【ITニュース解説】IIJ、クラウド構築を自動化・効率化する「IIJ IaC導入支援ソリューション」を提供

IIJがクラウドインフラ構築の自動化・効率化を支援する「IIJ IaC導入支援ソリューション」の提供を開始したというニュースが発表された。このニュースは、現代のITインフラ構築において非常に重要なキーワードである「IaC（Infrastructure as Code）」の普及と、それがいかに企業にとって、そして将来システムエンジニアを目指す皆さんにとって重要であるかを示している。

まず、なぜ今「自動化」や「効率化」がクラウド構築において求められているのかを考えてみよう。企業がビジネスを行う上で、ITシステムは不可欠な存在である。かつては、サーバーやネットワーク機器を物理的に購入し、データセンターに設置してケーブルを配線し、一つ一つ手作業で設定を行っていた。この方法は非常に手間と時間がかかり、人為的なミスが発生するリスクも高かった。さらに、一度構築した環境を再現しようとしても、誰がどのような設定を行ったか正確に把握するのが難しく、特定の担当者に作業が集中してしまう属人化しやすいという課題があった。

しかし、近年では「クラウド」の登場により、ITインフラの構築方法が大きく変わった。クラウドとは、インターネット経由でサーバーやストレージ、データベースなどのITリソースを利用できるサービスのことだ。これにより、企業は物理的な機器を所有・管理する必要がなくなり、必要な時に必要なだけリソースを利用できる柔軟性が手に入った。企業はクラウドを利用することで、ビジネスの変化に迅速に対応し、新しいサービスを素早く提供できるようになっている。

クラウドの利用が普及するにつれて、今度は「クラウド上でのインフラ構築をいかに効率的に行うか」が新たな課題として浮上してきた。手作業でクラウド上の仮想サーバーやネットワークの設定を一つ一つ行うことは、物理的な環境構築と同様に、時間やコストがかかり、ミスも発生しやすい。特に、大規模なシステムや頻繁に環境を変更する必要がある場合、この手作業は大きな負担となる。

そこで登場したのが、「IaC（Infrastructure as Code）」という考え方である。IaCとは、その名の通り、「インフラ（Infrastructure）をコード（Code）として扱う」ことを意味する。具体的には、サーバーの構成、ネットワークの設定、ストレージの種類など、本来手作業で設定していたインフラの情報を、プログラミングコードのようにテキストファイルで記述し、そのコードを実行することで自動的にインフラを構築・変更・管理する技術のことだ。

IaCを導入することのメリットは数多くある。第一に「自動化」だ。コード化することで、手作業で行っていたインフラ構築のほとんどを自動化できる。これにより、構築にかかる時間を大幅に短縮し、ヒューマンエラーを減らすことができる。第二に「再現性」だ。コードとして記述されたインフラ設定は、何度でも同じ環境を正確に再現できる。開発環境、テスト環境、本番環境といった複数の環境を全く同じ構成で用意することが容易になり、環境間の差異によるトラブルを防ぐことができる。第三に「バージョン管理」だ。コードはGitのようなバージョン管理システムで管理できるため、インフラの変更履歴を追跡したり、以前の状態に簡単に戻したりすることが可能になる。これはソフトウェア開発におけるソースコードの管理と同じ仕組みで、チームでの共同作業もしやすくなる。第四に「ドキュメント化」だ。コード自体がインフラの構成を説明するドキュメントとなり、誰が見てもその構成を理解しやすくなる。

今回のニュースでIIJが提供を開始した「IIJ IaC導入支援ソリューション」は、まさにこのIaCを企業が導入する際に直面する課題を解決するためのサービスである。多くの企業はIaCの重要性を認識しながらも、どこから手をつけて良いかわからない、専門的な知識やスキルを持つ人材がいない、といった理由で導入が進まない現状がある。IIJのソリューションは、こうした企業に対して、IaC導入の計画立案から、具体的な設計、コードの実装、さらには運用体制の確立まで、一連のプロセスを包括的に支援する。

具体的には、企業の既存のITインフラやビジネス要件を分析し、最適なIaCの導入方法や、それに適したツールの選定を提案する。そして、実際にIaCのコードを作成し、自動化されたインフラ構築の仕組みを構築するサポートも行う。これにより、企業は自社だけでIaCを導入するよりも、はるかにスムーズかつ確実に、インフラ構築の自動化・効率化を実現できるようになる。結果として、ITシステムの品質向上、開発サイクルの迅速化、運用コストの削減といった効果が期待できる。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、このIaCという技術は非常に重要な学習テーマである。将来、どのような分野のSEになるにせよ、クラウドやインフラ構築の自動化の知識は必須となるだろう。従来のインフラ担当者が物理的な機器に強いのに対し、これからのSEはクラウド上でのインフラをコードで設計し、自動的に構築・運用するスキルが求められる。プログラミングの知識はもちろんのこと、クラウドサービスの基本的な仕組みや、IaCを実現するためのツールに関する知識を習得することが、今後のキャリアにおいて大きな強みとなる。

IIJのようなITサービスを提供する企業が、IaCの導入支援を強化していることは、まさにこの技術がIT業界の主流となりつつある証拠だ。企業がビジネスの変化に俊敏に対応し、競争力を維持するためには、ITインフラの柔軟性や効率性が不可欠であり、その鍵を握るのがIaCである。システムエンジニアの役割も、手作業での作業から、より高度な設計や自動化の仕組みを構築する役割へとシフトしていくことが予想される。このニュースは、今後のITインフラのあり方、そしてエンジニアに求められるスキルセットの方向性を示唆していると言えるだろう。