【ITニュース解説】“うちの料金、高過ぎ?”を回避するクラウドストレージ「コスト分析」の勘所

2025年09月10日に「TechTargetジャパン」が公開したITニュース「“うちの料金、高過ぎ?”を回避するクラウドストレージ「コスト分析」の勘所」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

クラウドストレージの費用を最適化するには、定期的なコスト分析が不可欠である。データ保存料だけでなく、転送料金などの見落としがちな「隠れコスト」を把握することが重要。これにより、意図しない高額請求を防ぎ、投資効果を最大化する。

ITニュース解説

クラウドストレージは、手軽に大容量のデータを保管できる非常に便利なサービスだが、その一方で「想定よりも料金が高くなってしまった」という問題に直面することが少なくない。システム開発において、単に機能を実装するだけでなく、運用コストまで考慮した設計ができることは、システムエンジニアにとって重要なスキルである。そのコスト管理の核心となるのが「コスト分析」だ。

クラウドストレージの料金は、単に保存しているデータの容量だけで決まるわけではない。その複雑さが、意図しない高額請求の原因となる。主な料金要素は、データを保存しておくための「ストレージ容量料金」、データをクラウドの内外に移動させる際の「データ転送料金」、そしてデータの読み書きや一覧表示といった操作ごとにかかる「リクエスト料金」の三つに大別される。特に注意が必要なのは、クラウドからインターネット経由で外部にデータを送り出す際の転送料金で、これは「下り」や「Egress」と呼ばれ、比較的高額に設定されていることが多い。この料金体系を理解することが、コスト分析の第一歩となる。

コスト分析とは、これらの料金が具体的に「どのデータに」「どのような利用で」「いくらかかっているのか」を詳細に調査し、無駄なコストが発生している箇所を特定する活動である。これを行わずにいると、利用実態に合わない高コストな設定を放置してしまったり、不要なデータが蓄積し続けて料金を圧迫したりする事態に陥る。定期的にコスト分析を実施し、利用状況を可視化することで、初めて効果的なコスト削減策を講じることが可能になるのだ。

コスト分析の具体的な進め方としては、まず現状を正確に把握することから始める。どのデータを、どれくらいの期間保存し、どの程度の頻度でアクセスしているのかを明らかにする。多くのクラウドサービスには、利用状況やコストの内訳を詳細にレポートしてくれる管理ツールが用意されているため、これらを活用してデータを収集する。次に、収集したデータをもとに、コストの大部分を占めている要因を特定する。例えば、全体のコストのうち、データ転送料金が突出して高いのか、あるいは特定のデータの容量料金が原因なのかを分析する。

原因が特定できれば、次に行うのは最適化策の検討と実施だ。代表的な最適化手法として「ストレージクラスの最適化」が挙げられる。クラウドストレージには、アクセス頻度に応じて複数の料金プラン(ストレージクラス)が用意されている。頻繁にアクセスするデータは高速だが単価の高い「標準ストレージ」、たまにしか使わないデータは単価が安い「低頻度アクセスストレージ」、バックアップのように長期間保管するだけのデータは最も安価な「アーカイブストレージ」といったように、データのライフサイクルに合わせて適切なクラスを選択し直すことで、容量料金を大幅に削減できる。また、不要になったログファイルや一時ファイルなどを定期的に棚卸しして削除することも基本的ながら効果的なコスト削減策となる。

さらに、コスト分析では請求書の内訳だけでは気づきにくい「隠れコスト」の存在にも注意を払う必要がある。その筆頭が、前述したデータ転送費用(Egress Fee)である。例えば、ユーザーに大容量の画像や動画を配信するようなシステムでは、この転送費用がストレージ容量料金をはるかに上回ることもある。システム設計の段階で、データ転送の経路や頻度を考慮しないと、運用開始後に想定外のコストに悩まされることになる。また、APIリクエスト料金も軽視できない。一つ一つの操作にかかる費用はごくわずかだが、プログラムのループ処理などで無駄なリクエストを大量に発行してしまうと、最終的に大きな金額になる。これも「塵も積もれば山となる」コストの典型例だ。加えて、アーカイブストレージなどで見られる「早期削除料金」も隠れコストの一つだ。これは、最低保管期間が定められている安価なストレージクラスで、その期間内にデータを削除した場合に発生するペナルティ料金であり、コスト削減のつもりがかえって割高になるケースもある。

クラウドストレージのコスト最適化は、一度実施すれば終わりというものではなく、システムの利用状況の変化に合わせて継続的に見直していく必要がある。システムエンジニアは、技術的な観点からシステムを構築するだけでなく、こうしたコスト意識を持ち、クラウドサービスが提供するコスト管理ツールを使いこなすことで、ビジネスの観点からも価値のある提案ができるようになる。定期的なコスト分析を習慣づけ、常にコスト効率の高いシステム運用を目指すことが、これからのエンジニアに強く求められる資質と言えるだろう。

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