【ITニュース解説】JavaScriptのプロトタイプとクラス
2025年09月07日に「Qiita」が公開したITニュース「JavaScriptのプロトタイプとクラス」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
JavaScriptでオブジェクトの機能を継承するには、本来「プロトタイプ」という仕組みが使われる。これは初心者には少し複雑なため、より直感的に書ける「クラス」構文が用意されている。クラスは内部でプロトタイプを利用している。
ITニュース解説
JavaScriptで効率的にプログラムを構築する上で、オブジェクト指向の考え方は非常に重要である。特に、あるオブジェクトの機能や性質を別のオブジェクトに引き継がせる「継承」という仕組みは、コードの再利用性を高め、開発を効率化するために不可欠となる。JavaScriptにおける継承を実現する根幹的な仕組みが「プロトタイプ」であり、そして、その仕組みをより直感的で扱いやすくしたものが「クラス」である。この二つの概念を理解することは、JavaScriptを深く使いこなすための第一歩となる。
まず、JavaScriptの根幹にあるプロトタイプについて解説する。プロトタイプとは、オブジェクトが他のオブジェクトから機能を受け継ぐための基本的な仕組みである。JavaScriptでは、関数を除くほぼ全てのものがオブジェクトであり、それぞれのオブジェクトは作成された瞬間に、内部的に「プロトタイプ」と呼ばれる別のオブジェクトへの参照(リンク)を持つ。このリンクは、あるオブジェクトのプロパティやメソッドにアクセスしようとして見つからなかった場合に、次に探しに行く先を示す道しるべの役割を果たす。このプロトタイプを辿っていく連鎖のことを「プロトタイプチェーン」と呼ぶ。
具体的に、オブジェクトの設計図として機能する「コンストラクタ関数」を考えてみる。例えば、人物を表すPersonというコンストラクタ関数を定義し、この関数を使って新しい人物オブジェクトを生成する場合を想定する。このPerson関数には、自動的にPerson.prototypeという特別なオブジェクトが用意される。このPerson.prototypeオブジェクトに、全ての人物オブジェクトに共通で持たせたい機能、例えば挨拶をするsayHelloメソッドなどを追加することができる。そして、new Person()という構文で新しい人物インスタンスを生成すると、そのインスタンスは内部的にPerson.prototypeオブジェクトへのリンクを持つことになる。これにより、インスタンス自身はsayHelloメソッドを直接持っていなくても、プロトタイプチェーンを辿ってPerson.prototypeに定義されたsayHelloメソッドを呼び出すことが可能になる。これが、プロトタイプベースの継承の基本的な動作原理である。全てのオブジェクトはこのチェーンを辿り、最終的にはJavaScriptの全てのオブジェクトの頂点に立つObject.prototypeに行き着く。
このプロトタイプの仕組みは非常に強力で柔軟だが、他のオブジェクト指向言語に慣れている開発者にとっては、少し直感的ではない部分もあった。そこで、ES2015(通称ES6)というバージョンのJavaScriptで導入されたのが「クラス」構文である。クラスは、JavaScriptに全く新しい継承の仕組みを導入したわけではない。むしろ、これまで解説してきたプロトタイプベースの継承を、より分かりやすく、整理された構文で記述するための「シンタックスシュガー(糖衣構文)」、つまり便利な書き方であると理解することが極めて重要である。
クラス構文を使うと、先ほどのPersonの例はclass Person { ... }という形で定義できる。オブジェクトが生成される際の初期化処理はconstructorメソッド内に記述し、共通のメソッドであるsayHelloはそのままクラスブロック内に定義する。この記述方法は、JavaやPythonといった他の多くの言語と似ており、非常に直感的である。また、extendsキーワードを使えば、あるクラスが別のクラスの機能を継承することも簡単に行える。例えば、Personクラスを継承したStudentクラスを定義すれば、StudentはPersonの機能を全て受け継いだ上で、独自の機能を追加することができる。
しかし、その内部では、クラス構文もプロトタイプの仕組みを利用して動作している。classキーワードでクラスを定義すると、JavaScriptエンジンは内部で同名のコンストラクタ関数を作成する。クラス内で定義されたメソッドは、そのコンストラクタ関数のprototypeオブジェクトに追加される。extendsによる継承は、子クラスのプロトタイプが親クラスのプロトタイプを指すように、プロトタイプチェーンを適切に設定することで実現されている。つまり、見た目は新しくなっているが、その本質はプロトタイプベースの継承に他ならない。
結論として、現代のJavaScript開発においては、可読性や保守性の観点からクラス構文を用いることが一般的である。初心者のうちは、まずクラスの使い方をマスターすることから始めるのが効率的だろう。しかし、JavaScriptという言語の根幹を成すのはプロトタイプの仕組みである。なぜクラスがそのように動作するのか、継承がどのような仕組みで実現されているのかを深く理解するためには、その背景にあるプロトタイプとプロトタイプチェーンの知識が不可欠となる。この土台となる知識を身につけることで、より高度なプログラミングや、予期せぬ問題が発生した際のトラブルシューティング能力が格段に向上するはずである。