接頭辞として使われる。「@Override」は、そのメソッドが親クラスのメソッドを上書きしていることをコンパイラに明示する代表的なアノテーションである。Pythonでは、デコレータという機能で用いられ、既存の関数やクラスの動作を変更したり、機能を追加したりするために使われる。関数の定義の直前に「@decorator_name」のように記述することで、関数を修飾できる。PHPでは、エラー制御演算子として機能し、式の前に置くことで、その式が生成する可能性のある警告やエラーメッセージの出力を抑制する。C#では、文字列リテラルの前に置くことで、バックスラッシュなどのエスケープシーケンスを文字としてそのまま解釈させる「逐語的文字列リテラル」を定義する。これにより、ファイルパスなどを記述する際に便利である。また、Microsoft SQL Serverで使われるTransact-SQLのようなデータベース言語では、ローカル変数やパラメータ名の接頭辞として「@variable_name」のように使用される。このように、アットマークは各言語の文法の一部として、コードの挙動を制御したり、追加情報を示したりする多様な役割を担っている。

近年では、SNSにおいてもアットマークは重要な役割を持つ。TwitterやInstagramなどのプラットフォームでは、「@」に続けてユーザー名を入力することで、特定のユーザーへの言及(メンション)や返信を行うことができる。これはシステムに対して、その投稿が特定のユーザーに関連するものであることを伝え、通知などを送信するトリガーとなる。この文脈では、アットマークはユーザー識別子を明示するための接頭辞として機能している。また、より古くからある用途として、Windowsのバッチファイルや一部のシェルスクリプトでは、コマンドの前に「@」を付けることで、そのコマンドライン自体の実行内容が画面に表示されるのを抑制する効果がある。例えば、バッチファイルの先頭に記述される「@echo off」は、この「@」によって「echo off」というコマンド自体が画面に表示されることを防ぎ、以降のコマンド実行結果のみを表示させるための定番の記述である。その他、URL内で認証情報を埋め込む際に「ftp://username:password@hostname/」のようにユーザー名とホスト名を区切るためにも使われることがあるが、パスワードが平文で見えてしまうため、セキュリティ上の観点からこの形式は現在ではあまり推奨されない。

以上のように、アットマークは単に電子メールの区切り文字というだけでなく、ITの様々な領域において、文脈に応じて異なる意味と機能を持つ極めて多義的な記号である。プログラミング言語の構文、コマンド制御、ユーザー指定など、その役割は多岐にわたる。システムエンジニアは、ソースコードやドキュメント、設定ファイルなどでアットマークに遭遇した際、それがどの文脈で、どのような意味で使われているのかを正確に識別する能力が求められる。この記号の多様な使われ方を理解することは、IT技術を深く学ぶ上での基礎知識の一つと言える。

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