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【ITニュース解説】The CTO Who Replaced Microservices With a Monolith — And Tripled Productivity

2025年09月13日に「Medium」が公開したITニュース「The CTO Who Replaced Microservices With a Monolith — And Tripled Productivity」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

現代のアプリケーション開発で主流とされてきた「マイクロサービス」(細分化されたシステム)を、あるCTOが「モノリス」(一体型のシステム)に置き換えた。結果、開発チームの生産性が3倍に向上した事例。

ITニュース解説

近年、多くのIT企業で「マイクロサービス」という言葉が盛んに聞かれた。現代のアプリケーション開発において、まるで唯一の正解であるかのように語られ、多くの企業やエンジニアがその採用を検討し、実際に導入してきた。マイクロサービスとは、大きな一つのシステムを、それぞれが独立して機能する小さな部品(サービス)に分割して開発する手法を指す。例えば、オンラインストアのシステムを考える場合、顧客管理、商品管理、注文処理、決済処理といった機能をそれぞれ独立したサービスとして構築し、これらが連携して一つのシステムとして機能するイメージだ。この手法は、各サービスを個別に開発・デプロイ(システムを本番環境に配置すること)・スケールできる柔軟性や、技術選択の自由度といった多くのメリットを持つとされてきた。

しかし、マイクロサービスが常に万能であるわけではない。ある企業のCTO(最高技術責任者)は、自身のチームがマイクロサービスアーキテクチャを採用した結果、期待とは裏腹に多くの問題に直面していることに気づいた。まず、小さなサービスが多数存在することで、システムの全体像が非常に複雑になった。それぞれのサービスが異なるサーバーで動作し、互いにネットワークを通じて通信し合うため、その連携を管理するだけでも膨大な手間がかかる。新しい機能を開発する際には、複数のサービスにまたがる変更が必要になることも多く、開発者はどのサービスに手を入れるべきか、その変更が他のサービスにどのような影響を与えるかを常に慎重に考慮しなければならなかった。これは、開発プロセスを遅らせ、開発者のフラストレーションを増大させる原因となった。

また、多数のサービス間のネットワーク通信は、処理の遅延を引き起こす可能性があり、システムの性能に影響を与えることがあった。システムのどこかで問題が発生した場合、どのサービスが原因なのかを特定するのも一苦労だった。分散された複数のサービスのログ(システムが出力する履歴情報)を追いかけ、それぞれの状態を同時に監視する必要があり、デバッグ(プログラムの誤りを見つけて修正する作業)の難易度も非常に高かった。さらに、それぞれのサービスを個別にデプロイする作業も、手動では限界があり、自動化のための高度なツールやスキルがチームに求められた。結果として、開発チームの生産性は低下し、新しいアイデアを迅速に形にすることが難しくなっていた。

こうした状況を打開するため、そのCTOは大胆な決断を下した。それは、既存のマイクロサービスアーキテクチャを捨て、再び「モノリス」へと回帰するというものだった。この決断は、近年のIT業界の流行とは逆行するものであったため、当初は戸惑いや反対の声もあったかもしれない。しかし、CTOは、現在のチームの状況やビジネスの要件を深く分析し、マイクロサービスが抱える本質的な複雑性が、現在の組織の課題解決には適さないと判断したのだ。

モノリスとは、システム全体を一つの大きなプログラムとして構築する伝統的な手法である。マイクロサービスが多くの小さなサービスに分かれているのに対し、モノリスは全ての機能が一つのコードベースに統合されている。このモノリスへの回帰が、チームにどのような変化をもたらしたのだろうか。まず、システムの全体像がシンプルになった。開発者は一つのコードベースだけを理解すればよくなり、複数のサービス間の複雑な連携を気にする必要がなくなった。これにより、新機能の開発や既存機能の修正が格段に速くなった。デプロイも、一つのプログラムを本番環境に配置するだけで済むため、非常に簡単になった。デバッグに関しても、問題発生時に一つのコードベースを調べるだけで済むため、原因の特定が迅速に行えるようになった。

ただし、このCTOが採用したモノリスは、ただ昔ながらの巨大で変更しにくいモノリスとは一線を画していた。彼らが目指したのは「モジュール型モノリス」と呼ばれるアプローチだ。これは、システム全体を一つの大きな塊として構築しながらも、その内部を論理的に分離された独立性の高いモジュール(部品)に分割するという考え方である。例えば、前述のオンラインストアの例で言えば、顧客管理機能は顧客管理モジュール、商品管理機能は商品管理モジュールといった具合に、機能ごとに明確な境界線を持たせる。これらのモジュールは、直接他のモジュールの内部実装に依存せず、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じてのみ通信するように設計された。これにより、マイクロサービスの持つ「責務の分離」という良い点を、モノリスのシンプルさの中で実現したのだ。

このモジュール型モノリスの最大の利点は、マイクロサービスの複雑性や運用コストを避けつつ、機能ごとの独立性や保守性を確保できる点にある。各モジュールは独立して開発・テストが可能であり、将来的に特定のモジュールだけを独立したマイクロサービスとして切り出す必要が生じた場合でも、その移行が比較的容易になる。まさに、マイクロサービスのメリットを内部に取り込んだモノリスと言える。この新しいアプローチによって、チームの生産性は劇的に向上した。記事によると、生産性はなんと3倍にもなったという。開発者は以前のような複雑な連携やデバッグの困難さから解放され、より本質的な機能開発に集中できるようになったため、開発者の満足度も大幅に向上した。システムの信頼性も高まり、運用コストも削減されたのだ。

この事例は、技術選定の重要性を改めて示している。マイクロサービスは多くのメリットを持つ一方で、組織の規模、チームのスキルレベル、システムの要件によっては、かえって生産性を低下させるリスクがある。CTOの英断は、流行に盲目的に従うのではなく、現在の状況に最も適した技術を選択することの価値を証明した。システム開発において「銀の弾丸」は存在しない。どのようなアーキテクチャを選択するにしても、その技術がもたらすメリットとデメリットを深く理解し、常にビジネスの目的とチームの能力に照らし合わせて最適な判断を下すことが、システムエンジニアとして非常に重要だということを、この事例は教えてくれている。

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