【ITニュース解説】複数のHTTP/2サーバー実装におけるストリームリセット処理の不備(CVE-2025-8671)
ITニュース概要
複数のHTTP/2サーバーで「MadeYouReset」という脆弱性が見つかった。これは、通信のリセット処理の不備を悪用され、サーバーのシステム資源が大量に消費され尽くす問題だ。放置するとシステム停止の恐れがあるため、迅速な対応が求められる。
ITニュース解説
今日のITニュースでは、HTTP/2というインターネット通信の重要な仕組みに関わる「MadeYouReset」という名の脆弱性(ぜいじゃくせい)が報告されたことを解説する。この脆弱性はCVE-2025-8671という識別番号が割り当てられており、複数のHTTP/2サーバー実装に影響を与える可能性が指摘されている。システムエンジニアを目指す上で、このような通信プロトコルとそれに潜むセキュリティの課題を理解することは非常に重要である。 まず、HTTP/2とは何かを簡単に説明する。ウェブサイトを見る際、ブラウザとサーバーの間ではHTTP(HyperText Transfer Protocol)というルールに基づいてデータのやり取りが行われている。かつて主流だったHTTP/1.1では、ウェブページを構成するHTML、画像、CSSファイルといった要素一つひとつに対して、基本的に個別の接続を確立してデータを取得していたため、多くの要素があるページでは通信に時間がかかりやすかった。そこで開発されたのがHTTP/2である。HTTP/2の大きな特徴は、「多重化(multiplexing)」という技術により、たった一つの接続の中で複数のデータを同時にやり取りできるようになった点にある。これにより、ウェブページの表示速度が大幅に向上し、より快適なインターネット体験が提供されている。この多重化を実現するために、「ストリーム(stream)」という概念が導入された。 ストリームとは、HTTP/2の単一の接続の中で、個々のリクエストとレスポンスのやり取りを行うための仮想的な流れのことである。例えば、ウェブサイトにアクセスすると、ブラウザはHTMLファイルを取得するためのストリーム、画像ファイルを取得するためのストリーム、CSSファイルを取得するためのストリームなど、複数のストリームを同時に開始し、サーバーと並行して通信を行う。これにより、効率的なデータ交換が可能となる。しかし、通信の途中で何らかの問題が発生したり、クライアント側でページ表示をキャンセルしたりする場合には、不要になったストリームを途中で終了させるための「リセット処理」が必要となる。このリセット処理は、サーバーがそのストリームに関連するリソース(メモリやCPU時間など)を解放し、無駄な処理を停止させるために不可欠な仕組みである。 今回報告された「MadeYouReset」脆弱性の核心は、このストリームのリセット処理にある。脆弱性は、HTTP/2の仕様書に定められたリセット処理の動作と、実際にサーバーがその処理を実行する際の動作との間に「不一致」があることを悪用するものである。具体的には、悪意のあるクライアントがサーバーに対して大量のストリームを開始し、すぐにそのストリームをリセットする要求を繰り返し送る。本来であれば、クライアントからリセット要求が送られたら、サーバーは速やかにそのストリームに関連するすべてのリソースを解放し、処理を停止する必要がある。しかし、この脆弱性を持つサーバーの実装では、クライアントからリセット要求を受け取ったとしても、内部的に完全に処理が停止されず、関連するリソースが適切に解放されないケースが存在する。 結果として、サーバーは「このストリームはリセットされた」と認識しながらも、実際には裏側でリソースを消費し続けるという状態に陥る。悪意のある攻撃者は、このサーバーの動作の不備を利用し、繰り返しストリームを開始してはリセットするという操作を続ける。これにより、サーバー内部には適切に解放されないリソースが少しずつ蓄積されていく。このような状態が続くと、サーバーのメモリが枯渇したり、CPUの処理能力が限界に達したり、新たな接続を受け付けられなくなったりするなど、「リソース枯渇状態」と呼ばれる深刻な状況が引き起こされる。リソースが枯渇すると、そのサーバーで動作しているウェブサイトやサービスは応答が非常に遅くなったり、最終的には完全に停止したりする可能性がある。これは、正当なユーザーがサービスを利用できなくなるという、いわゆるサービス拒否(DoS: Denial of Service)攻撃の一種として悪用され得る非常に危険な脆弱性である。 この脆弱性のもう一つの重要な点は、特定の製品やベンダーに限定されたものではないという点である。複数のHTTP/2サーバー実装に影響が報告されており、一部のベンダーは自身の製品における影響を示すために、共通のCVE-2025-8671とは別に、独自のCVE IDを割り当てている場合もある。これは、HTTP/2という広範に使われている基盤技術の解釈や実装において、広く認識されていない共通の課題が存在していたことを示唆している。多くのウェブサービスがHTTP/2を採用している現代において、このような脆弱性はインターネット全体の安定性に影響を及ぼしかねない。 システムエンジニアを目指す上で、このような脆弱性が報告された際に、その技術的な背景や影響、そして対策を理解する能力は不可欠である。今回の「MadeYouReset」脆弱性に対しては、各ベンダーが修正プログラム(パッチ)を提供する予定であるため、サーバー管理者は速やかにその情報を入手し、自身のシステムに適用することが最も重要となる。また、今後もプロトコルの仕様と実装との間に乖離がないか、常に厳密な検証が行われるべきである。セキュリティは、一度対策を講じれば終わりというものではなく、常に最新の脅威に対応し続ける必要がある動的な課題である。情報セキュリティに関するニュースに常に目を向け、システムの安全性を確保するための知識と技術を磨き続けることが、これからのシステムエンジニアには求められるだろう。