【ITニュース解説】The One JavaScript Trick That Made My App Feel 10x Faster
2025年09月09日に「Medium」が公開したITニュース「The One JavaScript Trick That Made My App Feel 10x Faster」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
JavaScriptで重い処理を行うと画面が固まる問題は、`requestAnimationFrame()`で解決できる。この関数は処理を小さな単位に分割し、ブラウザの描画タイミングに合わせて実行する。これによりUIの応答性が保たれ、アプリの体感速度が劇的に向上する。
ITニュース解説
Webアプリケーションを開発する上で、ユーザーが快適に操作できるかどうかは極めて重要である。その快適さを左右する大きな要素の一つが「応答性」、つまりユーザーの操作に対してアプリケーションがどれだけ速く反応するかという点だ。クリックしたボタンがすぐに反応したり、入力した文字が遅延なく表示されたりすることは、良いユーザー体験の基本となる。今回は、JavaScriptを使ったアプリケーションの「体感速度」を劇的に向上させる、ある一つのテクニックについて解説する。この手法は、プログラムの実際の計算速度を上げるのではなく、ユーザーが「速い」と感じるように見せかける、いわばパフォーマンスにおける工夫の一つである。
この体感的な遅さの多くは、Webページの動的な振る舞いを担当するJavaScriptの動作原理に起因する。JavaScriptは「シングルスレッド」で動作するという大きな特徴を持つ。これは、一度に一つのタスクしか実行できないということを意味する。例えば、大量のデータを処理したり、複雑な計算を行ったりするような、時間のかかる重い処理が実行されている間、JavaScriptはその処理が終わるまで他のすべての作業を停止してしまう。これには、ユーザーのクリックや入力への反応、画面の描画更新といった重要なタスクも含まれる。この状態を「メインスレッドのブロッキング」と呼ぶ。ユーザーから見れば、アプリケーションが応答しなくなり、画面が固まったように見える「フリーズ」現象として認識される。これが、アプリケーションが「遅い」と感じられる主な原因だ。
この問題を解決し、体感速度を向上させるためのシンプルかつ効果的な手法が、setTimeoutという関数を特定の方法で利用することである。具体的には、時間のかかる重い処理をsetTimeout(() => { /* 重い処理 */ }, 0);という形で記述する。このコードは、第二引数に0が指定されているため、「0ミリ秒後、つまり即座にこの処理を実行せよ」と読めるかもしれない。しかし、ブラウザ内部のJavaScript実行エンジンは、これを文字通りには解釈しない。この記述の真の意味は、「現在実行中のタスクが完了し、他に優先すべきタスクがなければ、次の機会にこの処理を実行せよ」という指示になる。
この仕組みを理解するためには、ブラウザがタスクを管理する「イベントループ」という概念を知る必要がある。ブラウザは、実行すべきタスクを「タスクキュー」と呼ばれる順番待ちの行列に入れて管理し、イベントループがこの行列からタスクを一つずつ取り出して実行している。通常、重い処理は現在のタスクとしてメインスレッドを占有し、後続のタスクを待たせてしまう。しかし、setTimeoutで処理をラップすると、その処理は即座にタスクキューに入るのではなく、一度別の場所に置かれ、指定時間(この場合は0ミリ秒)が経過した後にタスクキューの最後尾に追加される。この「一度別の場所に置き、後でキューに戻す」というワンクッションが、メインスレッドのブロッキングを防ぐ鍵となる。
このテクニックを適用すると、ユーザーの操作に対する応答が劇的に改善される。例えば、ボタンをクリックすると重い計算が始まるアプリケーションを考えてみよう。改善前は、ユーザーがボタンをクリックすると、即座に重い計算が始まり、メインスレッドがブロックされる。その結果、画面はフリーズし、計算が終わるまでユーザーは何もできない。数秒後、計算が完了すると突然結果が表示される。これではユーザーは不安になり、ストレスを感じるだろう。一方、重い計算をsetTimeout(..., 0)で囲む改善を行うと、挙動は大きく変わる。ユーザーがボタンをクリックすると、まずクリックイベントに対する軽い処理、例えば「計算中です...」というローディング表示を画面に出す処理が先に実行される。重い計算処理はタスクキューの後方に回されているため、このUI更新を妨げない。ユーザーは自分の操作が受け付けられたことを即座に確認できる。そして、このUI更新が終わった直後の次のイベントループのサイクルで、後回しにされていた重い計算が開始される。計算が終われば、ローディング表示が結果に置き換わる。
このように、処理の実行にかかる総時間は変わらないにもかかわらず、ユーザーが操作してから最初のフィードバックを得るまでの時間が大幅に短縮される。これにより、アプリケーションが非常にスムーズに、そして高速に動作しているという印象を与えることができる。実際の処理速度だけでなく、ユーザーがどう感じるかという「体感速度」を最適化することが、優れたアプリケーション開発においていかに重要かを示している。
ただし、この手法は万能ではない。あくまでUIの応答性を改善するためのテクニックであり、根本的に非常に長時間かかる処理(数秒から数分に及ぶもの)を扱う場合には、setTimeoutだけでは不十分な場合がある。そのようなケースでは、メインスレッドとは完全に別のスレッドで処理を行う「Web Workers」のような、より高度な並行処理技術の導入を検討する必要がある。しかし、ユーザー入力後の少しの待ち時間でUIが固まってしまうような多くの一般的なケースにおいて、このsetTimeoutを利用した非同期化のテクニックは、実装が容易で即効性のある、非常に価値のある知識と言えるだろう。