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【ITニュース解説】Century HW RAID Managerにおける引用符で囲まれていないファイルパスの脆弱性

2025年09月17日に「JVN」が公開したITニュース「Century HW RAID Managerにおける引用符で囲まれていないファイルパスの脆弱性」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

センチュリーのRAID Managerは、Windowsサービス登録時のプログラムパスが引用符で囲まれていない。この脆弱性を悪用されると、意図しない不正プログラムが実行される危険性があり、システムを乗っ取られる恐れがある。

ITニュース解説

今回のニュースは、株式会社センチュリーが提供する「Century HW RAID Manager」というソフトウェアに見つかったセキュリティ上の問題、いわゆる「脆弱性」について報告している。システムエンジニアを目指す上で、このような脆弱性の内容は、サービスの安定稼働やセキュリティを確保するために理解しておくべき重要な知識だ。

まず、「RAID Manager」とは何か、そしてなぜそれが問題となるのかを順を追って説明する。RAID(Redundant Array of Independent Disks)とは、複数のハードディスクドライブを組み合わせて、データの高速な読み書きや、万が一の故障に備えてデータを保護する技術のことだ。RAID Managerは、このRAIDシステムの設定や監視を行うためのソフトウェアである。企業が使うサーバーなど、大量のデータを扱い、データの損失が許されないような環境でよく利用される。

このRAID Managerは、Windowsオペレーティングシステム上で「Windowsサービス」として動作するように登録されている。Windowsサービスとは、ユーザーがコンピューターを操作していなくても、OSの起動と同時に自動的に開始され、常にバックグラウンドで動き続けているプログラムのことだ。例えば、プリンターを管理する機能や、ネットワークに接続するための機能なども、多くがWindowsサービスとして提供されている。これらのサービスは、OSの基本的な機能や、特定のアプリケーションの中核的な部分を担うため、しばしば「システム」や「管理者」といった非常に高い権限で動作する。

今回の脆弱性の原因は、「引用符で囲まれていないファイルパス」という点にある。ファイルパスとは、コンピューターの中にある特定のファイルやプログラムがどこに保存されているかを示す「住所」のようなものだ。Windowsでは通常、「C:\Program Files\Example Application\program.exe」のように、ドライブ名から始まり、フォルダー名を「\」で区切り、最後にファイル名が続く形式で表現される。

ここで問題となるのは、ファイルパスの中に空白(スペース)が含まれている場合だ。「Program Files」のように、フォルダー名に空白が含まれることはWindows環境では一般的だ。このような空白を含むパスを、コンピューターのOSが正確に認識し、目的のプログラムを実行するためには、パス全体を「"」(ダブルクォーテーション)で囲んであげる必要がある。例えば、「"C:\Program Files\Example Application\program.exe"」のように記述されることで、OSはパス全体を一つのまとまった文字列として解釈し、空白を区切り文字と誤解することなく、正しくプログラムを見つけ出して実行できるのだ。

しかし、Century HW RAID ManagerがWindowsサービスとして登録される際、このファイルパスが引用符で囲まれていなかった。つまり、本来であれば「"C:\Program Files\Century\RAIDManager.exe"」のように登録されるべきパスが、引用符なしの「C:\Program Files\Century\RAIDManager.exe」として登録されてしまっていたということだ。

引用符がないと、OSがプログラムの実行ファイルを特定しようとする際に、特定の挙動を示す。OSはパスの中にある空白を区切り文字と解釈しようとするのだ。つまり、「C:\Program Files\Century\RAIDManager.exe」というパスが与えられた場合、OSは次のような順序でプログラムを探しに行く。

  1. まず、「C:\Program.exe」という名前のプログラムを探す。
  2. もし見つからなければ、次に「C:\Program Files\Century.exe」というプログラムを探す。
  3. それも見つからなければ、ようやく本来のパスである「C:\Program Files\Century\RAIDManager.exe」を探し、実行する。

このOSの探索順序が、セキュリティ上の脆弱性となる。もし攻撃者が、上記の探索順序の途中に悪意のあるプログラムを配置できてしまったら、どのようなことが起こるだろうか。例えば、攻撃者が「C:\Program.exe」や「C:\Program Files\Century.exe」という名前の悪意のある実行ファイルを、それぞれ「C:\」や「C:\Program Files\」といった場所に置くことができた場合、OSはRAID Managerサービスが開始される際に、正規のRAID Managerの代わりに、攻撃者が仕込んだ悪意のあるプログラムを先に発見し、それを実行してしまう可能性があるのだ。

さらに深刻なのは、RAID Managerサービスが「システム」や「管理者」といった高い権限で動作することだ。もし攻撃者が仕込んだ悪意のあるプログラムが、この高い権限で実行されてしまったら、攻撃者は一般ユーザーの権限では実行できないような、システム全体の制御を奪う操作を行うことができるようになる。これを「権限昇格」(Privilege Escalation)と呼ぶ。権限昇格の脆弱性を悪用されると、攻撃者はシステム内の機密情報を盗み出したり、マルウェアをインストールしてシステムを破壊したり、他のコンピューターへの攻撃の踏み台にしたりするなど、非常に広範囲かつ深刻な被害を引き起こす可能性がある。

今回の脆弱性は、システムエンジニアを目指す上で学ぶべき、基本的なセキュリティの教訓を明確に示している。ソフトウェア開発においては、ファイルパスの取り扱い一つをとっても、OSの挙動を深く理解し、予期せぬ解釈が生じないように細心の注意を払う必要がある。そして、ソフトウェアを利用するユーザー側としては、このような脆弱性が発見された際には、速やかにベンダーが提供する修正プログラムやアップデートを適用し、システムを常に最新の安全な状態に保つことが極めて重要である。この脆弱性は、単純な記述ミスが重大なセキュリティリスクにつながる典型的な例であり、システムの設計や実装における細部の重要性を示している。

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