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【ITニュース解説】Formally verifying a floating-point division routine with Gappa – part 1

2025年09月09日に「Hacker News」が公開したITニュース「Formally verifying a floating-point division routine with Gappa – part 1」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

コンピューターの浮動小数点除算プログラムの正確性を保証するため、Gappaというツールを用いて数学的に検証する方法を紹介する。システムの信頼性を高める形式検証の基礎を解説する記事だ。

ITニュース解説

ニュース記事は、コンピュータが実数を扱う際の割り算、特に「浮動小数点数」という形式での計算の正確性を、数学的に厳密に証明する「形式検証」という技術について解説している。具体的には、この検証を「Gappa」というツールを使って行う方法を紹介しており、Armのプロセッサで使われる除算プログラムを例にその過程が示されている。

まず、コンピュータが実数を扱う際の「浮動小数点数」について説明する。私たちが普段使う数字には整数だけでなく、小数を含む実数がある。コンピュータはこれらの実数を特定の形式で記憶し、計算する。その最も一般的な形式が浮動小数点数だ。しかし、この浮動小数点数は、限られたメモリで無限に続く小数を表現するため、常に厳密な値を保持できるわけではない。例えば、1を3で割ると0.3333…と無限に続くが、コンピュータは途中で丸めるため、わずかな「誤差」が生じる。この誤差は非常に小さいものだが、多数の計算が積み重なると、無視できない大きな誤差になることがある。

特に「割り算」は、コンピュータにとって複雑な処理の一つだ。整数の割り算であれば商と余りがきれいに求められるが、浮動小数点数の割り算ではさらに誤差が絡む。多くの組み込みシステムや安全性が極めて重視されるシステム(例えば、自動車の制御システム、医療機器、航空機の航法システムなど)では、計算のわずかな誤差が重大な事故につながる可能性があるため、計算結果の正確性は絶対に保証されなければならない。

そこで重要になるのが、プログラムが「常に」正しく動作することを保証する「形式検証」という手法だ。通常のプログラム開発では、テストケースをたくさん用意してプログラムが期待通りに動くか確認する。しかし、テストはあくまで用意されたケースでしか確認できないため、すべての状況、特に予期せぬ入力やまれな状況で正しく動くかまでは保証できない。これに対し形式検証は、プログラムの動作を数学的な論理で記述し、その記述が数学的に正しいかを証明することで、どんな状況でもプログラムが仕様通りに動くことを保証する。これは、バグを「見つける」こと以上に、バグが「存在しない」ことを証明する、極めて強力な方法なのだ。

この形式検証の中でも、特に浮動小数点演算の誤差解析に特化したツールが「Gappa」である。Gappaは、特定の計算手順において、発生しうる最大の誤差や最小の値を数学的に厳密に評価し、その結果が特定の範囲に収まることを証明できる。これにより、浮動小数点演算特有の丸め誤差や桁落ちなどの問題が、最終的な結果にどの程度影響するかを詳細に分析し、その影響が許容範囲内にあることを保証できる。

記事では、Armの組み込みプロセッサで使われる浮動小数点除算ルーチンを具体的な例として取り上げている。多くのプロセッサでは、直接的な割り算命令を持たない場合があるため、割り算は「逆数を求めてから掛け算する」という方法で実装されることが多い。例えば、AをBで割る場合、まずBの逆数(1/B)を近似的に求め、次にAにその近似した逆数を掛ける。この「逆数の近似」や「掛け算」の過程で、当然ながら浮動小数点数の誤差が生じる。記事では、この誤差が最終的な結果にどれだけ影響するかをGappaで解析し、特定の精度が保証されることを数学的に証明しようとしている。

Gappaを使う際には、まず検証したい計算ルーチンの数式表現と、入力値の範囲、そして目標とする出力の精度を記述する。Gappaはその記述を受け取り、数学的な推論エンジンを用いて、記述された計算が本当にその出力精度を達成できるかを検証する。もし証明が成功すれば、その計算ルーチンは数学的に正しいことが保証され、信頼性の高いソフトウェア開発が可能になる。

このように、形式検証とGappaのような専門ツールを用いることで、これまで人間の目や従来のテストでは見つけ出すことが難しかった浮動小数点演算の微妙な誤差までも含め、プログラムの正しさを数学的に厳密に保証できる。これは、極めて高い安全性と信頼性が求められるシステムにおいて、欠かせない技術であり、システムエンジニアが理解しておくべき重要な概念だと言えるだろう。Gappaは、特に複雑な浮動小数点演算が関わるシステム開発において、その計算結果の信頼性を飛躍的に向上させる強力な手段なのだ。

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